スーツの裏地は、気に留められることがあまりありません。
しかし、この裏地がスーツ本来のデザインと着心地を達成する機能を担っています。
また、裏地の果たす役割は機能だけに留まらず、動いたり座ったりするときにちらりと見える表地とのコントラストにより、粋なオシャレを演出します。
「素敵な裏地ですね」なんて褒められると、とてもハイレベルなセンスを褒められた気がして、嬉しくなりますね。
より高いレベルのオシャレを目指す貴方には、このような重要な機能を持ち、センスをアピールする役割も持っている裏地にもこだわっていただきたいと思います。
そこで、スーツにフィットする裏地について、その選び方をご紹介します。
裏地の役割
最も大切な役割は、着脱する際の抵抗感をなくし、体の動きにスーツをなじませ、自由な動きをサポートすることです。
また、この機能は、スーツ側の視点から見ると、来ている人の体に引っ掛かることがないので、スーツ本来のシルエットを維持することができます。
裏地があることで、スーツのデザインが忠実に再現されるのです。
また、裏地をつけることで、表地に皮脂や汗が直接つかないようになります。
これにより、スーツの汚れや傷みが軽減され、綺麗な状態を維持することができます。
裏地の素材
合成繊維
比較的安価な既製服ではポリエステルが裏地として多く使われています。
ポリエステル裏地は、耐久性が高くシワになりにくいのが特徴です。
一方、静電気が発生しやすいので、着るときにまとわりつく感覚を覚えることがあり、ほこりも付着しやすくなります。
また、吸湿性に劣るので、夏場に汗をかいた場合などに不快に感じることがあります。
再生繊維
一般に、キュプラと呼ばれるものです。
綿花の種子の回りにあるごく短い繊維を溶剤に溶かして再度繊維状に加工しなおしたものです。
シルクに似た風合いを持ち、肌触りがよく、吸湿性も高いので、1年を通していつでも快適な状態を保つことができます。
また、静電気も発生しにくいので、着るときにまとわりつくようなこともなく、ほこりの付着も抑えられます。
強度はポリエステルよりは若干落ちますが、特に問題となるレベルではありません。
天然繊維
アルパカや綿、絹が用いられます。
着心地は良いのですが、価格が高く強度が小さいため、現在では、ほとんど流通していません。
お勧めの素材
天然繊維はほとんど流通していないのでお勧めできません。
合成繊維と再生繊維との比較となりますと、冬物についてはそれほど大きな差はありませんが、それ以外の場合には再生繊維をお勧めします。
やはり、常にさらりとした着心地を味わえ、夏場でも不快感が少ないからです。
合成繊維品より若干値段は高いですが、先のことを考えると、私であればためらわずに再生繊維を選びます。
裏地の選び方
表地との相性
あまり気付かないのですが、表に使われている生地との相性が大切です。
力が加わったときの伸びの程度が異なると、生地に無理が掛かりますし、着心地にも影響がでます。
二枚重ねて折り曲げたり引っ張ったりして同じように動けば大丈夫です。
色目
裏地の色は、表地と同色系ものを選ぶのが王道です。
ビジネススーツは、この選択をお勧めします。
少し冒険してみたい方であれば、補色系統の色のものを合わせることも可能です。
その場合、色相的にはややトーンを落とした方が落ち着きのある色合になると思われます。
たとえば紺色であれば茶色を合わせてみてもよいでしょう。
その他、表地がストライプや柄物であれば、その表地に最も多く使われているものと同系統色を裏地として使うと落ち着きがよいでしょう。
季節に合わせる
裏地の貼り方には、全面に貼られた総裏地と、一部に貼られた背抜きとがあります。
裏地本来の機能を求めるのであれば、総裏地が良いのですが、夏場に暑くなり着心地がわるくなりますので、夏用につきましては、あまりお勧めできません。
ただ、オシャレを楽しむ意味でも基本的には総裏地の方が好ましいので、夏用以外につきましては、総裏地をお勧めします。
夏場は、ジャケットの背中部分の下側がない背抜きの裏地をお勧めします。
通気性が良く、快適に着られるからです。
ただ、汗が直接表地についてしまいますので、汗対策のお手入れは行なっていただきたいと思います。
まとめ
普段は表にでない裏地ですが、文字通り、裏で大活躍しています。
裏地があることにより、着易くなり、スーツの形も整い、痛みにくくなり、しかもオシャレさをアピールできます。
ハイレベルなオシャレを目指す貴方であればこそ、正しい選び方の知識を身につけて、快適な着心地を満たしつつ、表地のデザインを引き立たせる裏地選びにこだわっていただきたいと思います。