夫は大学時代の同級生と、共同経営で事務所を営む一級建築士。
会社を立ち上げてから、もう7年になる。
私は別の会社で、やはり建築関係で働いている。
こんど、夫が数年前に手掛けた老舗店のビルの創立記念パーティーに、夫婦で招待された。
5才の息子は母に頼むことにし、その日は半分デートのような気分でいる私。
もちろん仕事の関係のパーティーだけど、二人だけでおめかしして出かけるなんて、何年振りかしら。
これを機に、夫のスーツを新調したいと思っている。
パーティーだから、少し気の利いた華やかなものはどうかしら。
パーティーは2か月後、そんなに時間はないから、オーダーと言ってもイージーオーダーなら大丈夫かな。
スーツはなんと言っても生地。
今流行りのイタリアンスーツを作りたいと思って、ネットで調べていたら、ゼニアと同じような高級感で、オーダーメイドスーツ専門店のページが出てきた。
「知る人ぞ知る、アリストン」だって。
たしかに、この生地のデザイン、あまり日本のスーツでは見ないかも。
ブルーに赤い細いラインが入っていて、落ち着いた光沢感。
裏地はちょっと派手に紫の柄入りで、とてもおしゃれね。
見えないところこそおしゃれにするなんて、このスーツを作った人、センスがいいわ。
こんなお店で作りたいな。
今まで夫は既成のスーツを着ていたけど、オーダーとなるとお店も慎重に選ばないとね。
お店でセンスがかなり変わってきそうだわ。
初めてのイージーオーダー。
時間はどのくらいかかるのか、どこで頼んだらいいのか、出来れば失敗しないでスーツを作りたいですよね。
この記事では、アリストンのイージーオーダーでかかる時間やお店選びのコツなどをご紹介します。
アリストンのイージーオーダーでかかる時間
オーダースーツは時間がかかるというイメージがありますが、オーダースーツには3種類あり、イージーオーダーなら、およそ3~4週間くらいです。
なぜ仕上がり時間に差があるかというと、スーツが出来上がるまでの工程の多さと手間に違いがあるから。
最初にフルオーダーの工程を見ながら、パターンオーダー、イージーオーダーのご紹介をしましょう。
フルオーダー
フルオーダーは”フル”の名の通り、一からすべてを作り上げていきます。
値段と時間はかかりますが、この世に1点だけの、あなただけのスーツが作れるのです。
また、仕上がる工程を楽しむことが出来るのも、フルオーダーのメリットです。
<フルオーダーの工程>
1)カウンセリング
作り手であるテーラーと、どんなスーツにしたいか、どんな時に着用するかなど、相談をします。
テイストやスタイルなど、細かな打ち合わせをします。
2)生地選び
生地はスーツ全体のベースとなるため、生地選びは慎重に。
季節感や素材、柄、色、テイスト、機能や肌触り、価格など、イメージに合った生地を探します。
お店によって生地に工賃が含まれている価格を表示している場合と、生地と工賃が別々で提示されている場合があるため、最初に聞いておくと安心です。
3)スタイルを決める
シングルスーツ、ダブルスーツ、スリーピースなどを選び、ジャケットのボタンの数や、パンツのシルエットなど、様々なスタイルを決めていきます。
4)ディテールを選ぶ
裏地やポケットの形、ボタンやボタンホールの糸色、素材、カラーリングやボタン、ゴージの高さ、ラペル幅など、一つ一つのディテールを決めていきます。
このディテール選びで、あなたらしい個性を表現できるのです。
5)採寸
ここでやっと採寸です。
採寸は、テーラーがメジャーを使って、細かく決められたパートごとに、測っていきます。
パターンオーダーやイージーオーダーと違う点は、型紙から起こすため、右肩が上がっていたり、少し猫背だったりしても、その人の体のクセ通りのスーツが作れることです。
人間の体は全くの左右対称であることはほとんどないらしく、足や腕の長さが違うそうです。
そうしたことにも対応できるのも、フルオーダーならでは。
6)型紙作成
測ったデータをもとに、型紙を作成します。
型紙はCADという設計専用の機械でするお店や、職人の手で作るお店など様々です。
お店によって、型紙作成から契約している工場に出しているところと、自社で行っているところがあります。
7)裁断、仮縫い、縫製
お店によって一人の職人が手で行うところと、工場で行うところがあります。
自社で行うところは裁断のあと仮縫いがあります。
仮縫いの状態で一度試着し、細かな補正を行うためです。
8)仕上げ
プレスやボタンつけ、細部の処理や検品などを行います。
9)試着、納品
最後に試着をし、問題がなければ納品となります。
フルオーダーはこれだけの手間がかかるため、仕上がりまでに2か月程度を要し、全工程を手作業で行うため、価格も15万円~になります。
パターンオーダー
セミオーダー、サイズオーダーとも呼ばれるパターンオーダー。
何着かある既製のスーツの中から、自分の体型に一番近いものを探し、着丈や袖丈などを調整する仕立てのことです。
パターンオーダーは微調整などはしないため、標準体型の人に向いています。
最初から既製服に合わせるため、時間のかかる工程がなく、2万円~という低価格でスーツを仕立てることが出来ます。
短時間で出来上がるため、納期は2~3週間ほどです。
イージーオーダー
フルオーダーとパターンオーダーの間を取ったものが、イージーオーダーです。
マシンメイド、マシンオーダーとも呼ばれます。
縫製工場にある数百の型紙から、体に合ったパーツの型紙を組み合わせて作るスーツ。
生地を選び、採寸後、データを縫製工場に送って発注します。
手作業の補正を加えながら機械も使っての製作です。
スポーツ選手や大柄な人など、体形が特徴的な人に向いています。
手間や時間を短縮するので、フルオーダーより価格も抑えられ、5万円~20万円前後です。
イージーオーダーする時のコツ
イージーオーダーは、そのお店がどんな工場に頼むかで、仕上がりが変わってきます。
工場は何種類くらいのパターンを持っているのか、どこの工場か(国内か発展途上国かなど)など、オーダーする前に確認しておくと安心です。
欲しいスーツのイメージを作っておく
せっかくオーダーで作ったはずなのに、なんだかオジサン臭くなってしまった、という声を聞いたことがありませんか?
オーダーメイドは自分のジャストサイズで、スーツを作れることがメリットですが、お腹が出ていたり、太めだったりする場合、それをそのまま反映してしまうことがあります。
もし目立たなくしたい部分があるなら、その希望もあらかじめ伝えておく必要があります。
工場には数百のパーツごとの型紙があるため、選択肢が広く、的確にイメージを伝えてば、ほぼ希望どおりのスーツが出来上がります。
お店によっては、ポケットをスマホ用にするなど、機能や用途を兼ね備えた希望も聞いてくれます。
イージーオーダーの良いところは、自由に作り変えることが出来るという点です。
細かなディテールや裏地のデザインなども、大量生産ではなく一人一人の希望に合わせることが出来ます。
とはいえ、工場によってその選択肢の数が違うため、最初のお店選びは肝心です。
アリストンの生地を選択
生地選びはスーツを作る上で、とても重要です。
イングリッシュスーツを作るならイギリス産の生地を選びますし、イタリアンスーツを作るなら、自然とイタリア産の生地を選びます。
ここ数年の流行であるイタリアンスーツを作るなら、生地の豊富なアリストンがおすすめです。
アリストンは生地商社で、さまざま生地を豊富に取り揃えているばかりではなく、高級で質の良いものだけを扱っていることにも定評があります。
アリストンの生地は最高級メーカーの生地に数多く使われ、日本でこそまだ知名度は低いものの、本国イタリアではゼニアと並び絶大な人気を誇っています。
また、イタリア・ナポリらしい鮮やかな発色と、ちょっとないような珍しい生地を扱っていることでも有名で、日本では熱烈なファンもいるほどです。
ご覧いただいた画像は、全てウール100%で、4シーズン対応の生地です。
発色の良さ、肌触りの滑らかさは本当に抜群で、ゼニアに勝るとも劣らないほど。
実際に触って確かめる
いくつか記事のアップ画像でアリストンをご紹介しましたが、生地はやはり、実際に手で触って確かめてみることが重要です。
お店にはサンプルが必ずおいてありますので、それをじかに触って、確かめてください。
また、サンプル生地は面積が狭く、全体像がつかみにくいこともあります。
お気に入りや気になる生地が見つかったら、実際に反物を出してもらいましょう。
細かな柄のある生地などは、近くで見るか、遠くで見るかでも、風合いや色合いが変わったりします。
また、お店の照明の下と自然光の下によっても見え方が変わります。
中には自分でサイズを測り、インターネットだけでスーツを発注できるシステムを持つお店もありますが、生地は厚みや肌触り、ヌメリ感など、実際に触ってみると思っていたイメージと違うということもあります。
自分のイメージしているスーツにその生地は合うのかなど、テーラーと相談しながら作るのが理想です。
いつも着ているシャツを着て行く
スーツをオーダーする時は、いつもスーツの中に来ているシャツを着て行くようにします。
休日だからとカジュアルな格好をしていくと、採寸の時にシャツの生地の厚みがことなったり、スーツ着用時の時の採寸がとりにくくなったりします。
もしカジュアルな格好で出かけるなら、シャツを持参することをおすすめします。
また、靴も、極力そのスーツを着るときに、履く革靴を履いていくのが良いでしょう。
パンツの丈やクッションを測るときに必要になりますし、裾の幅を決めるのにも重要です。
こだわりポイントを伝える
オーダーの際は、どうしても外せないこだわりや、着用するシーンなどを伝える必要があります。
ビジネス用なのか、オンオフ兼用なのか。
3シーズン着用か、春夏、秋冬用なのか、それともオールシーズンなのか。
現在はクラシック回帰が流行りなので、スリーピースやツーポケットなど、デザインの好みも伝えておくと良いでしょう。
また、予算の上限も伝えておくと、それに見合った提案をしてくれます。
信頼のできるテーラーで作る
オーダースーツは、実際に採寸するテーラーと、二人三脚で作るようなものです。
それなら、信頼できるお店と、信頼できるテーラーを選びたいものです。
お店選びのポイントは、お店に飾ってあるスーツや、そのお店のホームページで、自分が格好いいと思えるものがあるかどうかが、一つの指標となります。
また、先ほどもお伝えした通り、スーツの仕上がりはお店が出す向上によって、大きく左右されます。
とは言っても、工場の説明は聞きづらい、ということもあるでしょう。
そんなときは、お店に飾ってある製品の縫製を確認。
糸のほつれや縫い目がきれいかどうかなどをチェックしましょう。
チェックポイントはボタンホールやポケットの蓋の付け根、裏地の縫製などです。
また、肩はつぶれていないか、立体的になっているかなどもチェックが必要です。
信頼できるテーラーの条件としては、もちろん印象や相性が大事ですが、親身になって相談に乗ってくれるかどうかや、テーラー自身が年齢にふさわしいスーツを着こなしているかが重要です。
また、スーツや生地の知識は豊富か、トレンドを押さえているか、希望にそったデザインを提案してくれるかどうかなど、いくつか質問してみて、その答えによって判断してみてください。
まとめ
イージーオーダーで作るオーダースーツと、アリストンの生地についてご紹介しました。
イージーオーダーはフルオーダーよりは時間を短縮でき、パターンオーダーよりは融通が利くので、自分にピッタリのスーツを、比較的短時間で仕上げることが出来ます。
オーダーメイドのスーツは、作りに行く前に、どんなスーツを作りたいか、デザインや着用するシーンなど、ある程度のイメージを作っていくことが重要です。
また、テーラーとのコミュニケーションによって仕上げていくため、自分の好みや希望をよく理解し、適切なアドバイスをしてくれるテーラーのいるお店を選ぶことも大切。
イージーオーダーの場合、採寸したら工場へ発注するため、どんな工場に頼むのか、その工場では自分の希望に合った選択肢があるかどうか、事前に確認しておきましょう。
テーラーのセンスによっても左右されるオーダースーツは、採寸に行きつくまでが勝負です。
もちろん、縫製もしっかりとしているかどうか、チェックしましょう。
イージーオーダーなら1か月弱で仕上がってくるため、創立記念パーティーにも間に合いますね。
旦那様に、人とはちょっと違ったデザインのスーツを作って、パーティーの日はこっそりデート気分を味わっちゃいましょう。