一生に何回かお世話になる、礼服。
大人になったら誰もが身につける物ですが、土壇場になってあたふたしないように、日頃から準備しておきたいものです。
礼服にもマナーがあり、黒ならなんでも良いというわけではありません。
意外と知らない、礼服のマナー。
礼服と黒いビジネススーツは、全くの別物です。
礼服も、夜と昼との使い分けや、招待された式での立場、また、スーツや小物の生地、色など、シーンごとにそれぞれのマナーがあります。
まさか、結婚式や披露宴にジャケパンを着ていくツワモノはいないと思いますが、ビジネススーツは意外と着てしまいがちです。
結婚式にリクルートスーツを着て行ってしまい、恥をかいたという若者もいます。
礼服は誰もが必ず必要となるもの。
あるタイミングできちんと揃えてしまいましょう。
今回は、フォーマル専門店のNOVI NOVIOの商品を元に、ご紹介します。
礼服とビジネススーツの違い
黒いスーツでも、礼服とビジネススーツでは違うということをご存知ですか?
若いうちは黒のビジネススーツでも周囲が大目に見てくれますが、歳を重ねても黒いスーツでは恥をかいてしまいます。
最近では店員さんでも、若い人ではマナーを知らない人も多く、店員さんに大丈夫と言われた黒いスーツでも、実はマナー違反だったという実例もあります。
黒いスーツでもビジネススーツと略式の礼服スーツとでは違います。
まず色ですが、同じ黒でも礼服の黒はかなり深いのが特徴です。
礼服は黒が深いほど良いとされています。
高級なものほど製作工程で何度も染め直されています。
次にデザインの違いですが、ビジネススーツと違い、礼服には流行りはありません。
礼服は5年から10年は着るので、体形も変化します。
そのため、最初からゆったりとしたシルエットのものが多いのが特徴です。
礼服にはシングルとダブルがありますが、これはどちらでも正解です。
シングルの2つボタンはすっきりと見えるので、若い人が良く着ています。
ダブルの4つボタンは貫禄や落ち着きが出るので、若い世代から年配まで、幅広く着られています。
シングル
ダブル
痩せすぎた人がダブルを着ると貧弱に見えたり、恰幅の良い人がシングルを着ると、パツパツになってしまったりして、見苦しくなることがあります。
自分の体形に合わせて選びましょう。
礼服はビジネスシーンでは着ることができません。
午後から葬式などに参列する予定のある場合には仕方のないこともありますが、普段着ていくと、ご不幸があったのかと周囲から心配されてしまいます。
また、ビジネススーツは葬式では着ることができません。
唯一通夜の場合は、「取り急ぎ駆け付けた」という意味が含まれるため、礼服でなくても良いとされています。
その場合も、落ち着いた濃いグレーなどにし、ネクタイも明るい色は控えましょう。
ネクタイや靴下は駅の売店やコンビニエンスストアで手に入れることができます。
ネクタイ、靴下くらいは、急な場合でも調達して、黒いものを締めましょう。
礼服選びのコツ
1)黒が深いものほど高級感があり、格調が高い
礼服とビジネススーツは兼用できないため、きちんとした礼服を選びましょう。
その際、色は濃い目のものを選ぶと、10年後も恥ずかしい思いをしないで済みます。
2)デザインは流行でないものを
礼服の中には、まれにその時の流行を取り入れているオシャレなものもあります。
しかし、礼服は5年後10年後も着るもの。
デザインは流行に左右されないものを選びましょう。
体形の変動のことも考え、ズボンはアジャスター付きのものを選ぶと長く着られます。
礼服には夏用、冬用があります。
関係の近い親族が亡くなった場合は、3年ごとに同じシーズンで着るので、その季節のものを選びがちですが、結婚式にも着用できるよう、1着目は通年を通して着られる素材のものを選びましょう。
略式
本来は正礼装が本式ですが、日本では正礼装でなくても通用する、“略式”があります。
ブラックスーツ
いわゆるブラックフォーマルです。
ブラックスーツは、以前は略式とされてきましたが、現在では昼夜、慶事、弔事とほとんどのシーンで着用できます。
ダークスーツ
ビジネススーツの濃い色のものを言います。
慶事の時と通夜に、着用可能です。
色としては、濃いネイビー、濃いグレー、チャコールグレーなどで、ブラックスーツと同格とみなされます。
通夜の際には礼服よりも、むしろダークスーツで駆け付けたほうが、マナーとしては正解です。
というのも、通夜に礼服で行くと、最初から不幸を予想していたような印象があるためです。
現在では、通夜にも礼服で出席する人もいるので間違いではありませんが、「取り急ぎ駆け付けた」という気持ちを表すため、失礼でないのはダークスーツです。
ディレクターズスーツ
シングルの礼服のスラックスを、黒ではなくグレーのストライプ(コールパンツ)にしたものを、ディレクターズスーツと呼びます。
シャツの上にはグレー系のベストを着用し、シャツはレギュラーカラーシャツを合わせます。
ブラックスーツよりワンランク上に位置付けられるもので、慶事の場合、新郎や主賓、スピーチ担当とされています。
また、ベストとネクタイを変えれば弔事にも使用できます。
ジャケットはシングルの2つボタンなので、シングルの礼服を持っていれば、コールパンツとグレー系のベストを買い足せば使用できます。
ただし、新郎のお色直しや、新郎新婦のお父様と被る場合がありますので、ブラックスーツの方が無難ではあります。
正礼装
冠婚葬祭以外で、公式な式典やパーティーなどに出る機会のある人は、正礼装を着用します。
昼の礼装はモーニングコート
礼服でも格式の高いのはモーニングコートで、上着の腰から後ろの裾にかけて、まるく曲線にカットされています。
午前中からお昼までの結婚式や披露宴、記念式典、公式行事などのシーンで、主役や準主役が着用します。
また、葬儀や告別式での喪主や、一周忌までの法要でも着用します。
・ベスト
慶事の場合:共布地の黒かグレー、シングルベストかダブルベスト、白襟あり
弔事の場合:共布地の黒で、白襟なし。
・シャツ
シャツはレギュラーカラーシャツが基本で、慶事の場合はウィングカラーなどを用います。
夜の礼装はタキシード
夕方からの結婚式や披露宴、記念行事、晩餐会などに着用します。
招待状に「ブラックタイ」と指定があれば、タキシードのことです。
そのほかにも夜の音楽会、観劇、カジュアルなパーティーなどにも着用できます。
ジャケットの襟は光沢のある拝絹が用いられ、腹部にはカマーバンドを着用します。
シャツはウィングカラーシャツで、胸元にフリルやプリーツが入ったものは、更に華やかになり、フォーマル度がアップします。
喪服
葬式や法事は、ブラックスーツを着用します。
シングルでもダブルでも構いません。
ネクタイと靴下はもちろん黒です。
コートは黒がベストですが、濃紺や濃いグレーでもOKです。
ただし、毛皮や革、ファー付きのものは殺生を連想させるので、タブーとされています。
その他、金属や光沢のある装飾品のあるものも控えます。
数珠や袱紗なども忘れずに用意しましょう。
礼服の小物選び
礼服には小物が必需品です。
ハンカチ、タイ、ポケットチーフ、靴などなど。
結婚式や華やかな式典なら、ラベルピンなどで胸元を演出するのも、他の人とちょっと差をつける装いになります。
小物にもマナーがありますので、押さえておきましょう。
靴と靴下
靴の基本は黒です。
革靴には内羽根式(紐を通す革部分が内側に隠れている)と外羽根式があり、
結婚式にはストレートチップの内羽根式や、夜ならエナメル素材もおすすめです。
リーガルのサイトでは、靴のスタイルとデザインを知ることができるページがあります。
内羽根式
外羽根式
反対に葬式ではツヤのないものを選びます。
靴のマナーに関しての詳しい記事はこちら。
なお、慶事、弔事ともに、スウェードは殺生を連想させるため、御法度です。
靴下はコットンではない靴下を履きましょう。
コットンの靴下はカジュアル向きですので、礼服では着用しません。
通夜などの急な時も、コンビニエンスストアなどで手に入れて履き替えましょう。
タイ、ポケットチーフ
結婚式での礼服に合わせるネクタイは、真っ白よりも白地に柄の入ったものや、シルバーグレーにすると明るい印象になり、おすすめです。
ポケットチーフはフォーマルな装いを、より華やかに演出する小物として、重要な役割を果たしてくれます。
ポケットチーフを選ぶ基準は上品さ。
色や素材を工夫しましょう。
慶事では、基本は白い麻素材で、フォーマルな場に最も適しているとされています。
友人の結婚式やカジュアルなパーティーなどでは、シルクや色柄のついたものもOKです。
ポケットチーフは華やかさを表すため、弔事では用いないようにしましょう。
動画:ポケットチーフのたたみ方-スリーピークス
(引用:ozie)
その他のポケットチーフのたたみ方の詳しい説明については、
こちら。
略式と正礼服
タキシードは蝶ネクタイが正式ですが、カジュアルな場ではアスコットタイなどもOKです。
結婚式などでは、タイは白、シルバーグレー、白黒の縞のネクタイかアスコットタイが城に準じた装いになります。
また、二次会やカジュアルパーティーなどでは、カマ―バンドは黒以外にすることでカジュアルダウンできます。
モーニングは手袋を持ち、綿のポケットチーフを用います。
シャツ
シャツは襟の形がたくさんありますが、どれにでも合うスタンダードは、レギュラーカラーシャツかワイドです。
フォーマルシーンでのシャツの色は、白かサックスブルーが正しいマナーとされていますが、
二次会やカジュアルなパーティーならピンクや紫、黄色の薄いものならOKです。
フォーマルシャツの詳しい記事はこちら。
二次会で新郎と被らないフォーマルの選び方
時々起こるハプニングとして気まずくなるのが、新郎のお直し衣装とのブッキング。
ポケットチーフやネクタイなどを工夫することで、新郎とのブッキングを防ぎやすくなります。
タキシードは通常白と黒ですが、タイやベスト、チーフの色や柄を合わせると、カジュアルな略式になります。
二次会の他に、ビュッフェスタイルのパーティーや親しい人とのカジュアルなパーティーにも使えますので、覚えておくと便利です。
シーン別のスーツ選び 早見表
昼間の結婚式
・主賓 モーニング、ディレクターズ、ブラックスーツ
・ゲスト ブラックスーツ、ダークスーツ
夕方からの結婚式や披露宴
・主賓 タキシード、ディレクターズ、ブラックスーツ
・ゲスト タキシード、ブラックスーツ、ダークスーツ
昼間の公式行事、卒業式、謝恩会、葬式喪主
・モーニング
夕方からのフォーマルなパーティー、音楽会、観劇
・タキシード、ダークスーツ
・通夜
・ダークスーツ、ブラックスーツ
葬式
・ブラックスーツ
まとめ
礼服と黒いビジネススーツの違い、シーン毎のマナーや礼服選びなどについてご説明しました。
なんとなくは分かっていても、いざ自分が揃えるとなると、意外と知らないことも多かったのではないでしょうか。
結婚式は、若いときには友人や親せきのゲストとして招待されることが多くても、歳を重ねるに従って、上司や主賓、花嫁・花婿の父親として出席することになります。
また、弔事は年齢を問わず、いつどんな時に起こるか分からないものです。
日頃から準備しておくと、いざというとき慌てることなく行動できます。
また、長年使用するものなので、サイズや流行に左右されないデザインを選ぶことも重要です。
数珠や袱紗の用意も忘れずにしておきましょう。
袱紗は慶弔兼用のものを持っていると便利です。
一つ断っておかなければならないのは、ブラックスーツは日本でのみ通用する礼服だということです。
海外では日本の略式の礼服は通用しませんが、一般の招待客ならダークスーツで対応できます。
一生に何度かは必ずお世話になる礼服。
この機会に、揃えてみてはいかがでしょうか?