「クールビズ」。
スーツでお仕事する人も、そうで無い人も聞いたことがある単語ではないでしょうか。
日本政府は平成17年度より環境対策などを目的とし、冷房時の室温28℃でもオフィスで快適に過ごせるような服装を呼びかけています。
期間は5月から9月いっぱいまでとされていますが、ネクタイやジャケットを省いた軽装が社会において認められるようになり、あるアンケートによると認知度が9割以上という結果が出るほど.
軽装は過ごし易くて楽ですが、スーツと違いコーデに自由が効く分、着こなしのセンスが問われてくると言えるかもしれません。
それはジャケパンにも言える事でジャケットとパンツを組み合わせる「ジャケパン」ですから、ジャケットを省いたらどんなコーデにすれば良いのだろうか、といった疑問も湧くはず。
そこで今回は「クールビズ」と「ジャケパン」をテーマに取り上げ、クールビズ時のお勧めジャケパンコーデを紹介します。
ジャケットは「通気性」、「吸湿性」がキーワード
そもそもクールビズにおいてジャケットの着用は必要なのか、不要なのか?という疑問も持つ人も多いはず。
仕事場にもよりけりですが、政府が発表している指針ではジャケットの着用は不要とされています。
一方でお客さんと会う機会が多い場合、「クールビズとは言えどジャケットは着たい」という考えをお持ちの人も多いようです。
ですので、夏場でもジャケットを着用する場面はあり、そこで重要になってくるのがジャケットの「通気性」と「吸湿性」。
また、外を歩く際などはジャケットを脱いで手で持つ場合もあるでしょうから、防シワ加工が施されていることも重要視した方が良いかもしれません。
素材は「ウール」、「コットン」、「綿」、「モヘア」、「麻(リネン)」と言ったものがその点では優れており、特に「麻(リネン)」は外観的にも爽やかな印象で春夏用向けのジャケットとしては定番です。
例えばこちら。
表地は麻100%という仕様、そしてオフホワイトカラーということで爽やかさがアピールできる一着となっています。
もう一着イタリアの名ブランド”Lardini”からの一着。
ウール58%, 麻42%という清涼感のある素材使い、そして落ち着いたトーンのチェック柄が魅力です。
尚、”Lardini”はPrada, Burberry, Dolce & Gabbanaといった高級ブランドのOEM製造を30年以上請け負ってきていましたが、1993年に設立したオリジナルブランド。
イタリアンブランド特有の「アンコン仕立て」を得意としているのですが、このアンコン仕立ても実はクールビズ時のジャケットにお勧めしたい仕様なのです。
アンコン仕立て=「おしゃれ」+「涼しい」
“Lardini”をはじめとして”Boglioli”, “Cesare Attolini”, “Cantarelli”といったイタリアンブランドが生み出した「アンコン仕立て」。
従来のジャケットは肩パッド、芯、裏地といった資材を使用することにより、整ったシルエットを作り出すことがジャケット作りの鉄則だったのですが、こういった資材を使わずに仕立てたジャケットが「アンコン」と呼ばれるようになりました。
Boglioliの三代目Mario Boglioli氏曰く、一時期イタリアの若者の間ではお下がりのくたったジャケットを羽織るのが流行っていたらしく、そのヴィンテージ感とこなれた雰囲気にインスピレーションを受けたのがアンコン仕立てを作り始めたキッカケとのこと。
肩パッド、芯、裏地という資材を使わないことにより、丸み帯びたフォルムと柔らかい着心地を実現でき、堅苦しくなりがちなテーラードファッションにリラックス感を与えてくれます。
また裏地を使用しないことにより通気性がよくなるので、まさにクールビズにピッタリな仕立てなのです。
そしてこちらがそのアンコン仕立てのジャケット。
Boglioliからの一着で生地はウールとリネンのハーフ。
一部資材が省かれており、カーディガンを羽織るような軽い着心地が特徴で、クールビズ時はもちろんですが、他のシーズンにも使えるジャケットです。
シャツはノーネクタイを踏まえるべし
続いてシャツについてですが、クールビズ時はノーネクタイが基本となります。
ですがシャツにはノーネクタイで使える物とそうでない物があり、クールビズ時はまずここに注意しましょう。
この襟の型を選ぼう
まずお勧めしたいのが「ボタンダウン」。
ボタンダウンは衿先についているボタンで襟を固定することができ、ノーネクタイ時のシャツとして人気のタイプです。
元々はアメリカントラディショナルの代表格ブランドである「Brooks Brothers」がポロ競技用のシャツとして開発したものと言われており、クールビズにおいては定番のシャツと言えるかもしれません。
つづいては「スナップダウン」。
一見レギュラータイプのものと変わりないように見えるかもしれませんが、実は襟の裏にボタンが隠されており、そのボタンで襟を固定できるのです。
ボタンダウンのボタンは襟の固定と共に装飾の意味合いもありますが、スナップダウンはレギュラーカラー同様にボタンが見えないのでよりドレッシーなコーデにマッチします。
そして「クレリック」もノーネクタイで使えるシャツの一つ。
クレリックはもともと1920年代にブリティッシュ・トラッドの一環として流行したもの。
襟が小さ目にデザインされているのでこちらもノーネクタイで使用できるシャツとなっています。
生地の機能性も重視すべし
生地の機能性も重要。
なにせシャツは直接肌に触れますし、ジャケット同様に通気性や吸湿性が重要になってきます。
そこで次はシャツの生地に着目したいのですが、お勧めは近年注目を集めている冷感素材。
例えばスイスの紡績会社が長年の経験を活かして開発した「ICE COTTON」。
錦糸の撚りで冷感性を生み出し、肌に触れると熱を吸い取り、ひんやりとした着心地が特徴です。
そんなIce Cottonを使用したシャツがこちら。
ボタンダウンにアイスコットン生地を使用しており、まさにクールビズ仕様のシャツです。
また冷感機能だけでなく形態安定加工も施されているので自宅の洗濯機で洗ってもキレイな形状を維持でき、とても便利な一着となっています。
もう一つお勧めなのが「COOL MAX」と呼ばれる素材。
1986年に生まれた素材で元々はスポーツウェアに使われていましたが、現在ではその冷感機能をはじめ、柔らかさ、速乾性が評価されスーツやシャツにも使用されるようになっています。
ちなみにこちらがCOOL MAXを使用したシャツ。
ホワイトの爽やかなデザインですが、COOL MAXを使用しているため吸汗性・速乾性に優れており、クールビズコーデに一着は持っておきたいシャツの一つといえるのではないでしょうか。
インナーは着るべき?
シャツと合わせて考えたいのがインナー。
そもそも素肌の上に直接シャツを着るべきか、あるいはインナーを間に着るべきか、意見が分かれるところかも知れませんが、起源を辿るとシャツは元々下着として扱われており、公の場ではジャケットを脱がないのがマナーとされていた様です。
ですので、シャツの下にインナーを着ることは厳密には下着の下に更に下着を着るようなことなのですが、日本は高温多湿ですし、ジャケットの着用が不要とされているクールビズにおいてはシャツの意味合いも変わってくるでしょう。
汗が染みたシャツ姿は印象が良くないですし、そういった点を踏まえるとインナーは着た方が良いかもしれませんね。
ただインナーを着る際にも注意点があり、ノーネクタイの場合首元が空くので、Vネックの物を選ぶなどしてインナーが首元から見えないようにしましょう。
またシャツからインナーが透けない様に白いインナーを着ると言った色の配慮も大切ですが、こうした点を押さえれば快適なクールビズコーデに仕上げることができるはず。
特に近年は数千円という値段で、「速乾」、「消臭」といった機能を持つインナーが出回っているので汗が気になる方にはインナーの着用がお勧めです。
夏用インナーTOP3
今回紹介したいインナーTop3は以下の三つ。
-Top Value社の「Peace Fit」
-イトーヨーカドー社の「Body Cooler」
-UNIQLO社の「Airism」
いずれも千円前後とお手頃な値段なので、汗ばむ夏場に複数枚用意しておける心強い味方です。
まずはTop Value社の「Peace Fit」についてですが、「肌触り」と「消臭」、それぞれに焦点を合わせたシリーズを展開しており、素材は吸湿性や吸水性に優れたレーヨンを多めに使用している点が特徴。
目的に合わせてシリーズが分かれているので、欲しい機能に合わせて選べるのがメリットです。
続いてイトーヨーカドー社の「Body Cooler」ですが、他のインナーに比べて綿の使用率が高いのが特徴と言われており、綿を多めに使用することにより汗をすぐに乾かす速乾性、そして心地よい肌触りを実現したインナーとなっています。
そしてUNIQLO社の「Airism」はポリエステルを多めに使用したインナーで、シワになりにくく、また耐久性が強いという利点があります。
また、UNIQLO社独自の加工により吸湿性にも優れており、全体的に高機能なインナーと言えるでしょう。
いずれのブランドも消臭機能や速乾性を持っている他、タンクトップタイプの物、Uネックタイプ、Vネックタイプ、メッシュタイプなど、用途に応じて様々なモデルが用意されています。
ジャケパンには襟元がシャツから出にくいVネックタイプがお勧めですが、自分の好みと合わせていくつか試してみるのも良いかもしれません。
パンツもクールビズ用を用意しよう
クールビズにおいて半袖シャツは認められていますが、半ズボンはNG。
やはり長ズボンとなりますが、まずは外観上薄めの色が涼しげに見えて良いと言われています。
グレーやオフホワイト、またはベージュなど、上半身のアイテムの色との兼ね合いもありますが、薄めで爽やかなイメージを心がけるのがポイントです。
またクールビズはジャケットを羽織らない場合、シンプルなコーデになる傾向にあるので、パンツの裾をロールアップの様に仕上げる「ダブル」にすると全体のバランスが良くなるでしょう。
そしてダブルと合わせてお勧めしたいのが9分丈、アンクル丈で履く事。
9分丈にすることにより涼しげな印象になるのですが、その場合シングルだと印象が軽くなりがちなので、そういった意味でもダブルに仕上げるのがお勧めです。
そしてパンツも他のアイテム同様に通気性や吸湿性を重視したいところ。
そこで登場するのがシャツでも登場した冷感機能を持つ素材でして、次はお勧めのパンツを紹介します。
クールビズコーデにお勧めのパンツ
上記画像はSuit Select社より売り出されている、COOL MAXのタックパンツ。
COOL MAXは吸汗・速乾が特徴の素材ですが、ウォッシャブルな点も実用的でお勧めです。
またこちらの一着は股上が浅めのスキニーシルエットで、フロントポケットも手が入りやすいよう斜めにデザインされており、細かな配慮が見えます。
伸縮性にも優れているのでスリムなシルエットながら動きやすさを実現しており、外観面と実用面の両方で優れた一着と言えるのではないでしょうか。
また、もう一つお勧めしたいのがこちら。
1936年創業のイタリアの名ブランド「カノニコ」のウール生地を使用したパンツ。
スッキリとしたテーパードライン、そしてウィンドーペーン柄があしらわれており、ジャケットを脱いでシャツとパンツだけになってもコーディネートを華やかに見せてくれます。
残念ながら冷感機能はありませんが、外出が少ない人や、実用面よりもコーディネート面に拘りたい人にお勧めです。
まとめ
今回はクールビズ時のジャケパンコーデというテーマでお話しました。
-ジャケット
-シャツ
-インナー
-パンツ
-シャツ
-インナー
-パンツ
以上4アイテムについて、どのような物がクールビズに向いているか紹介しましたが、各アイテムの内容について振り返りましょう。
-ジャケットについて
政府が発表しているクールビズの指針上ジャケットは不要ですが、お客さんと合う機会が多い場合などは自ら着用する人が多い傾向にあるようです。
その場合は麻(リネン)をはじめとした素材を使用しているジャケットや、資材を極力省いて仕立てられた「アンコン」のジャケットがお勧めで、通気性や吸湿性を確保することにより夏場でもジャケットコーデを楽しむ事ができます。
-シャツについて
クールビズはノーネクタイが基本となるので、ネクタイ無しで着用可能な襟型のシャツを選ぶのがポイント。
ネクタイなしでも着用が良しとされる襟型は
-ボタンダウン
-スナップダウン
-クレリック
と言ったタイプのもの。
また
-ICE COTTON
-COOL MAX
と言った素材を使用したシャツは速乾性や吸湿性、そして形態安定といった機能を備えており、襟型と合わせてチェックすると良いでしょう。
-インナーについて
まず本来はシャツ自体が下着である旨を説明しつつ、日本が多湿高温であることや、クールビズでジャケットの着用が不要とされている状況を踏まえると、シャツの下にインナーを着用するのはむしろお勧めであることがお話しました。
そして以下3つのインナーを紹介しています。
-「肌触り」、「消臭」と目的別のシリーズを用意しているTop Value社の「Peace Fit」
-綿を多めに使用することにより、速乾性、そして心地よい肌触りを実現したイトーヨーカドー社の「Body Cooler」
-防シワ、優れた耐久性、滑らかな肌触り、まるで着ていないような軽い着心地、そして独自の加工により優れた吸湿性を実現したUNIQLO社の「Airism」
いずれも千円前後なので、汗ばむ夏場に複数枚用意できるインナーとなっています。
-パンツについて
色選びは薄めの物がお勧めである点や、ロールアップ仕上げ、そして9分丈で足元を軽やか且つ華やかに見せるテクニックを紹介しました。
またパンツにおいてもCOOL MAX生地をお勧めし、COOL MAX生地を使用したパンツを紹介しつつ、シャツとパンツだけのシンプルなコーデでも華やかさをアピールできるウィンドーペーン柄のパンツを紹介しています。
「クールビズ」と「ジャケパン」というテーマでお話しましたが、これらの情報を参考にすればクールビズ時のジャケパンコーデも怖くないはず。
通気性や吸湿性を意識したアイテム選びや、ノーネクタイを踏まえたシャツ選びを心がけて、クールビズでも自信を持ったコーデに仕上げてみてください。