アルマーニとグッチ、オーダーメイドのスーツを語るときによく比較される二つのブランドです。
どちらもラグジュアリーで、高級感あふれるブランドです。
では、スーツを作るとき、どちらのブランドを選ぶべきか、何を基準に考えればいいでしょう。
着用する用途はビジネスと考えるなら、アルマーニはビジネス向きではないとよく言われています。
しかし、本当にそうでしょうか?
また、グッチも全てがハイクオリティなことでは有名ですが、問題は着用するシチュエーションです。
華やかなグッチはビジネスシーンで着用できるのかと気がかりにもなるでしょう。
また、着心地重視のあなたなら、どちらのスーツが自分にとって着心地がいいかと気になると思います。
そもそも、着心地も人によってはタイトなものを好む人、風を纏うくらいラフで軽いものを好む人と分かれます。
ここではあなたがどちらを選ぶべきか明確になるように、アルマーニとグッチ、いろいろな角度から比較してみました。
最後まで読んで、ゆっくりご検討ください。
それぞれのブランドについて
アルマーニとグッチ、両方とも高級ブランドとして知られていますね。
だけど、意外とその特徴を把握している人は少ないかもしれません。
ここではアルマーニとグッチを色々な角度から比較してみますね。
アルマーニというブランド
アルマーニの服は、優雅、エレガント、高級素材、完璧で研ぎ澄まされたスタイルなど、いくつもの最上級の形容詞で言い表されます。
アルマーニは1975年に、デザイナーであるジョルジオ・アルマーニが設立したブランドです。
ジョルジオ・アルマーニは1934年イタリア・ピアチェンツァに生まれました。
初めは医師を目指しミラノ大学に進学しますが、途中兵役に服すため中退、帰還後は別のキャリアに転向することを決意します。
1957年から7年間、ミラノの百貨店ラ・リナシェンテでバイヤーとして勤め、1964年からはニノ・セルッティのメンズウェア「ヒットマン」でデザイナーと製品開発係として経験を積みました。
1975年41歳の時、建築家のセルジオ・ガレオッティと会社を設立し、メインブランド「ジョルジオ・アルマーニ」を発表します。
その後次々とラインを増やし、現在はメインブランドの「ジョルジオ・アルマーニ(GA)、セカンドラインの「エンポリオアルマーニ(EA)」、ディフュージョンラインである「アルマーニ・コレッツィオーニ」が3本柱となっています。
また、エンポリオアルマーニのスポーツライン「EA7」、カジュアルラインの「アルマーニジーンズ」、ストリートカルチャー要素を取り入れた「アルマーニ・エクスチェンジ」を展開しています。
アルマーニは完璧主義で知られ、“マエストロ・ディ・マエストロ(巨匠の中の巨匠)”と呼ばれるほど。
最高級の素材と技術の追求、優雅でエレガントなスタイルは世界中から高く評価され、全身をアルマーニで固める女優が現れるなど、多くのセレブリティに熱烈なファンを持っています。
それは、アルマーニの追求する哲学に賛同する人が多いからかもしれません。
インタビューでは「あくまでもナチュラルで、着心地がよく、現代生活にマッチするもの。そんなデザインを追求していくと、自然とシンプルなものになっていく」と答えています。
上質な素材で上質なナチュラルを追い求めていくと、心地よいライフスタイルが出来上がっていくのかもしれませんね。
また、イタリア政府からイタリア共和国功労勲章を授与されたほか、華々しい多数の受賞歴があり、数々の映画衣装を手がけ、書籍やCDを発売するなど精力的な活動を続けています。
特に映画衣装ではリチャード・ギアの「アメリカン・ジゴロ」やケビン・コスナー主演の「アンタッチャブル」などが記憶に残るところですね。
2004年には「アルマーニ・ホテル&リゾート」を展開し、2010年には「アルマーニ・ホテル・ドバイ」をオープンするなど、その事業手腕も振るっています。
グッチというブランド
グッチはバブルの頃、バッグが若い女性の間で流行したブランドで、この頃グッチを知ったという方も多いのではないでしょうか。
グッチはイタリアのラグジュアリーブランドで、レザーを取り扱うファクトリーとショップから出発しています。
創業者のグッチオ・グッチは1901年、フィレンツェに生まれ、ロンドンに移り住みました。
そこで英国貴族の洗練された感性に刺激を受けます。
第一次大戦後の1921年、バッグや靴、財布など乗馬をモチーフとしたレザー製品で成功を収めます。
しかし、第二次大戦が始まると皮革製品は統制品となって生産できなくなりました。
そこで、代用品としてキャンバス地に緑・赤・緑の配色を施したコーティング素材を使用しますが、これが大ヒットし、今でもグッチのアイコン的配色になっています。
また、同時期にやはり代用品として竹素材を使用したことから、現在でも有名な「バンブー」が誕生しました。
60年代半ばには二重のGロゴを採用し、これが新たなグッチのアイコンとなり現在に至っています。
その後はウィメンズウェアの既製服、香水などを発表し、ロンドン、パリ、東京などにショップをオープンし、グローバル展開しました。
しかしランウェイでのショーは意外と遅く、1981年の開催です。
実は、グッチの長い歴史は、良いものばかりではありませんでした。
創設者グッチオ・グッチの存命中、グッチオの反対を押し切る形で息子のアルド・グッチが後を継ぎ、グッチオ亡き後はアルドの息子パオロが社長に就任します。
しかし、その後グッチの株を持っていた親族に財産目当てで近づいてきた女性に、ブランドは乗っ取られてしまいました。
暗殺などの暗い事件も絡み、グッチは一時崩壊し、ついにはグッチ家を離れることになります。
そして、フランスの大手流通会社PPR社(現ケリング社)と提携してグッチ・グループになりました。
そして数年でセルジオ・ロッシ、イヴ・サンローラン、バレンシアガなど有名数社を次々と傘下に収めることになります。
著作権契約などグッチ家とケリング社の間で様々な問題がありましたが、現在ではケリング社がグッチの親会社となりました。
デザイナー方面では、1994年にはクリエイティブ・ディレクターにトム・フォードが就任し、大胆さとセクシーさのあるグッチに進化させ、モード界で注目を集めました。
1981年以来、ランウェイではウィメンズとメンズのショーを別々に開催していましたが、2017年春夏のショーでは、ウィメンズとメンズを統合した形にしています。
補足ですが、グッチはブランドの元祖とも呼ばれ、世界で初めて品質保証のためにデザイナーの名を商品に入れたことでも知られています。
アルマーニVSグッチ:価格
高級ブランドで知られるアルマーニとグッチ。
まずは気になる価格から比べてみましょう。
アルマーニですが、ラインを価格順に並べると次のようになります。
ジョルジオ・アルマーニ>コレッツィオーニ>エンポリオアルマーニ>アルマーニジーンズ
価格はスーツで比べた場合、ジョルジオ・アルマーニが50万円くらいから、コレッツィオーニは15万円くらいから、エンポリオアルマーニはカジュアルラインなので、ジャケットなら13万円台くらいからです。
メインラインはとてもじゃないけど手が届かないという人も、ディフュージョンラインの「コレッツィオーニ」なら一気に選択肢に入る人も少なくないでしょう。
ディフュージョンラインとは、ブランドの普及版のこと。
ブランドの特徴を残しつつも、普及するために価格を抑えて作ってあります。
そのため普段に着用するビジネススーツとしても考える余地が出てくるのですね。
ビジネスシーンには、ジョルジオ・アルマーニよりコレッツィオーニの方がふさわしく、日本人の体型にはこのラインの方が合うとする人もいるくらいです。
次にグッチを見てみましょう。
グッチもやはり価格帯は幅広く、10万円台〜40万円台です。
アルマーニもグッチも高級と呼ぶにふさわしく、最高レベルのものでは一般庶民には手が出しにくいお値段ですね。
しかし、本当に良いスーツは手入れをして何十年も着るもの。
一生もののスーツを作るなら、どちらも選択肢の範疇に入ってくるでしょう。
一つのブランド内の価格の差は、使用している生地や生産地(工場)などによるものです。
例えば低価格のものは中級の生地を使用して中国の工場で作られ、最高価格のものは最高級生地を使いイタリア本国で作られているなどのように。
グッチでは特にラインを設けているわけではないので、使用されている生地のブランドと価格で判断するしかないところが難しいですね。
ただし、最近ではオンラインで、セールで出しているショップもあるので工夫次第では手に入りやすくなりますよ。
その際には価格より使用されている生地や作られた工場をチェックしてみてください。
同じ生地が使われていても、縫製工場によって作りが雑になっていることがあるからです。
アルマーニVSグッチ:機能性
次は機能性について見てみましょう。
戦うビジネスマンにとって、機能性はかなり重要度が高いもの。
機能とは撥水加工や防シワ加工、伸縮性などです。
アルマーニは「ファッションはその時代のライフスタイルに合ったもの。オフィスで心地よく着ることができる服が基本。デザイナーの自己満足でしかない奇をてらった服はナンセンス」と自らが言うように、機能性重視とされています。
そのため、価格さえクリアすれば、ビジネスシーンでも着用できます。
ただし、メインラインのジョルジオ・アルマーニはデザイン性の強いものが多いため、職場では着用が難しいかもしれません。
現実的なのはディフュージョンラインのコレッツィオーニでしょう。
グッチはウィメンズ製品から出発していることもあり、モード感が強くきらびやかで豪華な印象。
その特別感は、素材の使い方やシルエットにも出ていますね。
デザインに見られるように、細部にまでこだわった美や贅沢感を追求しているため、機能性というよりはラグジュアリー感を重視しているハイブランドです。
しかし、それゆえに機能性云々より、職場での着用はちょっと難しいですね。
また、アルマーニはコレッツィオーニというビジネスシーンにも対応できるラインがあるのに対し、グッチにはそのような存在がありません。
視点を変えてみると「パーティー用」「華やかなセレモニー用」としての機能性は抜群だと言えるでしょう。
アルマーニVSグッチ:着心地
スーツの着心地を決めるのは、生地とシルエットです。
アルマーニもグッチも、当然高品質の生地を使用しています。
生地についてはラグチュアリーブランドを総なめにしているゼニアが、両者ともに使われています。
ゼニアはスーツ界の世界1/3をシェアしており、各国王室や世界中のエグゼクティブから支持されている生地ブランドです。
生地については、各ブランドが行き着くところはやはり頂点ということで、これは比較のしようがないのかもしれません。
そこで、シルエットはどうでしょう。
アルマーニは削ぎ落とされたシンプルさとスマートさを持っています。
それは、偽りが嫌いというアルマーニのプライドや哲学にも通ずるもの。
また、ライフスタイルに即したデザインを追求すると、ごくシンプルになるという考えにも基づきます。
本物だけを追い求める完璧主義者だからこその、洗練されたスマートさです。
また、軽い着心地を重視していて、体の動きを阻害しないとして、女性の愛用者からも人気が高いとのこと。
やはり洗練されたエレガントさを表現するため、ある程度のゆとりや空気感のようなものを持つスーツと言えそうです。
対してグッチはフィット感に定評があります。
細かいデザインに凝りながらも、着た人にジャストフィットする着心地。
ビジネスの場面で着用するにはあまりにも上質な質感と気品を醸し出すため、普段の営業などにはそぐいません。
しかし、フィット感は抜群なため、堅苦しいパーティーなどでもリラックスして臨むことができそうです。
アルマーニVSグッチ:評判
気になる評判はどうでしょうか。
30代以降の男性が、一度は手を通してみたいと思うスーツブランドとして、アルマーニとグッチは肩を並べる存在です。
アルマーニの評判は、一言で言えばその「カリスマ性」。
高級スーツといったらアルマーニが代名詞になる時代もあったほどです。
現在でも日本のスーツ市場において、その地位を保持し続けています。
また、クオリティとオシャレ面で王道的なスーツでありながら、ビジネスシーンで着用できるというのも人気の秘密。
アルマーニ=スーツの王様という評価が一般的なようです。
一方、グッチの評判はどうでしょう。
グッチはとにかく全てがハイレベルということ。
モード感溢れるデザイン、伝統を受け継ぐ品質ともに、クラス感がありますよね。
贅沢な素材と仕上げ、妥協しない確かな品質はハイクオリティと呼ぶにふさわしいもの。
ビジネスというよりは、ハレの日のタキシードやセレモニー用のスーツという印象のようです。
アルマーニVSグッチ|まとめ
アルマーニとグッチの特性がお分かりいただけたでしょうか。
お互いハイブランドでありながら、着用目的や着心地への考え方は異なります。
世間一般で「デザイン性が強すぎるからビジネスに不向き」と言われているアルマーニは、ジョルジオ・アルマーニのこと。
アルマーニでもディフュージョンラインのコレッツィーニなら、価格・機能性ともに実用的です。
それに対しグッチはモード感が強く、細かな部分までデザイン性にこだわるオリジナリティあふれるスーツです。
ビジネス用と言えるラインはないので、価格帯とデザイン性で選択することになります。
しかし、ブランド名と使用されている高級生地に安心して低価格のものを選ぶと、縫製で妥協することになる場合もありますのでご注意を。
グッチのスーツは華やかさもあり生地も繊細なので、着用シーンはビジネスというよりは、セレモニーやパーティーなどの特別な日に向いています。
日本では高級スーツの代名詞とされるアルマーニ、そしてブランド全体の知名度で言えば勝るとも劣らないグッチ。
ブランドを着ると言ってしまえばそれまでですが、着用する用途やデザインやシルエットの好みで選ぶのが良いでしょう。
あとはブランドの方針です。
アルマーニはその時代のライフスタイルに合ったスーツを作るという信念において、完璧なまでのものつくりを行なっています。
完璧主義なゆえにあらゆるものを削ぎ落とした結果、シンプルで軽い衣服にたどり着き、全身をアルマーニでコーディネートする女優さんもいるほどです。
グッチは現代も意識しながら古き良き伝統を大切にするブランド。
ブランドの長い歴史の中には紆余曲折もありましたが、それでも世界のトップに君臨し続けるもの作りへのこだわりは変わりません。
また、ブランドの元祖と呼ばれ、グッチを纏うことはプライドを纏うことを表すと言っても過言ではないでしょう。
あなたはアルマーニとグッチ、どちらを選びますか?