ゼンマイを巻かないと、中のオイルが固まって動かなくなる。
そんなことも言われていたけれど、今のオイルはそう簡単には固まらない。
そんなことは知っている。
でもワインダーで動かしてしまう。
こんなことを考えながら、書斎で大切な機械式時計をウォッチワインダーが回転させているのを横目に、ゼンマイが巻かれた時計の秒針を見つめ、リズムよく刻む音色を聞くのが至福の時というあなた。
もうすでにご存じかもしれませんが、時の守護者ともいうべき「ヴァシュロン・コンスタンタン」と、スタイルの守護者ともいうべき「ヴィターレ・バリベリス・カノニコ」がコラボして、芸術品レベルの腕時計を作ったのです。
その名も「メティエ・ダール・エレガンス・サルトリアル」。
そもそもヴァシュロン・コンスタンタンの腕時計というだけでも、長い目で見ると投資効果もある逸品。
でも、今回はそこに「カノニコ」がコラボしていますから、おそらく10年後、20年後には相当な価値が付いているかもしれません。
もし、あなたの心がこの「芸術と美学」の時計に少しでも動いたなら、未来への投資という意味で購入を検討した方が良さそうです。
では、どんな時計に仕上がっているのか、順にお話していきます。
時の守護者とスタイルの守護者。老舗が融合した伝統工芸
老舗が伝統を活かしつつ、新たなものをクリエイトする。
これは簡単なようで、実はもっとも簡単ではないことでしょう。
伝統を守る、伝統を受け継ぐことはできても、そこから新たなものをクリエイションするということは、見えない未来に挑戦することでもありますから。
このような「簡単ではない」ことを、ヴァシュロン・コンスタンタンとヴィターレ・バルベリス・カノニコが出会い、新しいコレクションを生み出しました。
「上質は歴史を越え」というフレーズがぴったりな、夢の機械式時計。
ヴァシュロン・コンスタンタンの熟練職人によるギョシェ彫り。
ギョシェ彫りの元となる、上質とエレガンスの代名詞でもあるカノニコの服地。
エレガンスとクラフトマンシップが融合した、男を仕立てるのに必要な要素を詰め込んだ時計となって発表されたのです。
そして注目すべきは、スイス・ジュネーブとイタリア・ビエラの老舗が出会い、伝統的高級時計にメンズファッションの情熱を融合するという、前例のないクリエイションへ失敗を恐れず挑戦し続けていることでしょう。
メティエ・ダール・エレガンス・サルトリアルについて
『メティエ・ダール・エレガンス・サルトリアル』コレクションとは、ヴァシュロン・コンスタンタンの時計の文字盤に、カノニコの紳士服地のデザインを装わせた手巻き機械式腕時計です。
メティエ・ダール・エレガンス・サルトリアルのコレクションには5つの種類が用意されています。
5つの種類には、紳士服地ブランド「カノニコ」のコレクションから
・ピン・ストライプ
・ウィンドーペーン
・プリンス・オブ・ウェールズ・チェック
・ヘリボーン
・タータン
・ウィンドーペーン
・プリンス・オブ・ウェールズ・チェック
・ヘリボーン
・タータン
という、紳士服地の代表的パターンをモチーフに使用。
メンズスタイルに共通する「エレガンス」を象徴する柄が選ばれています。
そして、これら5つのモチーフを元に、ヴァシュロン・コンスタンタンの職人たちが熟練の技を使い時計の文字盤に再現。
手作業による繊細で緻密な彫りで、カノニコの生地模様を再現しています。
今までも文字盤への「彫り」はヴァシュロン・コンスタンタンをはじめ、他のブランドでも行われていましたが、紳士服地の織模様を手作業で再現するということは、長い時計製造の中でも極めてめずらしいこと。
これはファブリックと時計、共にどちらも数世紀にわたって受け継がれ挑戦してきた「クラフトマンシップ」のDNAが共通しているからこそ、実現したのではないでしょうか。
ヴァシュロンとカノニコがコラボしたワケ
ヴァシュロン・コンスタンタンが考える、伝統あるクラフトを現代で継承していく「生きる芸術」という姿勢。
ヴィターレ・バルベリス・カノニコのモットー「クラシック・ウィズ・モダン・ツイスト」が目指す、現代的なひねりを加えた、新たなクラシックの創造。
ファブリックと時計という、何世紀にもわたって使われ、受け継がれ、継承してきたクラフトマンシップのDNAが、どちらにも宿っていたことがコラボの最たる理由でしょう。
また、ふたつのメゾンが組むことで、今までにない独自のデザインやアイデアが創造できるということが、両者にとってブレることのない目標であったこともプラスに作用したのだと感じられます。
伝統とクラフトマンシップへの敬意。
サルトリアリズムへの憧れ。
ともに抱く伝統と職人技、そして芸術性への敬意が、スイスとイタリアという2つの国を結びつけたのかもしれません。
時間の芸術、ヴァシュロンを知る
ご存じのように、ヴァシュロン・コンスタンタンは「世界最古」の時計マニュファクチュールです。
ヴァシュロン・コンスタンタンは、オーデマ・ピゲやパテック・フィリップと共に「世界3大高級時計メーカー」として有名であり、複雑系の機械式時計や、宝石をふんだんに使った宝飾時計でも有名です。
このような、ヴァシュロン・コンスタンタンについて、少しおさらいをしておきましょう。
歴史
1755年、ジャン=マルク・ヴァシュロンが時計工房を開いたのが始まりです。
継続的に時計を製造するメーカーとしては、世界最古の時計工房と言われています。
また、ヴァシュロンの孫にあたる、パルテルミは、ミニッツリピーターをはじめとした複雑系の時計に才能を発揮。
繊細で大胆なアイデアを実現することで、今のヴァシュロン・コンスタンタンの礎を築いたと言えるでしょう
1819年。
ヴァシュロンの孫であるパルテルミが共同経営者としてフランソワ・コンスタンタンを迎えます。
フランソワは企業運営に長け、優れた営業マンでもあったため、フランソワはヨーロッパやアメリカ、アジアへ行商を行い「ヴァシュロン・コンスタンタン」として進出を果たします。
1881年に、ヴァシュロン・コンスタンタンは英国チャールズ皇太子と結婚するダイアナ妃へ「レディ・キャラ」のモデルを製作。
1935年には、エジプト王への贈答品に、世界でもっとも複雑な時計(820点ものパーツを使った時計)「グランド・コンプリケーション」を製作します。
創業200周年を迎えた1955年。
厚さ1.64mmという、当時世界最薄の機械式ムーブメントを発表します。
1979年には製作に6000時間を要した「カリスタ」と呼ばれる宝飾時計を発表。
計118個、総カラット130カラットのダイヤを使った時計して、当時最高値がつきました。
2004年には、ジュネーブ近郊に「メゾン・ヴァシュロン・コンスタンタン」を新装オープン。
2005年、1755年の創業以来、継続した営業を続けている時計メーカーの中で最長の250周年を迎え記念モデルを発表しました。
哲学
ヴァシュロン・コンスタンタンは創業当時から「最高品質」を求め続けることを信条にしています。
デザイン、製造工程、すべてに「最高品質」を反映し、最高の時計を人々へ提供しています。
正確で緻密なクラフトマンシップにより、時を超越した魅力と耐久性を備え、すべての過程で高品質を保証するチェックが行われています。
そして、1755年の創業以降に製作された「すべてのモデル」にメンテナンスを施すことが可能なのも、常に最高品質を追求するクラフトマンシップがあればこそでしょう。
では、ヴァシュロン・コンスタンタンには250年という長い時間を経て、職人たちの専門性や知識が正確に受け継がれてきたのでしょう。
その理由は、1755年にヴァシュロンが時計工房を開いたところからはじまっています。
ヴァシュロンは工房を開いたその日に「見習い職人」をひとり雇いました。
ここからヴァシュロンは、時計製造の知識や専門性の継承を重んじていたことが見えてきます。
はやい段階から知識や専門性を共有することで、共通する経験が育まれ全ての段階の記録が脈々と受け継がれる。
このように歴史を共有するという意識が伝統となり、時を超越して時計職人へ正確に受け継がれていくことを尊重していたのです。
しかし、ヴァシュロン・コンスタンタンは「伝統を受け継ぐ」だけではありません。
今も常に「創造性」「革新性」を取り入れています。
この気風が今も複雑機構を搭載する自社ムーブメントを支えていますし、老舗にありがちな「退屈」なデザインではなく、アバンギャルドなテイストを生み出している理由なのです。
そして忘れてはいけないことがあります。
それは、ヴァシュロン・コンスタンタンには「情熱の共有」があるということです。
ヴァシュロン・コンスタンタンの歴史の中。
過去から現代までつづく、創造・製造・提供。
すべての過程に携わる人々には共有する「情熱」が存在します。
ギョシェ職人
ギョシェ装飾は、16世紀に誕生した凹凸の装飾技法です。
このギョシェ装飾が18世紀に入り、時計製造の世界に登場します。
その後、様々な呼び名や方法で活発に使われていましたが、今では使われなくなりました。
しかし、ヴァシュロン・コンスタンタンでは今もギョシェ装飾を活発に使っています。
熟練のギョシェ職人による手作業から紡ぎ出される彫刻は、0.1mm単位の精密な彫り技術が必要とされます。
職人達は、片手で装飾が施される部品をクランクで回転させながら、もう一方の手で規則正しい線や凹凸を刻んでいきます。
対称的な模様。
大小の凹凸。
図形的なモチーフ。
わずかな陰影。
こういった精密な彫刻によって、ヴァシュロン・コンスタンタンにしか表現できない「時の芸術」を生み出しています。
エナメル職人
エナメル技法は、4000年ほど前に東洋の職人達が生み出した技術です。
その技法が17世紀に時計が出現したことで脚光を浴び、時計の文字盤に使われるようになりました。
熟練のエナメル職人は、時計の文字盤へ筆を使いペイントを行っていきます。
ペイントする内容も絵画を忠実に再現したり、図柄や風景を描くこともあります。
またエナメルを活用することで、文字盤に施されたモチーフの強度も上がり、美しさが時と共に衰える心配がなくなります。
時の職人
時計の美しさを引き出すため、常に技術的な成約を越えるべく考え続けています
時の職人である時計職人は、何世紀にも渡ってネジや歯車などを極小にし、器用に扱ってきました。
そして現代でも、もっと技術的成約を越え、もっと美しさを引き立てる方法はないかと考え実験し続けています。
スタイルの美学、カノニコを知る
イタリアを代表する名門ミルである「カノニコ」。
高品質でありながら、リーズナブルな価格から幅広い顧客層に人気があります。
カノニコは、紡績から仕上げまでを自社で全て行う、ファブリックメーカーとしてはめずらしいブランドです。
カノニコの服地はオーダースーツショップで手に入ります。
そしてアルマーニやバーバリー、ポールスミスなどが使う生地として提供されていますので、信頼度もクオリティも安心できるブランドと言えるでしょう。
歴史
このようなカノニコは、1663年には毛織物を生産していたという記録が残っています。
その後、1726年に事業を拡大し「織物商」「靴職人」として行政組織に登録されました。
1908年、電力の供給が開始されると、工場を作ります。
1915年ころから、南北アメリカやイギリス領インド、中国へ輸出を開始。
1936年、第二次世界大戦のなか、ヴィターレ・バルベリス・カノニコとしての歴史が始まります。
現在では世界中でファンを獲得する、テキスタイルメーカーとして最高の生地を製造しています。
哲学
現在のカノニコは自然環境へ強い関心を持っています。
特に水質保護に注力し、生産で使われた水は汚水処理し徹底的な監視のもと、湖へ戻すことを行っています。
また地域社会との関わりを密にすることで、長期雇用などにより周辺地域への生活の安定を約束しています。
最高の素材
カノニコの生地は最高の素材が持つ特性を、最高の技術と経験によるバランスから最もエレガンスなものを作り出します。
生地の細部まで注意を払い、艶や強度、光沢などに一切の妥協を許しません。
この努力の積み重ねが、現在も世界中で人気となっている理由でしょう。
スイスとイタリアがコラボしたコレクション
それでは「メティエ・ダール・エレガンス・サルトリアル」を見ていきましょう。
左から
(1)ヘリボーン
(2)プリンス・オブ・ウェールズ・チェック
(3)タータン
(4)ウィンドーペーン
(5)ピン・ストライプ
(2)プリンス・オブ・ウェールズ・チェック
(3)タータン
(4)ウィンドーペーン
(5)ピン・ストライプ
美しい布のように見える、精巧に彫刻された文字盤。
高級感あふれる質感は、ヴァシュロン・コンスタンタンの職人達の力でしょう。
モチーフは毛織物ですが、毛織物の質感までも文字盤に刻み込む技術やこだわりは、端正なラインと精密な芸術が組み合わさったアイテムです。
また、時間と分を表すサブダイヤルは「ボタン」を連想させる作りになっています。
そしてサブダイヤルの中のモチーフは
・ネクタイ
・ポケットチーフ
・ペイズリー
・フローラル
・幾何学模様
・ポケットチーフ
・ペイズリー
・フローラル
・幾何学模様
が再現されています。
機械式時計としての魅力とスタイルとしての魅力。
今後、同じようなコラボアイテムが出てくるかどうかはわかりませんが、間違いなくこの時計は希少なアートであることに間違いないでしょう。
ケースサイズ:直径40.00mm×厚さ:8.20mm
駆動方式:機械式手巻き
パワーリザーブ:約40時間
振動数:4Hz(毎時28,800回転)
表示:時、分
防水機能:3気圧(約30m)
駆動方式:機械式手巻き
パワーリザーブ:約40時間
振動数:4Hz(毎時28,800回転)
表示:時、分
防水機能:3気圧(約30m)
まとめ
やはりいつ見てもヴァシュロン・コンスタンタンの「ギョシェ技法」は、ため息がでるくらいの美しさですね。
普段のギョシェでもすばらしいのに、今回は、あのカノニコの生地を再現したのですから、美しくないはずがありません。
当然、ひとつ一つがハンドメイドで彫刻されているのですから、厳密に言うと「全く同じものは」世界中を探してもありません。
ぜひ、ここはひとつ「メティエ・ダール・エレガンス・サルトリアル」の中から選んだ時計の文字盤と、同じ柄のカノニコ生地を使ったオーダースーツも手に入れたいところ。
これこそ、時とスタイルを完全に制覇した、もっともダンディな男性を作る方法ではないでしょうか。
こういったコラボの時計は、いつまでも存在している保証はありません。
また迷っている間に、時計仲間に先を越される可能性だってあります。
さぁ、今すぐ「銀座 ヴァシュロン・コンスタンタン ブティック」へ連絡をして、実物を手に取り、手首に付けてみてください。
そして帰りには、オーダースーツ店へ行くのもお忘れなく。