雨が多い日本で、傘は日々の生活から切っても切り離せないアイテムのひとつですよね。
でも、東京都内だけでも1年間で30万本の傘が落とし物として届けられているほどなので、傘は「どこかに忘れてくるモノ」と割り切って100均やコンビニのビニール傘ですましてしまってはいませんか?
ビシッとキメたスーツ姿やスタイリッシュなジャケパンスタイルだとしても、去り際にさす傘がビニール傘だと着こなし全体が安っぽく見えてしまい、とても残念。
ヨーロッパでは古くから、雨の日にだけ持てるファッションアイテムとして、オシャレに気を遣う男性なら、お気に入りの傘を持ち歩くのは当然のこと。
日本でも、文明開化の頃には、たとえ雨が降っていなくても祝い事があるハレの日は傘をさして写真を撮るなど、雨を防ぐ実用品としてではなく装いのアクセントとして使われていました。
人から見られる立場であればあるほど、細部にまで目を光らせるのが、デキる男というもの。
気分が落ち込みがちな雨の日でも、テンションと男を上げてくれるようなおすすめの傘ブランドを5つご紹介いたします。
イギリス人にとって傘はステッキ代わり【FOX UMBRELLAS(フォックスアンブレラ)】
「イギリス人はたとえ雨が降っていなくても傘をたずさえる」
英国紳士にとって、傘は雨をしのぐための道具ではなく、あくまでファッションアイテムのひとつ。
傘を持った時に、いかにスタイリッシュに見えるかというポーズを追求した「プロップ」という言葉も存在するほど。
私達日本人にとっては、思わず「ウソだろ!?」と声を上げてしまいたくなるようなファッションへの哲学が英国紳士には宿っているのです。
そんな英国紳士のハートをワシ掴みにするのが、英国王室御用達ブランドでもあるフォックスアンブレラ。
1868年の創業以来、昔ながらの製法を受け継ぐ職人の手によって、木型を使った生地の裁断、ミシンによる縫製からフレームの組み立て、天然素材を使ったハンドルの加工まで、すべての工程をハンドメイドしている様はまるで産業革命の時代から時が止まったよう。
イギリス・ロンドンは雨が多いというイメージを持つ日本人は多いですが、実は、ロンドンで傘をささなければいけないほどのドシャ降り雨という日は多くありません。
ただし、霧雨のような雨の日が多く、いつ傘が必要になるほどの雨が降り出すとも限らない…。
そんな空模様のロンドンで英国紳士にもてはやされたのは、傘として差さない時は、ステッキ代わりに使えるような細身の傘。
「傘が細ければ細いほど、スタイリッシュである」という英国紳士流の哲学は、戦前まで、アンブレラローラーという傘を細く巻くためだけに存在した職業が存在していたことからもうかがえます。
そんな英国紳士のファッションへのこだわりを叶えるために、極限まで細く美しい傘を作り上げたのがフォックスアンブレラ。
傘のハンドルを腕にかけた時の向きやパブなどで立ち飲む際、傘によりかかって飲む姿勢。
雨をしのぐといった機能性よりも、そういった「魅せる傘」を追い求めたのが、フォックスアンブレラなのです。
傘は、12本や16本というように骨の数が多くなれば、強度が高くなる代わりに、傘を細く閉じることが出来ず、開いた形も丸みを帯びてしまいます。
そういった丸みがある傘は、番傘のような丸いフォルムを好む日本人の美意識に近い傘といえるでしょう。
しかし、イギリス人が好む傘の美しさの基準は、「どれだけ傘を細く巻くことができるか?」、「傘を開いた時、いかにエレガンスであるか?」という2点のみ。
傘として必要最低限の強度さえ保てれば、軽く、そして、細くするために骨を多くすべきではない。
というのが、イギリス的な傘への美意識なので、フォックスアンブレラは徹底して、骨の数は強度を保てるギリギリの8本傘のみを作り続けています。
しかし、その技術力の高さは本物で、英国空軍空挺部隊に供給していたパラシュート製作の経験からヒントを得てナイロン地の傘を世界ではじめて開発したのもフォックスアンブレラです。
また、長年、英国王室御用達品として指定されていることからも品質の高さは折り紙つき。
英国王室のメンバーはもちろん、サッチャー前首相やジョン・F・ケネディ、あの白州次郎までもがその美しさに魅了され、愛用者として名を連ねるフォックスアンブレラ。
シティー・オブ・ロンドンを闊歩するエリートバンカーが手にするような細身でスタイリッシュな傘をお探しのあなたには、ピッタリの1本です。
傘とは装うものである【前原光榮商店】
フォックスアンブレラが英国王室御用達なら、前原光榮商店は日本のロイヤルファミリーである天皇家御用達の日本を代表する傘ブランド。
「傘は装うものである」
という哲学のもと、徹底して、見た目の美しさにこだわっています。
「傘」という文字の中には、「人」が4つありますが、前原光榮商店が考える4つの人の文字の意味は、「生地」・「骨」・「手元」・「加工」。
生地は、もちろん手作りで、なんと、たて糸から手作業で織るほどのこだわりぶり。
傘で重要となる骨の部分も職人の手によって、スチールの角材からステッキのように丸みがある形状へ真っすぐ仕上げていきます。
こうして手作りで織り上がった生地と組み終えた骨組みが傘作り歴50年以上の歴史を持つ匠の手にわたり、傘として命を吹き込まれていきます。
骨組みに生地を張って傘にしていくのですが、まず、生地の裁断方法が大量生産品のそれとは大きく異なります。
大量生産品では、生地を裁断する際、効率良く裁断するために、一度に8枚とか10枚、もしくはそれ以上の生地を裁断していきます。
ただ、一度にたくさんの生地を裁断するとなると、生地ごとの大きさにどうしてもズレが生じてしまいます。
裁断した生地の大きさがバラバラだと、均等間隔に張り巡らされた骨組みの間隔と微妙にサイズが違うので、生地が骨組みと完全にフィットしません。
そこで前原光榮商店の職人は、生地を最大で2枚しか重ねて裁断しないことで、裁断時の精度を極限まで高めています。
この方法だと、一度に大量の生地を裁断することはできません。
しかし、生地の裁断の出来が、傘の良し悪しを大きく左右してしまうので、決してこの裁断方法に妥協することはないのです。
そして、最後に持ち手である手元。
真っすぐの木を持ちやすいように丸みを出して曲げるのは、とても高い技術を必要とします。
手元に使われる素材や男性用・女性用という手元の大きさの違いによって、曲げる方法は異なりますが、この手元の曲げ作業も1本1本手作業で行われています。
そして、手元に深みのあるツヤを出すため、何度も何度も繰り返し天然の染料を塗り込んでいきます。
こうして出来上がった傘は、雨を防ぐという機能性はもちろんのこと、ただただ「美しい」の一言。
そんな前原光榮商店でおすすめしたいのは、傘を開いたとき、思わず周りが目をひいてしまうほど美しいフォルムの16本骨傘。
丸みがあって、日本人ウケするフォルムになっています。
また、前原光榮商店では、傘の表情が1本1本まったくの別物になる手元の素材を寒竹・楓・ヒッコリーといった全12種類の天然素材の中から、自由に選ぶことが可能です。
さらには、傘の手元に自分の名前を入れることもできるので、気分はまるでオーダーメイド。
アフターフォローとして、傘が傷んだら修理も行ってくれますので、一生モノの傘をお探しでしたら、前原光榮商店の傘はとてもオススメです。
ドイツが生んだ究極の機能美【Knirps(クニルプス)】
「傘に求めるものは、見た目よりも機能性」
そんなあなたにおすすめしたいのが、ベンツ・BMWといったシンプルなデザインの中にも機能美を追い求めるドイツ発ブランドのクニルプス。
本国ドイツでのブランド知名度は95%にも上り、私達がスタンプ型の印鑑を「シャチハタ」と呼ぶように、ドイツでは、折りたたみ傘のことを「クニルプス」と呼ぶほど。
さらに、テレビの天気予報では、雨の日のことを「Knirps Weather(クルニプスウェザー)」とよび、ドイツ語辞典で「Knirps」と引くと、「傘」と訳されていることからもドイツ国民にとって、傘とはクニルプスのことなのです。
クニルプスは、創業者であるハンス・ハウプト氏の足が悪く、雨が降りそうな日に杖と傘の両方を持ち歩くといった不便を解消するため、「ポケットに入るくらい小さな傘」を目指し、折りたたみ傘を世界ではじめて発明したことが始まりです。
その後も、クニルプスの技術的革新は進化を続け、1965年には今では当たり前となったワンタッチで自動的に開く傘を発明。
さらには、ワンタッチで開いた傘を閉じることもできる自動開閉機能を搭載した折りたたみ傘の開発に成功しています。
ボタンひとつ押すだけで、しっかり傘が開き、もう一度、ボタンを押すと、閉まる。
一見するとなんでもないようなアクションですが、スムーズに流れる動きを見ていると、そこにドイツブランドらしい機能美を感じることができます。
濡れた手でも操作しやすい傘の骨を中心でまとめるロクロ部分を引き下げれば、また再び元のコンパクトな姿へ変身。
さらには、折りたたみ傘にありがちな「風に弱くて折れやすい」。
そんなイメージを払拭する剛健な作りがクルニプスの特徴でもあります。
その剛健さを実現するために傘の骨に使われているのは、最新鋭のボーイング旅客機や棒高跳びのポールなどに使われる素材であるガラスを繊維状にしたグラスファイバー。
グラスファイバーは、軽くて強度があり、多少の風にも耐えうるしなりがあるので、堅牢な傘作りには欠かせない素材です。
グラスファイバーで出来た骨とアルミの中棒とを組み合わせることにより、耐久性と軽量性を兼ね備えた理想のフレームを持つ折りたたみ傘を再現しています。
その折りたたんだ傘の大きさは、A4用紙の縦サイズとほぼ同じ。
ですので、ビジネスバッグの中に入れても、傘がかさばらないのも嬉しいですね。
そんなコンパクトのサイズに折りたためるにも関わらず、傘を開いた時には、直径98cmのビッグサイズの傘に変身。
これは、一般的な傘の大きさと見比べても、見劣りしないどころか若干大きいほどなので、「折りたたみ傘だからサイズが小さいのでは」といった心配も不要です。
急な雨にいつでも対応できるようカバンに忍ばせる折りたたみ傘をお探しなら、モノ作り大国ドイツが生んだクルニプスはいかがでしょうか?
ネクタイを選ぶように傘を選ぶ【Maglia Francesco(マリアフランチェスコ)】
ヨーロッパでは、お気に入りの傘を親から子どもへ受け継いでいく文化があり、上質な時計やペンのようにファッションアイテムのひとつとして、傘への思い入れはとても強くあります。
ただし、同じヨーロッパの中でも、イギリスでは、シンプルで美しい佇まいを、ドイツでは、見た目よりも機能性を重視した実用性。
といったように国によって傘に対する美意識は異なります。
では、ファッションの国イタリアでの傘に対する美意識はといいますと、ネクタイを選ぶように着る服と色や柄を合わせることができるカラフルな傘がイタリア人好みの傘になります。
そんな傘に対するアイデンティティーを持つイタリア人の間で、人気を博してきたブランドが、マリアフランチェスコ。
マリアフランチェスコの特徴はなんといっても、イタリアンブランドらしいカラフルな色使いと柄物のセンスの良さ。
グリーンやイエローといった鮮やかな色遣いの傘は、気分が晴れない雨の日でも周りをパッと明るくしてくれるイタリアの貴婦人のよう。
また、ファクトリーの技術力の高さは相当なもので、通常、傘は、持ち手である柄の部分と傘を支える中棒とは、別々に作り、あとで合体させるという組み立て方をします。
この方法を取るには理由が2つあり、傘を持ちやすいように持ち手部分にアールをつけるには、素材をキレイに曲げる高い技術力が求められるというのが1つ目の理由。
2つ目の理由は、持ち手と中棒とが一体となったワンピース仕様の傘を作れるような歪みがないキレイな木目の木材を安定的に入手できないからです。
ただそんな世界でも珍しい持ち手と中軸が一体となったワンピース仕様の傘を作ることができるのがマリアフランチェスコ。
持ち手と中棒に継ぎ目がないその姿は、思わずほれぼれするような美しさ。
さらに、マリアフランチェスコが得意とする傘作りの技術はそれだけではありません。
イタリアンレザーの国らしく持ち手には、雨にも負けない耐久性の高い革を装飾として使うことも得意としています。
高級傘の中でもごく稀に、持ち手を革で装飾している傘を見かけることができますが、そのほとんどは合成皮革。
持ち手の装飾に本革を使用するのは、とても高い技術力が必要とされるのですが、マリアフランチェスコではもちろん本物の本革を使用。
上質な革を柔らかくなめして使っているので、傘を持つ手にも優しく、もちろん雨への耐久性もバッチリです。
使い込めば使い込むほど、傘を使う人の手に馴染み、味わい深いエイジングを楽しめることでしょう。
そんな“傘を育てる”というちょっと他では味わえない体験が出来る傘であれば、「ついうっかりどこかに忘れてきた…」ということもなくなるのでは。
雨の日のお出かけが楽しくなる。
そんな傘をお探しなら、マリアフランチェスコの傘を手にしてみてはいかがでしょうか?
風速31m/sにも耐える世界最強の傘【BLUNT umbrellas(ブラントアンブレラ)】
傘は、エジプトやペルシャといった古代文明の壁画にも描かれているように今から4,000年前の時代から王族や貴族・高名な僧侶といった権力層が外出する際の日よけとして日傘を使っていたことがはじまりです。
そこから長い年月を経て18世紀後半に、ジョナス・ハンウェーという人物が日傘に防水加工を施し、雨を避ける道具として持ち歩いたことから傘が雨を避ける雨具として使われるようになりました。
しかし、それ以降、人類の文明は急速に発達し、これだけ世の中が便利になっているにも関わらず、傘の基本構造というのは、4,000年前から何ら変わりがありません。
そんな傘の弱点は風に弱いこと。
傘をさしている時に急な突風が吹いてくると、ひっくり返り、様々な方向に突き動かされ、人が密集しているような場所では、周りの人を攻撃する凶器にもなってしまう…。
あなたにも、もしかしたら「ヒヤリとした」。
そんな経験があるのではありませんか?
傘が一瞬にして凶器になる場面をロンドンで数多く目撃してきた創業者のグレイグ・ブレイナーが、傘を「再発明」出来ないものかと考え、生み出されたのがブラントアンブレラです。
傘を開いた時、最も危険になるのは、露先とよばれる傘骨の先端と生地とを結びつける部分になるのですが、驚くことにブラントアンブレラの傘にはこの露先がありません。
露先に代わるのが、ブラントアンブレラ独自の技術である「Blunt Tips」。
Blunt Tipsはまるで手袋の先端に指を入れて優れた張りを生み出すように傘生地の内部から先端にかけて絶妙な張りを持たせる仕組みのことです。
傘が使い物にならなくなる大きな原因は、この露先が取れてしまったり、ほころぶことで骨組みから生地がはずれてしまったりすることですが、ブラントアンブレラの傘には、そもそも露先がないので、壊れて使いモノにならないという心配はいりません。
また、この独自の技術であるBlunt Tipsを採用することで、従来の傘とは比べものにならないほどの張力を傘に持たせることができるようになりました。
それが、ブラントアンブレラのもうひとつの特徴である空気力学について考え尽された傘のフォルムと組み合わさって、どんな悪天候下でも傘がバタバタとはためくようなことがなくなりました。
ですので、傘をしっかり握ってコントロールすることができ、周りにケガをさせることも、傘が折れてしまうという経験も、もう二度としなくて済むのです。
風速31m/sの使用でも耐える世界最強の傘、風にお悩みのあなたなら、お気に召すのではないでしょうか。
まとめ
細身の傘であるフォックスアンブレラに、昔ながらの番傘を彷彿させる前原光榮商店。
折りたたみ傘ならクニルプス、ネクタイを選ぶようにカラフルな傘を選ぶことができるマリアフランチェスコ。
さらには、 風速31m/sにも耐える世界最強の傘であるブラントアンブレラといった5つの傘ブランドをご紹介いたしました。
傘は、雨を防ぐといった実用性はもちろん、それ1本であなたをスタイリッシュに魅せることもできるファッション性が高いアイテムでもあります。
ヨーロッパでは傘を代々、親から子どもに受け継いでいく文化があるように傘はキチンとメンテナンスして使い続ければ、一生付き合い続けることができる道具。
日本では、傘は「使い捨てるモノ」いった風潮がありますが、ぜひ、雨の日に出かけるのが楽しくなるような一生モノの傘を手にしてみてください。