オーケストラのコンサートホールに行く時、どんな服装をしていったらいいか、迷いますよね。
その理由は多分、オーケストラのコンサートはなんだか気後れがする、演奏中は物音一つ立てず、終わった後は皆で一斉に拍手すると言った、暗黙の了解や決まりごとがあるように思えるから。
もしかして、来て行く服にも暗黙の了解や決まりごとがあるんじゃないのか、ビジネススーツも場違いな気がするし、フォーマルといってもどのくらいのフォーマルなのかわからない・・・。
オーケストラのコンサートに行くことになったら、恥をかかない程度に装いたいもの。
そんなあなたに、オーケストラを聴きに行く時の服装について、ご紹介します。
オーケストラを聴く際の服装|基本の考え方
クラシックのコンサートというと、なんだか敷居が高くて、ちょっとかしこまったいい服を着ていかなければいけない、というイメージを持っている人も多いかもしれません。
人によってはフォーマルが常識とか、難しいルールがあるように言う人もいますが、基本的にコンサートは音楽を楽しむためのもの。
周りの人と演奏者が不愉快でなければ、コレといったルールはありません。
周りの人や演奏者が不快でない格好とは、だらしない格好ではない、ということです。
また、演奏をする人に対して敬意を表すると言う意味でも、だらしない服装は避けたほうが良いでしょう。
演奏する側の人によると、「会場の雰囲気が演奏を作り上げる」と感じるということ。
聴きに行く方は完全に受身のつもりでも、演奏する人から見たら「音楽を一緒に作る当日のメンバー」として捉えてくださっているのですね。
たった一人のマナー違反でも、その場の雰囲気を台無しにしてしまうこともあるようです。
では、具体的にどんな服装なら良いのでしょうか?
ジャケパンのパンツ、ジーンズはOK?
最近はスタイリッシュなブランドジーンズもあり、ジャケパンスタイルで着用している人も多いと思います。
普通に見れば格好良いコーディネートですよね。
ただし、オーケストラの時にはジーンズは控えた方が良いかもしれません。
オーケストラのコンサートには高齢の方も来ています。
高齢の方の中には「ジーンズは作業着」という考えの人もいらっしゃいます。
どんなにスタイリッシュできちんとしたジーンズでも、「ジーンズ」というだけで眉をひそめる人もいます。
できればジーンズ生地の服装は控えましょう。
ジャケパン自体はOKなので、ブレザーやジャケットにスラックスやチノパンを合わせれば大丈夫です。
ジャケパンも、行楽の時に着て行くようなものでなく、オフィスカジュアルくらいのイメージを持つといいようです。
着物を着て行くのは?
着物を着てオーケストラを聴きに行くのはなんとも粋で格好良いですね。
着物はもちろんOKですが、夏の浴衣は控えましょう。
浴衣は花火大会やお祭りにも着ていくので、来たまま電車に乗る人も多く見かけますが、浴衣はもともと入浴後に着用するための着物。
浴衣は「湯帷子(ゆかたびら)」と言われ、平安時代に入浴するための着物として用いられました。
当時の入浴方法は湯船ではなく沐浴。
複数の人と入浴することもあったため、汗取りの役割と裸を隠すという目的で使用されたと言われています。
素材も今のような綿ではなく麻でした。
安土桃山時代頃からは、湯上りに素肌に着て、肌の水分を吸い取らせる目的で用いられるようになり、江戸時代から庶民が今のように着用するようになったとのこと。
江戸時代でも花火大会や夏祭りなど気取らない場所では着ても良いという風潮があったようです。
しかし、浴衣は肌着と並ぶ「略式着」であるため、公の場やかしこまった場での着用は失礼とされて着ました。
その流れから、今でも和服のルールでは正式なお出かけには着用しません。
現在日本舞踊や歌舞伎などでは稽古着として用いられていますが、本来は湯上り着や寝巻きという位置付け。
もし着物を着たいなら、肌襦袢を中に着る、普通のウールやポリエステルの生地の着物にしましょう。
その際は、寒い時期でなければ普段着と同等の着流しでも大丈夫です。
着流しとは、洋服のジャケットやブレザーなどに該当する羽織を着ないで、1枚の着物を着て帯を巻いただけの状態です。
着物を着てオーケストラを聴きにいく人はほとんど見かけないので、逆に風流でおしゃれですよ。
ならやっぱりスーツ?
スーツならもちろん文句なく大丈夫です。
しかし、普段仕事に着ていくビシッとしたビジネススーツより、少しカジュアルなスーツやジャケパンが良いでしょう。
ジャケットにパンツやスラックス、首元はノーネクタイでOKです。
ネクタイをして行きたいならニットタイやアスコットタイ、ループタイなどもオススメ。
<アスコットタイ>
<ループタイ>
コーディネートですが、全体的にあまり派手な色は控えましょう。
原色や紫などは、場合によっては品位を疑われかねないため、落ち着いた色調の紺や黒、グレー、茶系などが良いですね。
また、カジュアルスーツでも夏のハーフ丈のスラックスは控えましょう。
女性でも肩は露出しても丈の短いスカートは暗黙の了解でタブーとなっています。
足元は長いパンツを合わせましょう。
注意したい服装
オーケストラを聴きにいく際、おしゃれをするのはもちろん良いですが、普通のパーティーなどとはちょっと違う点があります。
それは、オーケストラのコンサートの目的は、「音を楽しみにいく」ということ。
では、どんな服装がNGなのか、見て見ましょう。
音の出る素材やアクセサリー
男性のアクセサリーでもチェーンがついたシルバーアクセサリーなどがありますが、動くたびに音が出てしまうようなアクセサリーは控えたほうが良いでしょう。
オーケストラではヴァイオリンの弦1本を爪弾いて表現するような、繊細な場面もあるため、音の出るアクセサリーをつけていると、他の人の迷惑になってしまいます。
もし同行するパートナーが音のするようなアクセサリーをしていたら、さりげなく教えてあげてくださいね。
また、動くとカシャカシャ音のするような服装やバッグもNGです。
ナイロンやビニール素材でできたバッグなどは、場合によっては音がするものもあるので気をつけましょう。
派手すぎる服装は控える
カラフルすぎる色使いや、金銀の目立つ服装は控えましょう。
演奏する側からは、意外と客席が見えるもの。
演奏する人の集中を阻害するような服装はNGです。
あまりにも派手な服装は、周囲の人もびっくりしてしまいますよね。
あくまでも周りの雰囲気に馴染むようなものと思って服装を選びましょう。
帽子はかぶったまま聴いてもOK?
帽子はファッションの一部で、カフェなどに行っても脱がない人もいますが、音楽を聴くときには演奏者に敬意を表するという意味で、脱ぎましょう。
また、帽子をかぶったままだと、後ろの席の人の迷惑になることもあります。
帽子はクロークに預けるか、膝の上に置いて演奏を聴くのがベターです。
荷物が多い時、ロングコートなど
野外でない限り、通常コンサート会場にはクロークが必ずあります。
聴く人が演奏を心から楽しめるようにという配慮です。
スーツケースや紙袋など、荷物が多いときやコートを着て行った時は、受付の先にあるクロークに預けましょう。
ドレスコードのあるホールでは指示に従う
格調高いコンサートホールでは、ドレスコードが指定されていることがあります。
チケットや予約するときに記載があるので、そうした時はそのコンサートホールのドレスコードに従いましょう。
香水はごく控えめに
おしゃれの仕上げとして香水を使う人も多いかと思いますが、劇場の座席は2時間から長い時で3時間も同じ席で座るもの。
きつすぎる香水は周りの迷惑になるので、もしつけて行くならごく少量、下半身から下の腰や足首につける程度にしましょう。
なぜオーケストラの演奏者は皆正装みたいな格好なの?
オーケストラの演奏者は、一般的に男性は黒の燕尾服、女性はドレスなどですよね。
しかし、もともとオーケストラのメンバーは、今のような黒い服ではありませんでした。
今から200年ほど前のモーツァルトなどの時代までは、貴族や王族のように色とりどりの衣装を身につけて演奏していたと言います。
その頃は、黒い色は「死」や「悪」など良くないイメージがあり、かえって忌み嫌われていました。
しかし、18世紀末に起こったフランス革命で貴族階級に変わり市民階級が台頭してくると、服装の流行が一変します。
19世紀になると乗馬やスポーツに適した服装が流行り、乗馬用の服がフランスでも大流行しました。
その当時の乗馬用の服は馬に乗りやすいように背中が二つに割れている燕尾服の原型です。
これが現在オーケストラで用いられたのがオーケストラで男性が燕尾服を着用する始まりだと言われています。
色も、イギリスで流行した黒色がヨーロッパ全土で人気を博しました。
また、産業革命で工場の煙やタバコの煙で服の汚れが目立たないように黒が選ばれたという背景もあったようです。
この時代から、黒い色は悪いイメージから「権力」や「権威」などの男性的で格好良いイメージに変化して行きました。
社交の場でも黒い服は男性的なものと認識され、カラフルな女性の服装を引き立てる効果も大きいために好まれました。
驚いたことに、ピアノの色が黒いのも、同じ理由だと言われているそうです。
社交の場では黒と同時に白い服も好まれました。
現在もオーケストラによっては白い燕尾服で揃えている楽団もあるようです。
現在の、モーニングを短くしたような燕尾服はアメリカで誕生しました。
そのため、今もアメリカのオーケストラで白いタキシードを着用する楽団は多いようです。
現在は燕尾服といえば特別な祭典や儀式、結婚式、社交ダンスくらいでしか着られることはありませんが、燕尾服を着た楽団員がステージに上がってくると雰囲気が盛り上がるし、メンバーも燕尾服を着ることで身が引き締まるそうです。
注意!ガラ・コンサートとオペラの場合
ガラとはフランス語で祝祭、祝賀、公のパーティーを意味します。
したがって、ガラ・コンサートとは年末年始に行われるコンサートのこと。
年末に行われる第九のコンサートも、ガラ・コンサートです。
ガラ・コンサートを直訳すると「祝賀コンサート」。
冠婚葬祭のスーツで行く必要はありませんが、正装に準じた服装で行きましょう。
この時はジャケパンよりも揃いのスーツの方が、ふさわしい格好になります。
また、オペラの場合も同様と考えて置いたほうが良いでしょう。
とは言っても構える必要はありません。
現在は多少崩しても大丈夫なようですよ。
コンサートのマナー
コンサートのマナーは音を立てないことが基本です。
先述した音の出るアクセサリーや服装はもちろんのこと、食べたり小声で話したりもやめましょう。
また、オーケストラは通常、途中で15分くらいの休憩が挟まりますので、用事はそのときに済ませるようにします。
途中で寒くなったり暑くなったりすることも頭に入れておき、厚すぎる服装や薄すぎる服装は避けた方が無難です。
また、ハンカチがすぐに出せるようにしておくと、汗をぬぐいたくなったときに便利です。
コンサートホールは、映画などと違い開場が30分から1時間前に設定されています。
ギリギリに入って着席後に汗を拭うよりは、少しゆとりを持って出かけ、ホールの温度に馴染んでおいた方が、体温調節もしやすいですね。
また、早めに着いたら着席して、プログラムに目を通しておくと良いですよ。
曲目紹介のほか、当日の指揮者や演奏者のプロフィール、曲にまつわるエピソードなども掲載されています。
休憩もプログラムでタイミングを確認しておきましょう。
ホワイエを楽しもう
ホワイエとは劇場ロビーのこと。
ホールには通常ホワイエがあり、飲み物やちょっとしたスナックを販売しています。
劇場によってはシャンパンやワインなどのアルコールを置いてあるところもありますので、ちょっとリラックスしたい場合には利用できますね。
休憩時間に座席に座ったままより、ホワイエでコーヒーやシャンパンを楽しむのも大人の嗜みの一つ。
そういうところへ立ち寄ることも考えて、おしゃれをして行くのも良いですね。
休憩時間は他の人の服装も観察したいところ。
座席に座ったままでは皆後ろを向いていて、どんな服装をして来ているのかわかりません。
休憩時間にはホワイエでシャンパンを片手に、ロビーに行き来する紳士淑女の服装を眺めて楽しみ、次回以降の参考にするのも良いでしょう。
ただし、アルコールは酔わない程度にとどめましょうね。
オーケストラを聴くときに一番大切なこと
オーケストラのコンサートで一番大切なことは、演奏者と観客が一体となって音楽を楽しむこと。
同じ曲目でもその日の観客はその日限りなので、演奏者もそのつもりで演奏しています。
オーケストラは演奏する人をただ受け身で聴くだけではありません。
演奏中の観客の集中や緊張感、演奏が終了した後の拍手やスタンディングオベーションなども、その日の演奏を盛り上げる効果があります。
そのため、コンサートを聴く時は、周囲の人とも調和して、一つの雰囲気を作ることを考える必要があるのです。
コンサートに行く前には曲目をチェックしておき、動画サイトなどで予習して行くと一層楽しめますよ。
オーケストラを聴きに行く時の服装のまとめ
オーケストラを聴きに行く時は、基本的に周りに迷惑をかけない、周りを不快にしない服装ならOKですが、次のことには気をつけておきましょう。
・年配の方はジーンズの概念が違うこともあるためジーンズはご法度
・着物は浴衣以外ならむしろ素敵
・スーツはビジネススーツよりオフィスカジュアルくらいで
・音の出るアクセサリーや素材は避ける
・派手すぎる色柄やデザインはNG
・帽子は脱いで着席する
・コートはクロークに預けよう
・香水は下半身に少量に留める
・ガラ・コンサートやオペラは正装で
また、休憩時にはホワイエでコーヒーやワインなどを楽しみながら、他の人の服装を観察するのも良いですね。
オーケストラのコンサートは非日常を楽しむためのものでもあります。
他の人の楽しみを壊さないように、周囲に不快な思いをさせるようなだらしない格好や、演奏者の集中がそがれるような服装は控えましょう。
オーケストラコンサートを「堅苦しい」と考えず、「紳士淑女の社交の場」と捉えれば、おしゃれも楽しめますね。