寒~い冬に大活躍してくれるコート。
でも、コートといってもその種類は千差万別。
「あの人が着ているコート、カッコイイな」
と気になって、どこで売っているのかを調べようとしても、コートの名前が出てない…、なんて経験はありませんか?
また、コートにも、スーツと同じくフォーマル向け、カジュアル向けがありますが、どこまでがビジネスシーンでOKなコートなのか線引きが曖昧…。
という男性も少なくないのでは?
実際、街行く男性のコート姿を見ていても、ビジネスシーンではNGなコートをスーツの上に着てしまっているのをよく見かけます。
では、ビジネスシーンで使えるコートの種類とは?
逆にビジネスシーンでは避けるべきコートの種類とは?
ビジネスシーンで使えるコートの種類とそのおすすめ度をご紹介したいと思います。
おすすめ度☆☆☆☆☆ 最もフォーマルなチェスターコート
チェスターコートは、正式には『チェスターフィールドコート』といい、コートの中では最もフォーマルなコートになります。
19世紀イギリスの政治家であり、当時のファッションリーダーでもあったチェスターフィールド伯爵が好んで着用していたことからこうよばれるようになりました。
チェスターコートは、カジュアルにはもちろん、タキシードを着るようなファーマルな場面でも通用するコートでもあるので、1着持っておくと幅広い活躍が期待できるでしょう。
チェスターコートのシルエットは、ウエスト部分が絞られていて全体的に細身。
また、チェスターコートはテーラードジャケットの丈をそのまま長くしたような形なので、テーラードジャケットのようにシングルブレストとダブルブレストという2種類があります。
シングルブレストの場合、ボタンが見えないよう上襟を折り返した比翼仕立てになっていて、本格的なチェスターコートには襟の裏には、ビロード地が付けられています。
ダブルブレストだと、襟の型はピークドラペルになりますね。
シングルブレストは見る人にスリムでエレガントな印象を与えることができるので、身長が高い男性なんかはよく似合うでしょう。
一方、ダブルブレストは、ガッシリとした重厚なイメージがあるので、体が華奢な男性にはダブルがおすすめですね。
おすすめ度☆☆☆☆ 呼び方が間違われやすいステンカラーコート
ステンカラーコートは和製英語になるので、本来の呼び方だと『スタンドフォールカラーコート』になり、ステンカラーコートでは、欧米では通用しないので、ご注意を。
また、バルカラーコートやバルマカーンコートと同じだと勘違いされている方も多いですが、襟の形が違うので、コチラも併せて注意しましょう。
ステンカラーコートの特徴は、後ろの襟が前の襟よりも高く、前襟は低く折り返す形になっていることです。
襟は比翼仕立てになっていて、第一ボタンのみハズして着ることができるので、首元が苦しくなりません。
また、襟を立てたままボタンを留めることもできるので、雨や風をしのぐことができ、防寒性を高めることも可能です。
袖は、ワーテルローの戦いで右腕を失ったラグラン男爵が、腕をケガした者でも洋服の着脱がしやすいようにと考案されたラグラン袖が採用されているので、ゆったりと動きやすい着心地も特徴ですね。
ただ、コート自体がゆったりとしたシルエットのため、下のボトムスまでゆったりしたシルエットのボトムスを選んでしまうと、野暮ったく見えてしまいます。
ですので、ステンカラーコートのボトムスを選ぶ時は、細身のものを選ぶことでグッとスタイリッシュに決まりますよ。
おすすめ度☆☆☆☆ 機能性はバツグンなトレンチコート
トレンチコートの「トレンチ」とは、戦において砲撃や銃撃から身を守るために掘られた「塹壕」のこと。
塹壕を使うことは特に相手の銃火から身を防ぐために有効な戦術で、相手の攻撃を防ぎ、守りの態勢を強化するために塹壕の中に兵士が入って相手を待ち伏せするのが定石です。
ただし、相手側もその戦術を理解しているので、敵味方ともどちら側から仕掛けることもなく、兵士が塹壕の中に入ったまま膠着状態が続くことが多々ありました。
第一次世界大戦の西部戦線では、南はスイスの国境付近から北海までヨーロッパを二分するラインが出来るほどの塹壕が掘られ、連合軍と同盟軍のにらみ合い状態は4年も続きました。
しかし、こうなると大変なのは塹壕の中に潜む兵士。
塹壕の中というのは、雨も防げませんから湿気やぬかるみでとても不衛生。
塹壕の中にずっといると、湿気により足にカビが生えたり、悪寒が止まらなくなったりする「塹壕病」とう病に襲われることになります。
ドイツをはじめとする同盟国側は、戦線を後退させてでも高台の上に塹壕を作るなどして兵士に配慮して、塹壕病の被害は大きくはありませんでした。
しかし、連合国側。
特にイギリス兵が塹壕病によるダメージが大きく、防水性が高くて塹壕病の原因である湿気から兵士を守ることができるコートがイギリス軍には求められていました。
そこで生み出されたのが湿気に強く、防水性と防寒性に優れたトレンチコートです。
トレンチコートの素材に使われたのは、バーバリーが発明したバーバリークロス。
バーバリークロスとは、布を織り上げてから防水処理を施すのではなく、織り上げる前の糸に防水薬品を染み込ませ、より防水機能を高めた生地のことで、イギリス軍に正式採用された後、バーバリーは50万着以上を戦線に供給することになります。
そのうえ、防水生地だけではなく、大きな襟の内側にはジグザグにステッチを入れ、コレにより襟を立てやすくなり、雨をしのげるようになりました。
しかも、右胸には襟にかけることで、雨が入ってこないようにするストームフラップという当て布がついています。
おまけに、襟元と袖元には、チン・ストラップという締めることで、寒風を防ぐことができるベルトもついていて、腰回りにも同様のベルトが備えられ、雨水を侵入させないダブルブレスト仕様。
こういった機能により防寒性と防水性を極限まで高めました。
また、今では、ただの装飾になっていますが、階級を示すバッジを取り付けたり、水筒や双眼鏡を肩にかけたりすることができるショルダーストラップ。
手榴弾や弾薬をぶら下げておくために、腰まわりにDカンがついているのも軍用品の名残ですね。
そんなトレンチコートは、実用性はもちろん、見た目にも機能美に優れていることから戦後は男性ファッションの定番アイテムとなりました。
ウインストン・チャーチルやコナン・ドイルといった著名人が好んで着用し、ハードボイル映画の中で主人公はトレンチコートに身を包み、悪役と対峙するというシーンも多く描かれました。
「ティファニーで朝食を」の中で、オードリー・ヘップバーンがトレンチコートを着用し、日本でも宝塚歌劇団の男役が着るシーンも多く、男性だけでなく女性からの人気も高いコートですね。
トレンチコートはフロントがスッキリしているので、ビジネスシーンでは胸元からチラリと見えるネクタイが映えるコートです。
薄手なので春先まで使え、なにかと重宝する1枚でもありますね。
おすすめ度☆☆☆ 丈の長さ選びが重要になるピーコート
コートの中では着丈が短く、幅広い年代から好まれているピーコート。
日本では、中学校や高校の制服としてピーコートを指定しているところもありますね。
ピーコートの「P」は「Pea=錨の爪」から名づけられ、ピーコートのボタンには錨のマークがあしらわれていることが多いです。
名前の由来通り、もともとはオランダの船乗りの防寒具として誕生し、それを参考にイギリス海軍が艦上での軍服として着用、また漁師たちもピーコートを好んで着ていますね。
防寒性を高めるために、素材には圧縮した高密度なメルトンウールを使用し、ダブルブレストの前身ごろが特徴的です。
ダブルブレストにした理由は、甲板の上で左右どちらの方向から風が吹いてきても、上前を変えることができるということ。
また、万が一、ボタンが破損してしまっても、もう一方のボタンで留めることが出来るというメリットからダブルブレストが採用されました。
さらには、手がスッポリ入り、寒さから守ることができるようポケットの切れ込みが縦に入っていることも特徴ですね。
そんなピーコートは、見た目がとてもドレッシーなため、ビジネスシーンでは使い勝手の良いコート。
ダブルブレストなので、重厚でフォーマルに見せることができますし、使われている素材もメルトンウールなので、とてもツヤのある雰囲気を演出できます。
さらには、着丈が短いのもピーコートの特徴ですから、スッキリとしたシルエットで大人っぽい着こなしが出来るようになります。
最近では、本来のピーコートからさらに短くなった丈のものも見かけますが、丈が短すぎると子供っぽく見えてしまいます。
また、コートの下から中のジャケットの裾が見えてしまいますので、オトナが選ぶならノーマル丈のピーコートを選びたいですね。
おすすめ度☆☆☆ ジャケパンにはピッタリなダッフルコート
ダッフルコートは、もともと北欧の漁師たちが着ていた仕事着。
ダッフルの名前は、ベルギー・アルトウェルペン州にある都市デュフェルがなまってダッフルになりました。
デュフェルの名産がダッフルコートに使われる厚手のウール生地だったからですね。
ダッフルコートはフロント部分がボタンではなく、トグルとよばれる棒状の留め具とそれと対になったトグルを引っかけるループを使って留めることが特徴。
北欧という寒い気候の中では、ボタン式よりもトグルの方が手袋をはめたままでも脱着がしやすく便利だったというのが大きな理由です。
また、ダッフルコートは左右どちらにでも開閉することができますが、これも船の上で、どの方向から風が吹いてきても開け閉めがしやすいようにという配慮から、そうした工夫がなされています。
そんな機能的なダッフルコートに目をつけたのが、またもやイギリス海軍。
第二次世界大戦時にはイギリス海軍の制服として採用され、色はキャメル色の生地で、トグルは木製、麻紐を使ったループ。
帽子の上からでも被ることができる大きなフードに防寒性を考えられた膝下まである着丈と制服の上からでも着ることができる、ゆったりとしたシルエットが特徴でした。
ダッフルコートがモンゴメリー・コートともよばれるのは、イギリスのバーナード・モンゴメリー元帥が好んで着ていたことからそうよばれ、ダッフルコートが広く普及する要因ともなったのもモンゴメリー元帥のおかげです。
ダッフルコートはピーコートとならぶウールアウターの代表格ですが、タイトなPコートと違ってゆったりしたシルエット。
ですので、テーラードジャケットの上からでもすんなり羽織ることが可能です。
着丈もショート丈も発売され、色もキャメルだけではなく、ネイビーやブラックというオトナが着てもハマるようなダッフルコートがたくさん発売されています。
「ダッフルコートって、なんだか子どもっぽい…。」
そうイメージされがちですが、ビジネスシーンでもジャケパンコーデには、ピッタリではないでしょうか?
おすすめ度☆☆ 明日から「青島」と呼ばれる可能性も…、モッズコート
モッズコートという言葉の定義は難しく、人によって、それぞれ解釈が違う言葉だったりします。
狭い意味でいうと、アメリカ軍が1950年代に極寒地での防寒着として採用していた「M-51パーカー」のことを指します。
指しますが、広い意味でのモッズコートとは、1950年代から1960年代のイギリスの若者文化であるモッズファッションをしていた若者が好んで着ていたコートを指します。
もちろん、M-51パーカーもモッズから人気を集めていたのですが、M-51パーカーだけに限らず、M-51パーカーよりもさらに防寒性を高めたM-65パーカーといったミリタリージャケットもモッズは愛用していました。
モッズがこういたミリタリージャケットを着ていた理由は、彼らはなけなしのお金をはたいて細身のスーツをビスポークで仕立てていたため、お金がない。
しかし、当然、冬になるとスーツだけでは寒さをしのげないので、コートも必要になります。
そこで、モッズは軍からの払い下げで安く手に入るM-51やM-65といったミリタリージャケットを着て、寒さをしのいでいたのです。
そういう歴史があるので、細身のスーツにウイングチップというボリュームがある靴を合わせるモッズスタイルにミリタリーコートが定番となり、いつしか彼らが着ているミリタリーコートがモッズコートとよばれるようになりました。
モッズコートを選ぶ時の注意点として、実は、M-51には、「M-51パーカー」と「M-51フィールドジャケット」が存在します。
このM-51パーカーとM-51フィールドジャケットというのは、2つ揃ってようやく防寒の役割を果たします。
M-51フィールドジャケットの上にM-51パーカーを羽織るという使い方が本来の着用方法になるのです。
このため、M-51パーカーをはじめとするアメリカ軍のミリタリージャケットはシルエットがゆったりした作りになっています。
あまりゆったりしたシルエットだとカッコよくないので、今では、細身のミリタリージャケットが発売されています。
極力、ジャストサイズのモノを選ぶようにしたいですね。
また、『踊る大捜査線』の中で、青島刑事が愛用していたのも、このモッズコート。
オリーブ色をチョイスしてスーツの上に羽織ろうものなら、明日から「青島」と呼ばれてしまう可能性があるので、選ぶ色にも気をつけたいですね。
おすすめ度☆☆ 防寒性がバツグンだが…、ダウンコート
スーツにダウンコート姿がビジネスシーンでも見かけるようにはなりましたが、ダウンコートは、もともとアウドドア用に開発されたコート。
ですので、服装のルールが固めな業界であったり、社内にスーツスタイルに厳しい人がいたりする場合はNGとされてしまうでしょう。
ダウンコートは、フェザーを使い防寒具としては抜群の防寒性能を誇るのですが、やはりカジュアル感が抜けきらないのは、素材がナイロンのキルティング加工というのが大きな理由ですね。
スーツの上にダウンコートを羽織るのは、あえての”ハズシ”テクニックとしては良いでしょう。
また、ビジネススタイルでも、スーツよりカジュアルなジャケパンスタイルが許される環境なら、ダウンコートも選択肢に入ると思います。
ただ、一般的なサラリーマンがビジネスシーンで…、となるとご自身の業界や社風を見定めて着る必要がありますね。
まとめ
コートの中でも最も格が高く、ビジネスシーンでおすすめできるのが、チェスターコート。
それに続くコートとして、ステンカラーコートとトレンチコート。
ここまでがビジネスシーンで、どんな業界や業種でも使えるコートといえるでしょう。
あなたがカタメの業界で働いていたり、重要な会議や商談に参加されるような立場だったりするなら、この3つがコート選びの選択肢といえます。
ピーコート、ダッフルコートは日本のビジネスシーンでは許容範囲内ですが、やはりカジュアルよりでどうしても若い人が着るイメージのコート。
ですので、あなたがもし周りから知的に見られたいと思っているなら避けておいたほうがいいでしょうね。
あとは、最近、スーツの上から羽織るのを見かけるモッズコートやダウンコート。
これらはスーツに着ることを目的として作られたコートではないため、本来、ビジネスシーンには向いているとはいえません。
スーツの上にこうしたコートを着ることが許されるのは、あえて「ハズした」コーディネートをしたい時だけ。
こうして見てみると、コートも「襟があるかどうか」がフォーマルの度合いがを決めるといえます。
「襟を正す」
という言葉がありますが、キチンとした場所に出ていくには、コートにも襟がやっぱり必要だということですね。