上手な絵と個性的な絵とは違います。
上手な絵は誰が見ても上手でソツがなく、万人受けのタッチや色づかいだけれど、個性的な絵は独創的で好き嫌いがはっきりと分かれる。
メンズスーツも同じですよね。
自分の個性が活かせるスーツをお探しのあなたに、ダルクオーレをご紹介します。
イタリアスーツの最高級と言ったらロロ・ピアーナやゼニアだけど、個性的で芸術的センスがあるのはダルクオーレ。
もっと上等で贅沢な生地を使うブランドもたくさんありますが、ダルクオーレが好きな人はあえてダルクオーレを選択します。
価格もキートンやブリオーニのように目が飛び出るほどではなく、ラベラ・サルトレア・ナポレターナと同等くらいです。
なのになぜ、一部のファッショニスタからは熱狂的な支持を受けているのか。
他の人が着るスーツとは差をつけたい、独創的でモダンなスーツをお探しのあなたを、ダルクオーレの世界へご案内します。
メンズファッションの芸術と呼ばれるダルクオーレとは
ダルクオーレは進化し続ける「攻めのサルト」とも言われています。
伝統がありながら、新進気鋭の若手のような切れ味を持つダルクオーレ。
創始者は1945年生まれのルイジ・ダルクオーレです。
16歳から6年間ヨーロッパを旅して過ごした後、その世界観を実現するために1965年ナポリに戻り、ハンドメイドの仕立て屋に見習いとして働き始めました。
26歳の時に自身の最初の店舗をオープンすると、そのユニークなスタイルが当時すぐに注目を浴びました。
店舗の位置がオフィスやホワイトカラーの人々で賑わうナポリの中心街だったのも、功を制した一つの要因だったと言います。
80年代になると、最高級ブランドが多く立ち並ぶナポリで最も有名な、ドゥオーモ(大聖堂)のある通りにアトリエをオープンさせました。
彼の独特なスタイルと洗練された品質のハンドメイドのテーラードスーツは、多数の顧客に愛され、その地位を不動のものとします。
ダルクオーレのアトリエは、市街地の中心部にあるにもかかわらず、頻繁に場所を移動していて、現在は海岸沿いにあるアトリエに居を落ち着けています。
ダルクオーレのアトリエには幾多の現代アートが飾られており、窓辺からは美しい海が見えるそう。
こんな豊かな感性も、スーツ作りに反映されているのかもしれません。
ダルクオーレの仕立て
ダルクオーレの服は一言で言うなら「鋭い」。
鋭い服というとあまりピンとこないかもしれませんが、物事を突き詰めていくとほとんどのものがシンプルになっていくように、ダルクオーレの服も一切の無駄がなく、シャープな服です。
一体何をしてそう言わしめるのか、細かなところを見てみましょう。
隙のない精巧な手縫い
ダルクオーレの服はオールハンドメイドです。
ただし、他のサルトリアのような、ハンドメイド特有の暖かみとは明らかに異質のものです。
絵画で言うなら、他のナポリ仕立てのサルトが、柔らかな曲線とふんわりとした暖かな木漏れ日を思わせるような画風のルノワールなら、ダルクオーレは緻密な計算による構成と、光と陰による精妙な技巧のフェルメールに例えることができるかもしれません。
ダルクオーレのジャケットは、基本的にナポリ仕立ての王道とも言える古典的なディテールです。
返しのある三つボタン、高めのゴージ、パルカポケットにマニカ・カミーチャ。
ダルクオーレの服は、フォーマル以外は全てマニカ・カミーチャで作られているとのこと。
ダルクオーレには一本筋の通った独特の美学があり、マニカ・カミーチャもその一つ。
彼の服作りには、ナポリの典型的な、最も美しかった時代のスーツを再現したいという思いがあるそうです。
実際見てみると、その袖の付け根の曲線は、艶やかで波打つような立体的で繊細なドレープです。
そこにはラベラ・サルトレア・ナポレターナのようなゆったりとした緩めのリラックスしたものとはまた違う、まるで計ったような規則正しいドレープがあります。
また、アームホールも高い位置に設計された小さめのものであるにもかかわらず、極めて丁寧なアイロンによるプレスで形作られているため、可動域が広く窮屈さを感じないといいます。
このマニカ・カミーチャとアームホールのおかげで、腕をいっぱいに上げてもストレスを感じないんだとか。
長時間腕を上げているデスクワークなど、ビジネスマンは意外と腕と肩を圧迫されて疲労しています。
ダルクオーレのスーツはそんな毎日のちょっとしたことで積み重なるストレスを解消してくれる、着る人に優しい着心地なんですね。
ダルクオーレのスーツは、まさに体系にジャストフィットするスーツ。
そしてシルエットはウエストや袖、裾のシェイプを効かせたメリハリのあるものです。
あくまで端正に、しかし窮屈さを感じさせない絶妙なバランス。
ダルクオーレが目指すのは、第二の皮膚のようなスーツ。
それが、スーツのシルエットにも見事に現れているように感じますね。
キレッキレのエッジ
繊細な仕事が十分すぎるくらいに分かる部分は、やはり肩周りとラペルでしょうか。
ギャザーの縫い付け部分の細かさと、ラペルのエッジギリギリのラインをまるでマシンのように同じ幅と強さでステッチされています。
ダルクオーレの驚くべき点は、その精巧さゆえに歪みが一切ないところ。
並べて見てみると本当によくわかりますね。
ラインが一直線で、とてもハンドメイドとは思えません。
肩の継ぎ目の部分も非常に鋭く、甘さがないのが特徴です。
ハンドメイドでは縫い目が重なる部分は少しこんもりとしているものですが、完璧なまでのプレスとステッチでピシッと押さえてあります。
ボタンホールはキートンよりはやや丸みを帯びていますが、ラベラのようなこんもり感はなく独自の美学が伺えます。
エッジすれすれのハンドステッチは、二つに折った紙の折り目を爪で擦ったかのような鋭いキレを生み出しています。
また、ステッチのピッチもストイックなまでに均一です。
ダルクオーレの美意識を感じずにはいられない部分の一つですね。
ナポリらしいカラフルな色柄
ダルクオーレの特徴は、仕立ての伝統的なナポリらしさだけではありません。
彼のアトリエがモダンアートで彩られているように、彼の選ぶ生地もまた、その感性がふんだんに盛り込まれています。
ナポリのスーツといえば、カラフルな色使いや豊富な柄を思い浮かべますが、彼のスーツやジャケットにもまた、ナポリを象徴するような情熱的な色柄づかいを見ることができます。
目の覚めるような鮮やかなブルーのジャケット。
日本では鮮やかなブルーのジャケットやスーツはなかなか着慣れないものですが、ナポリの陽気な気候の元では映えそうな色です。
山吹色のような濃いイエローに細いラインが入ったチェックのジャケット。
大きめのラペルが印象的ですね。
日本では少し前に細めのラペルが流行り、今では太くも細くもない中間くらいのラペルになっていますが、ナポリ仕立てのラペルは概して大きめ。
大きめのラペルは、胸を広く男らしく見せるための、ナポリの伝統でもあります。
チェックと一口に言っても、大きさや色でかなり雰囲気の違うものになりますね。
グレーのストライプも艶やかで、ネイビーやブラックを合わせるのが忍びないほど。
綺麗なグリーンのジャケット。
強烈な原色は、内面の豊かさと個性を感じずに入られません。
ラフに颯爽と着こなしてみたいですね。
裏地は対照的な色や表地からは想像もできないような、ハッとする色柄。
こんなの序の口のようですよ。
中にはギターがたくさん描かれたものや、アメリカンコミックをそのまま貼り付けたようなデザインのものもあります。
茶目っ気たっぷりなのも、ナポリ人の気質でしょうか。
存在感のあるダルクオーレのジャケット
さあ、ダルクオーレのラインナップを見てみましょう。
はっきりとハンドメイドと分かるのにキリッとした顔のラペルのヘリ部分のステッチ。
キリッと端正に見えるのは、ステッチのピッチ(幅、大きさ)が揃っているからですね。
とても上質な感じがします。
よくあるストライプのネイビージャケット。
なのにとても色気があるのはなぜでしょう?
それはマニカ・カミーチャの贅沢で美しいドレープ、大きめのラペル、フロントボタンを外した状態で見る、高めのゴージで隠れる第一ボタンの絶妙なライン、シェイプされたウエストライン。
全てが計算され尽くされ、しかもそれらがさりげなく調和して一体となり、雰囲気を醸し出しているからです。
女性は細かなディテールにも気づくとともに、雰囲気も見るもの。
雰囲気に色気があれば、「この人、他の人と違う」となります。
そんな、女性を振り向かせるような雰囲気が、ダルクオーレのジャケットにはありますよね。
これはとても鮮やかですね。
テラコッタ色のベースに真っ赤なライン。
こんな個性的なジャケットを着こなせるようになれば、真の洒落者上級者です。
変わってこちらは爽やかなグリーンのヘリンボーンジャケット。
ラペルのボタンホールが印象的ですよね。
ブルージーンズにもグレーのウールパンツにも合いそうな、明るく穏やかなジャケットです。
シックなウールジャケット。
落ち着いた色味と温かな素材感が、大人らしい優雅さを感じさせてくれるジャケットですね。
ネクタイとチーフに赤みを添えることで、より温かさを演出しています。
上と同じジャケットに見えますが、より鮮明な赤を合わせているので、雰囲気がガラッと変わりますね。
パーティーや野外に出かける時のような、ちょっとはしゃいだ雰囲気です。
横に置いてあるハンチングと手袋が、英国の乗馬を思わせますね。
小物で演出するというのも一つの手ですね。
大きめのギンガムチェックのジャケット。
派手なように感じますが、合わせるもの次第では落ち着いたコーディネートになりますよ。
無地やモノトーンを合わせるより、柄オン柄にして、別のシックなチェックを合わせたり、ボトムスをダークネイビーのジーンズにするとしっくりとくると思います。
海老茶色の明るいサマージャケットです。
海老茶はオシャレ度が高く、女性にも人気の色。
この色を着るときは、ジャケットをぜひ主役にして、他の色はホワイトかベージュくらいのさっぱりとしたコーディネートにしてほしいです。
小物はブラウン。
茶系で統一した方が、まとまり感がありますよ。
ラベンダー色のジャケット。
コーデが難しそうですが、茶色と合わせればオシャレに、ネイビーと合わせれば無難に着こなせる色です。
それにしてもチーフにパープルの反対色、黄色を持ってくるとは、さすがセンスが違います。
黄色でもこのくらいの柔らかなクリーム色なら、それほどギラギラせずに品良く着こなせますね。
鮮やかなブルーの入ったダークネイビーのダブルブレストジャケット。
第一印象の色味に目が持っていかれそうになりますが、ラペルやフロントの裾を見てください。
とても美しいと思いませんか?
生地だけに頼らず、しっかりとした丁寧な縫製があればこその仕上がりです。
まるできちんと折られた日本の伝統芸術、折り紙の作品を見ているかのようです。
ボルドーのベースに白のチェックラインが入ったダブルブレストのジャケット。
ボタンは印象的な赤で、さりげなくチーフの水玉と揃えています。
水玉で揃えているといえばネクタイもそう。
しかし、ネクタイの水玉はジャケットのベースと同じ色。
少しずつずらしながら取り入れていく、基本のコーディネート術ですね。
イタリアの男性が大好きな、ベージュにネイビーの色合わせ。
さらに赤のラインがちらりと見え、色を添えています。
この微妙な赤の使い方が、茶目っ気というか洒落感を増しているのですよね。
グレーにライトブルーのウィンドウペーン。
ただのグレースーツはよく見かけますが、こんな綺麗なカラーのラインが入ったグレースーツ、ちょっとないですよね。
とてもおしゃれで、センスがいいなと思います。
色気のあるダルクオーレのスーツ
ぐっとシックなチャコールグレーのベースにボルドーのラインのウィンドウペーンのスーツ。
色合いが英国紳士風でこういう感じもまた、素敵ですね。
グレンチェックやガンクラブチェックなど、他のチェックは意外と使われている日本ですが、ウィンドウペーンは意外と見ません。
日本で個性を出すならウィンドウペーンはありかもしれませんね。
ストライプのネイビースリーピース。
スーツだけならきちんとした銀行マンのようなかっちりとしたスタイルなのに、そこにギンガムチェックと横ボーダーのタイを持ってくるとは。
ウエストの絞り具合とアームホールの高さ、分かりますか?
このシルエットがダルクオーレの美的センスを物語っています。
ネイビーのベースに赤とボルドーでしょうか、タッターチェックのスーツです。
使われている色自体はそれほど派手ではありませんが、チェックが大きいため独特の華やかさがありますね。
パーティーなどに向いていそうなスーツです。
そして、色違いの同じ大きさのドット模様のシャツとネクタイがおしゃれ。
細かいチェックの入ったブラウン系のスーツ。
シンプルですが素材の温かみで存在感がとてもありますね。
同じトーンのスモーキーなブルーグレーのネクタイとチーフが目を引きます。
ブラウン系で統一されたシングルスーツ。
同系色で揃えてしまうのも、コーディネートの技です。
同じ茶系でも与える雰囲気が違うので、トーンを変えるだけでこんなにオシャレになります。
ネイビーにライトグレーのストライプが入ったダブルブレストスーツ。
ダブルのスーツというと、下のボタンまでしっかり閉めてしまいがちですが、このコーディネートのように左下を一つだけ開けておくというのは、真似したいちょっとしたオシャレです。
ボタン一つでも表情が異なるのはディテールの一つ一つが重要な意味を持つ証拠。
イタリアの男性のように、ボタン一つでも見られているという意識を持つと、オシャレに対するあり方も変わってくるかもしれませんね。
明日から使えるダルクオーレのジャケパンコーディネート例
ジャケパン派の方、お待たせいたしました。
ダルクオーレのジャケパンのコーディネート例です。
明日からでもすぐにでも使えそうな組み合わせばかりなので、こちらは要チェックですよ。
おなじみグレンチェック柄のジャケットに、ジーンズのコーディネートです。
ノーネクタイですが、寂しいと思う時はチーフをあしらっても良いですね。
シューズはブラックでシックに決めていますが、ブラウン系にすると軽快な感じになります。
同じジャケットでベージュのコットンパンツに替えています。
ブラウンは黄色を暗くした色味で赤も混ざっているため、ほんのり色っぽさやカジュアル感が出てきますね。
ネイビージャケットとホワイトパンツの定番コーデ。
定番の色もジャケットがビシッとしているかどうかで雰囲気がかなり変わります。
ダルクオーレのジャケットは隅々まで端正な作りなので、着る人のみならず着る人も思わずシャンとしそうな雰囲気。
清潔感があって好まれるコーディネートです。
ごく薄いライトグレーのジャケットに、ダークなネイビーのパンツを合わせたコーディネート。
足元をダークブラウンのスウェードにして、存在感をドスンと置いていますね。
同じ色の入ったチーフを胸元に持ってくることで、まとまり感もバッチリ。
まとまりにくいなと思ったら、上下で同じ色を少しずつ配置するのも技です。
ブラウンのチェックジャケットに爽やかなホワイトパンツ、そしてツヤ感のあるブラウンのシューズです。
全体的にライトな雰囲気で、夏にぴったりのコーディネートですね。
ブラウンは合わせる色によっては重い雰囲気になりがちですが、コーディネートの中で明るい色味を大きく取ることで軽さに変換される面白い色。
チェックの中の白のラインが効いています。
ダルクオーレを日本で購入できる店舗
ダルクオーレを日本で手に入れられる店舗は、現在東京と神戸にあります。
<東京>
新宿伊勢丹メンズ館、南青山ユナイテッドアローズ、銀座バーニーズニューヨークなど
新宿伊勢丹メンズ館、南青山ユナイテッドアローズ、銀座バーニーズニューヨークなど
<神戸>
神戸バーニーズニューヨーク
神戸バーニーズニューヨーク
公式ホームページ:http://www.sartoriadalcuore.com/
ダルクオーレまとめ
高品質で贅沢な生地を使ったロロ・ピアーナや高級で華麗なキートンよりも、個性的でエッジの効いた独創的なメンズファッションを作り続ける、ダルクオーレ。
伝統のナポリの王道スタイルを守りながらもメリハリのついたシルエットと精密な手仕事のなせる技により、キレのあるスーツやジャケットを作っている、立ち上げ以来多くの人々に支持されているサルトリアです。
モダンアートと海の見えるアトリエで作り出されるダルクオーレは、伝統と感性を重んじたい人のためのブランドと言えるでしょう。
ダルクオーレの服は、
・ピッチの揃った恐ろしいまでの緻密なハンドステッチ
・精巧なハンドメイドによる美しいドレープのマニカ・カチャーミ
・エッジギリギリに施される気の遠くなるようなステッチ
・ナポリらしいカラフルな色柄の選択
・胸元を強調する大きめのラペル
・体の動きに沿った高く狭目のアームホール
・計算され尽くしたウエストシェイプ
これらによって、独特の雰囲気と存在感のあるスーツに仕立て上ります。
また、明日からすぐに実践できそうなジャケパンのコーディネート例も記載しました。
中にはダルクオーレのジャケットでしか出せない独特な雰囲気のコーディネートもありますので、ぜひご自身でダルクオーレを手にいれてアレンジをお楽しみくださいね。