革マニアのあなたなら、牛革でも最上級とされる「ブライドルレザー」のことをご存知かと思います。
もしかしたらすでに「ブライドルレザー」のものをお持ちかもしれませんね?
「ブライドルレザー」を使った革製品は国内外のブランドから数多く販売されていて、価格や品質もまちまちです。
この記事ではそんな「ブライドルレザー」について、その特徴と本場イギリスのブランドから選りすぐりの3社をご紹介します。
革マニアのあなたの、「知識のまとめ」としてお使いください!
ブライドルレザーって?
「ブライドルレザー」は、生後2年以上の去勢された雄牛の皮の「ステアハイド」を原皮とし、イギリスで1000年以上に渡って受け継がれている、伝統的な製法で作られています。
その製法とは、植物由来の水溶性化合物である「タンニン」を使って、牛の皮を牛革にする「タンニンなめし」をしたあとに、ミツバチが巣を作るために体から出す「蜜蝋」を、長い時間と手間をかけて、何度も丁寧に革に塗り込み仕上げる製法です。
何度も繰り返し塗りこむことで「蜜蝋」が革に染み込み、革の繊維を引き締めて、硬くて丈夫な革に仕上がります。
また、「タンニンなめし」は天然素材だけを使っているので、環境にやさしいとされています。
「ブライドルレザー」を作るのには、半年から長いものでは1年半もの期間がかかるうえに、手間もコストもかかるので、革の中でも非常に高級な部類に入ります。
また、硬くて丈夫な革なので、縫製には高い技術が必要とされ、熟練した職人にしかできないとされています。
もともと「ブライドルレザー」は、命を預かるために高い強度が求められる、馬具に使う革として開発されました。
「ブライドル」とは、馬具の意味があり、名前の由来になっています。
「ブライドルレザー」は、馬具に使われていたことからもわかるように、頑丈で耐久性が高いため、傷がつきにくく、汚れにも強く、手入れ次第で、何十年も使える革です。
「ブライドルレザー」の大きな特徴の一つに「ブルーム」と呼ばれる、白いロウの粉があります。
これは製造工程で塗りこまれた「蜜蝋」が浮き出たものです。
新品の「ブライドルレザー」の表面に浮き出ている「ブルーム」は、使っているうちに取れてきて、革の表面には非常に美しい艶が出てきて、特有の光沢感になります。
これが「ブライドルレザー」の経年変化で、革マニアには堪らないものとなっています。
「ブライドルレザー」のタンナー(革をなめす工場)としてよく知られている会社には、本場イギリスの「SEDGWICK(セドウィック)社」があります。
1906年創業の「SEDGWICK(セドウィック)社」は、世界有数の「ブライドルレザー」のタンナーで、現在ではトップシェアを誇っています。
素材選びから、なめしや裁断など、全ての工程にこだわり、伝統的な製法を引き継いでいる、熟練職人により、常に高品質な革を世界中に届けています。
その独特の艶には高級感が漂い、スーツやジャケットとの相性もよく、ビジネスからカジュアルまでこなせるので、スマートさを求める大人の男性に支持されています。
グレンロイヤル(GLENROYAL)
1979年に、スコットランド中西部のエアシャーで、ピーター・パティソンにより創業されたブランドです。
グレンロイヤルの名前は、谷・渓谷という意味の「GLEN」とスコットランド王室という意味の「ROYAL」が組み合わされてできていて、「純粋さ、高い品質、古くから伝わる伝統、真正の本物、由緒正しさ、信頼性、高い耐久性、正直さ、勤勉な民族」などの意味が込められています。
「グレンロイヤル」は、全ての製品に高品質の「ブライドルレザー」を使用しています。
特に「フルブライドルレザー」は、化学染料や顔料を一切使わずに染色されているため、より自然な経年変化を楽しめます。
高品質な革を使い、伝統技術を持つスコットランドの革職人により、全ての革のコバが丁寧に手で磨き上げられ、美しく仕上がった製品の数々は、品質、デザインともに高く評価されています。
ホワイトハウスコックス(WHITEHOUSE COX)
1875年にイギリス北西部のウォルソールで、ホワイトハウスとサミュエル・コックスにより創業されました。
創業時から1920年代までは、高品質な鞍や手綱などの馬具や、イギリス軍の軍需用製品を主に製造してきて、現在では、洗練されたデザインの鞄や財布など、様々なレザーグッズを作っています。
ホワイトハウスコックスの「ブライドルレザー」は、創業以来、染色や仕上げなどを独自にオーダーしたもので、品質は常に厳しくチェックされています。
イギリスやヨーロッパから厳選された、耐久性の高い最高級の「カウハイド」を使い、天然成分の溶液に浸す「フルベジタブル・タンニング」で、約6週間なめされます。
その後、3週間かけて天然成分をたくさん含んだ染料で「アニリンフィニッシュ」を行い、革の奥深くに「タロー(獣脂)」がしっかりしみ込むまで、「ブライドルグリース」を塗り込みます。
さらに、2週間程ねかせて、高品質な「ブライドルレザー」が仕上がります。
なかでも耐久性の高い「イングリッシュブライドルレザー」は、約10週間もの間、丁寧に「タンニンなめし」を行った後、天然の染料を革の奥深くまで染み込ませ、じっくり時間をかけて仕上げられたものです。
この最高の革を使って、伝統技術を持つ経験豊富な職人により、製品が生み出されています。
エッティンガー(ETTINGER)
1934年にイギリスのロンドンで、ジェラルド・エッティンガーによって創業されました。
そのハンドメイドの革製品が評判になり、ハロッズ、バーニーズ・ニューヨーク、バーグドーフ・グッドマンといった有名店から、財布や名刺入れなどを受注し、オリジナル製品を作ってきました。
1996年には、イギリス王室御用達の「ロイヤル・ワラント」になり、2000年には、「ギフト・オブ・ザ・イヤー」を受賞するなど、たくさんのメディアに注目されました。
日本では、1999年から本格的に売られるようになりました。
商品のひとつひとつに、ロイヤル・ワラントが誇らしげに輝いています。
革小物をイギリス王室に納めているのは「エッティンガー」だけで、チャールズ皇太子をはじめ、トニー・ブレア元首相など、たくさんの著名人に愛用されています。
ツートンカラーの革製品がブランドの特徴ですが、ブランドロゴが目立たない、シンプルなデザインで、薄く耐久性に優れたものとなっています。
シンプルなデザインなので、スーツにもよく合います。
まとめ
以上、牛革の中でも際立った存在感を放つ「ブライドルレザー」についてと、その本場イギリスのブランド3社についてご紹介しました。
「ブライドルレザー」は頑丈で耐久性も高いので、きちんと手入れさえしてあげれば何十年も持つ、まさに「一生もの」と呼べる革です。
そしてこの3つのブランドの何れもが、本場ならではの「ブライドルレザー」を使った、優れた革製品を生み出しています。
あなたも「ブライドルレザー」の革製品を手に入れて、「ブルーム」が消えて光沢が増していく、経年変化を楽しんでみてはいかがでしょうか。