冠婚葬祭に欠かせない靴といえば、黒の内羽根のストレートチップです。
年齢とともに何かと顔を出す機会も多くなるのが冠婚葬祭。
スーツやネクタイは用意しているのに、靴は意外と手持ちのものでなんとかしてしまう人も多いのでは。
しかし、ある程度の年齢になったら、年相応のきちんとしたストレートチップを用意したいものです。
靴はその人の品格を表すと言われるように、高級感のある靴を履けば全体のコーディネートも引き締まり、周りからも尊敬の眼差しで受け入れられます。
高級感のあるストレートチップは、冠婚葬祭だけでなく、大切な商談などにとても役に立ちます。
高級感のある、上質なストレートチップは、一足は持っていたいもの。
ここでは、冠婚葬祭などのフォーマルな場で使える、高級感のあるストレートチップを取り扱うブランドを5つ、ご紹介します。
英国王室御用達「ジョン・ロブ」
ジョン・ロブは1866年にロンドンで創業された老舗靴ブランドです。
英国王室からロイヤルワラントを授かり、伝統の揺るぎない技術と徹底したこだわりを持つ、「キング・オブ・シューズ」と呼ばれる世界的ブランド。
ゴールドラッシュ時代の鉱夫用のブーツを作る小さな工房から出発したジョン・ロブは、1866年に開店するとすぐに上流階級や政治家、財界のエリートなどの目に留まり、ビスポークのシューズを提供して一流のブーツ職人としての地位を築きました。
その後は様々なタイプのビスポークシューズを上流階級に作り続けますが、経営難に陥り、その技術力の高さに惚れ込んだエルメスが、1976年にブランドの商標とパリ支店を買い取ります。
エルメスの傘下に入った頃から既製靴を作り始め、1990年には既製靴を取り扱う店舗をパリにオープンさせました。
現在世界各国に広がる既製靴コレクションを取り扱うジョン・ロブのブティックは、全てエルメスグループによる「ジョン・ロブ・パリ」のものです。
現在はパリのモガドー通りにあるアトリエで、ビスポークも作られるほか、イギリスのノーザンプトンにあるファクトリーで、既製靴やハンドメイドの靴の製作が行われています。
また、創業者ジョン・ロブによるジョン・ロブも「ジョン・ロブ・ロンドン」として経営されており、伝統の精神と技術を受け継ぐビスポーク専門店として今なお健在です。
ジョン・ロブの既製靴の行程は190もあり、ビスポークの精神が息づいています。
時代を超えた伝統と卓越した技術、堅牢かつ快適な履き心地、上質で品格漂うジョン・ロブの靴は、世界中から支持され続けています。
ジョン・ロブ|CITY Ⅱ
CITY Ⅱ ¥183,600
ジョン・ロブのベースとなっている木型#8695の源流を組み、さらに進化させたのが、名作#7000。
#7000は細身のナローラウンドトゥで、伝統を守りつつもトレンドも取り入れたスタイリッシュなラストです。
クラシカルなスーツから、細身のスーツまで幅広く対応可能なので、冠婚葬祭だけでなく、最近流行のタイトなスーツにも似合います。
その#7000の木型を使ったのが、このCITY Ⅱで、ジョン・ロブのストレートチップの定番とも言われている靴。
キャップトゥがダブルステッチになったモダンクラシックなディテールのオックスフォードです。
オックスフォードはドレスシューズの最高峰と呼ばれるにふさわしい、気品あるシルエット。
普遍的でスタイリッシュなこのストレートチップには、秋冬バージョンとしてNOVEMBER RUBBER SOLE(ノベンバー・ラバー・ソール)があります。
オックスフォードのスタイルはそのままに、撥水加工されたアクアカーフ素材を使用し、ソールも丈夫なラバーソールにすることで、雨の日にも対応できるコレクションです。
まるでビスポークのよう「ガジアーノガーリング」
GAZIANO&GIRLINGは設立が2006年とまだ比較的新しいブランドです。
創業者であるトニー・ガジアーノとディーン・ガーリングは、それぞれ紳士靴業界では有名な人物。
トニーはエドワード・グリーンでビスポークの責任者の経験があり、またディーンはテーラーメイドの靴職人としてジョン・ロブ他数々の有名ブランドの制作に携わっていたという売れっ子靴職人。
その実力ある二人が立ち上げたブランドとあって、設立当初から大きな話題を集めていたと言います。
ベンチメイドとハンドメイドの、前例のない新鮮で美しいデザインは、まるでビスポークのような完成度。
見た目の美しさと機能的な面でも申し分のない品質基準を世界中のファッショニスタに提供しています。
ガジアーノガーリング|オックスフォード
Oxford” in Black Calf – GG06 £894.00
ブラックカーフのオックスフォード。
アッパーの履き口から爪先までの美しくグラマラスなラインはもとより、必見なのは土踏まずです。
土踏まずがフラットではなく、内側と外側から引きあがるようなうねりを帯びています。
この土踏まずはベベルドウェストと言い、ビスポークならよく見られる形状ですが、既製靴では滅多にお目にかかることができません。
トニー・ガジアーノはエドワード・グリーンの888や82の木型を起こした人物で、このオックスフォードは888の木型によく似ているとのこと。
さすがビスポーク出身の二人ならではの、他の追従を許さない靴作りです。
グッドイヤーウェルト製法の最高峰「エドワード・グリーン」
イギリスの靴工場が集まるノーザンプトンで、1890年に創業したエドワード・グリーン。
「妥協なきエクセレンス」をフィロソフィーとし、紳士用の手作りの靴を作り始めます。
その小さな工場で作られる紳士靴は、瞬く間に「英国でも稀代の才気溢れる靴職人」として名声を上げ、もっとも品質の高いグッドイヤーウェルズシューズカンパニーとして認知されました。
グリーンの「出来うる限りの上質を求める」という明確な哲学は、今日にまで受け継がれています。
洗練されたデザインと、極上の履き心地、そして耐久性を守るのは、卓越した職人の技術です。
素材のカットは、まずカットする道具を研ぎ機で研ぐことから始まります。
カーフスキンは革の目やシミ、革の伸縮を計算してカットされ、熟練の職人による縫製、注意深く的確になされるウェルティング、寝かしを挟んだ二度にわたるポリッシングなど、すべての工程において丁寧な仕事がなされています。
その品質の高さは、洒落者として有名だったアーネスト・ヘミングウェイやウィンザー卿をも魅了しました。
現在でもグッドイヤーウェルト製法の靴の最高峰として、歴史を刻み続けています。
エドワード・グリーン|CHELSEA
CHELSEA/82 ¥157,680
エドワード・グリーンの大定番、CHELSEAです。
最高級のカーフスキンを使用し、手作業で作られた傑作です。
クラシックなオックスフォードで、羽の中のカーブを描くスワン・ネックのステッチが特徴で、1930年代からビジネスや社交の場のフォーマルシューズとして履かれています。
木型82は、シャープなシルエットで、ジョイントラインからトゥにかけて大きくカーブした形状がスタイリッシュなため、トラディショナルなスーツも、モダンなスーツもその足元を輝かせてくれます。
憧れのアメリカントラッド「オールデン」
オールデンは、1884年、マサチューセッツ州で設立されました。
アメリカントラッドの歴史を語る上でもなくてはならない存在のブランドですが、第一次大戦、世界大恐慌をくぐり抜け、歴史の需要に後押しされながら、ニューイングランド製の靴を守り続けてきました。
創業当時は機械化とともに鉄道が発達し、靴産業は爆発的な成長を遂げ、オールデンも子ども用の靴や紳士靴、カスタムブーツを提供しています。
世界的に厳しい戦後の経済を切り抜けてこられたのは、医療用の履物などの専門分野に優れていたから。
現在でもドレスシューズを作る傍ら、マサチューセッツ州ミドルボロにある、1970年に作られた新しい工場で、医療用シューズを生産し続けています。
また、紳士靴は米国の靴文化を象徴するトラディショナルなフォルムと上質な履き心地で、世界中の靴を愛する紳士たちの憧れの的です。
オールデン|Plain Toe Bal Oxford932
Plain Toe Bal Oxford932 約¥100,000
定番モデルのプレーン・オックスフォードです。
オールデンはどんな形の足にも適応できる靴作りを掲げており、その中でも落ち着いた雰囲気に定評のあるカーフスキンは、キメが細かくしなやかです。
カーフスキンは生後3〜6ヶ月以内の子牛の皮革を鞣したもので、きめ細かくて傷も少なく、柔らかいのが魅力です。
また、コードバンよりも雨に強く、濡れた後にきちんと陰干しすれば色落ちや跡が残る心配もありません。
雨や雪の日でも長靴を履けない冠婚葬祭にはぴったりの素材ですね。
プレーントゥは爪先に装飾がない靴の中では一番品格の高い靴。
ごくシンプルで汎用性の高いデザインで、それゆえにフォルムの美しさも際立ちます。
皇室御用達「大塚製靴」
1872年創業で、日本で一番古い靴店の大塚製靴。
創業当初は「大塚商店」という名称でした。
日本人の足にあった靴を追求し続けた140年もの歴史は、日本の靴の歴史そのものと言っても過言ではありません。
創業当時は文明開化から間もない頃で、日本ではまだ西洋靴を履くという習慣はありませんでした。
しかし、大塚商店は、靴は将来必ず日本人のライフスタイルに欠かすことのできないものになると見据え、ひたすら技術の習得に邁進します。
そして1889年、パリ万国博覧会において、銀碑を受賞するという栄誉に輝き、創立からわずか17年にして、世界の靴メーカーと肩を並べるまでに成長しました。
大正11年(1922年)になるとグッドイヤーウェルト製法を取り入れるとともに、機械製造にも着手し、靴産業界の大きな牽引力として走り続けます。
また、海外大手ブランドとも提携し、ハッシュパピーやピエール・カルダン、ポール・スチュアートなどの新作も手がけるようになりました。
近年では靴産業界のトップを担うと同時に靴作りの原点に帰るべく、ビスポーク中心の靴店「OTSUKA M-5」をオープンし、国内外の靴好きから熱い注目を集めています。
ちなみにM-5は、創業年の明治5年に由来。
海外の有名ブランドと提携を結び、次々とその名を冠した新ブランドを立ち上げるとともに、オリジナルのブランドにも力を入れ、ますます躍進している日本を代表する靴ブランドです。
大塚製靴|シェルコードバンM5-112
OKTSUKA M5-112 ¥97,200
馬1頭から靴1足分しか取れないというコードバン。
革のダイヤとも呼ばれ、革の頂点として憧れる人が後を絶ちません。
M5-112では、トゥの革をかかとまで伸ばして足全体を包み込むパターンを採用しています。
パーツ同士のサイドのつなぎ目がないため、一枚側の持つ艶の美しさが損なわれていないのが特徴。
羽の部分のパーツはステッチではなく縫い割りで仕上げてあり、全体の華奢なフォルムの中にも力強さを感じさせるデザインです。
冠婚葬祭にはなぜストレートチップなのか?
冠婚葬祭にはストレートチップが適しているとされています。
しかし、今回この記事では、つま先に真一文字にステッチの入ったストレートチップと、つま先に装飾のないプレーントゥをご紹介しました。
革靴は通常、プレーントゥは正装用、ストレートチップは礼装用とされていて、プレーントゥの方がよりフォーマルとされています。
格式の高い順番としては、
プレーントゥ(内羽根式)
↓
ストレートチップ(内羽根式)
↓
プレーントゥ(外羽根式)
↓
ストレートチップ(外羽根式)
↓
ストレートチップ(内羽根式)
↓
プレーントゥ(外羽根式)
↓
ストレートチップ(外羽根式)
となります。
ですので、冠婚葬祭の場合、プレーントゥでもストレートチップでもどちらでも着用可能です。
実際にはプレーントゥ、ストレートチップにこだわるより、むしろ肝心なのは内羽根式であるということです。
フォーマルな場では内羽根式が正式とされているので、ストレートチップでもプレーントゥでも外羽根式を履いていくと失礼にあたることがあります。
見ている人は見ているので、ここは十分に気をつけましょう。
内羽根式がなぜよりフォーマルかなのですが、これには内羽根式と外羽根式の起源が関係しています。
外羽根式は戦闘用で履く靴が起源とされているのに対し、内羽根式はイギリスの王侯貴族が室内履きで履いた靴が起源とされているのです。
そのため、内羽根式が自然と格式が高いとされています。
ただし、急なお通夜の場合にはこの限りではありません。
お通夜は想定外のことなので、喪服でなくてもそれに準じた服装が認められているからです。
また、つま先にステッチの入ったストレートチップでも、一文字のところに穴飾りが施されているパンチドキャップトゥという種類があります。
これはかなりのフォーマルな場でない限り、代用が可能です。
ただし、通常のストレートチップより格式は落ちますので、年数を経た法事や、結婚式での一般招待客としてなら十分通用するでしょう。
また、葬儀では殺生を感じさせる革はご法度とされるという話もありますが、男性の場合はあまり現実的ではありません。
無理に人工皮革を購入しなくても、通常の革靴の着用で大丈夫です。
高級感のあるストレートチップ|まとめ
ある程度年齢を重ねると出番の多くなる冠婚葬祭。
結婚式や葬儀でも、それ相応の役割が回ってきたりして、身なりもそれ相応で臨みたいもの。
高級感のあるストレートチップを一足持っていれば、あらゆる冠婚葬祭に対応でき、また大切な商談にも役立ちます。
今回ご紹介した5つの選りすぐりの5足は、どこに履いていっても恥ずかしくないものばかり。
・英国王室御用達、ジョン・ロブの「CITY Ⅱ」
・ビスポークのような既製靴、ガジアーノガーリングの「オックスフォード」
・グッドイヤーウェルト製法の最高峰、エドワード・グリーンの「CHELSEA」
・憧れのアメリカントラッド、オールデンの「Plain Toe Bal Oxford932」
・皇室御用達、大塚製靴の「シェルコードバンM5-112」
また、冠婚葬祭にはなぜストレートチップが定番ですが、内羽根式ならプレーントゥでも可能です。
むしろ、プレーントゥの方が靴としてはよりフォーマルで、格式が高いものとなります。
ただし、プレーントゥでもストレートチップでも、外羽根式は避けた方が無難です。
その起源まで知っている人はなかなか少ないとは思いますが、元は戦闘用の靴が由来となっているため、外羽根式は常識を疑われてしまうこともあります。
黒の内羽根式のストレートチップ、もしくはプレーントゥを一足持っていると、どんな時でも堂々たる紳士として振る舞えるので安心です。