ビジネスマンにとって、商売道具といえば、スーツにカバン、そして革靴。
スーツやカバンについた汚れは目立ちやすいので、いつもキレイにしているという男性は多いですが、靴の手入れとなると、ついつい後回しにしてしまうかたも多いのでは?
ただ、一流になればなるほど、第一印象でチェックされるのは、足元。
たとえば、ヨーロッパの高級フレンチレストランでは、サービススタッフが、客が履いている靴の清潔さをチェックして、どの席を案内するかを決めているほど。
また、日本でも古くから馬方などが旅人の足元を見て、相手の疲れ具合をはかり、籠代の代金を決めていたように相手の「足元を見る」のは、商慣習として当たり前のように行われてきました。
「その人が履いている靴は、その人の人格そのものである」
さらには、ファッションの国イタリアでは、こんな格言があるほど、靴にはその人の性格があらわれ、靴を見るだけでその人となりが分かってしまいます。
靴はキチンと手入れしてやれば、一生履き続けることができますし、なにより靴は持ち主と共に歩んでいくもの。
買ったばかりの革靴は、バリっとした新人のような雰囲気ですが、履き慣れていく中で、こなれ感が出て、その人の人生のあらわれになるのです。
自分磨きはするけど、靴は磨かない。
そんなオトコが、年を重ねていっても、誰も興味を示さなくなることでしょう。
ともに歩み続けるような靴として履き続けるためには、日々の手入れが重要。
そんな革靴の手入れ方法と手入れに必要な道具について、お伝えいたします。
革靴を手入れする基本の手順について
人生において、何事も順番が大事。それは靴磨きであっても。
まずは、基本的な靴磨きの方法とその手順に沿った必要な道具をご紹介いたします。
木製のシューキーパーを使ってシワと湿気を取り除く
靴の手入れにおいて磨くことも、もちろん大事ですが、革靴の寿命を左右する最も大きな要因は、「シューキーパーを使っているかどうか?」
革靴は一日履いていると、履きジワが出てしまいます。
ですので、スーツをハンガーにかけてシワを伸ばすように、革靴もシューキーパーを使って、そのシワを伸ばしてやる必要があります。
シューキーパーを使わずに革靴を保管しておくと、靴の形がだんだん崩れて、靴の底が反り返ってきます。
そして、靴の底が反り返ってくると、履きジワはさらに深くなり、表面のヒビ割れを起こしてしまいます。
一度、ヒビ割れを起こしてしまうと、修復不可能ですので、そうさせないために、靴の形をキレイに保つシューキーパーを使う必要があるのです。
シューキーパーには、プラスチック製と木製のシューキーパーがありますが、木製のシューキーパーを選ぶようにしましょう。
なぜなら、プレスチック製のシューキーパーでは靴の湿気を取ることが出来ません。
しかし、木製のシューキーパーには、湿気が吸収する効果があるからです。
人が一日、靴を履くと、コップ1杯(200cc)の汗を足にかき、その水分が革靴の中に染み込んでいます。
革靴に水分を含んだままにしておくことは、これもヒビ割れの原因となってしまいますので、湿気を取り除くことが必要になるのです。
革靴は水分を含んだまま放置していると、本来とは違った形で革が固まろうとします。
このとき、靴の表面や靴裏にヒビ割れができてしまいます。
また、水分を含むことは、色落ちの心配もありますので、色落ちしやすい青や緑色の革靴なら、水分を吸収させるためにも、必ず木製のシューキーパーを使うようにしましょう。
靴の寿命を伸ばすブラッシング
ブラッシングもシューキーパー同様、靴を脱いだら必ず習慣化させたい行為ですね。
ブラッシングを毎日欠かさず行うだけも、靴の美しさがまったく違います。
革靴の手入れにおいて、ブラッシングの出来が靴の見た目を決めるといっても決して大げさな表現ではありません。
革靴本来の輝きを蘇らせることができるのは、他でもない、ブラッシングだけだからです。
革靴を履いたあとには、パッと見では汚れていないように見えても、細かいホコリや汚れがたくさんついています。
ブラッシングで、そのホコリや汚れを取り除いてやることが必要になるのです。
この時、使いたいのが馬毛を使ったブラシ。
馬毛のブラシは、毛先がやわらく、しなやかなため、ホコリや小さな汚れを取るのが得意だからです。
また、革靴の表面は一見、ツルツルに見えますが、革靴の表面は、実は、毛羽立っている状態です。
その毛羽立っている革の表面をブラッシングすることによって、毛羽立ちを抑え、寝かせることで、革靴にツヤが蘇るのです。
毛羽立った革を寝かせることができるのが、ブラッシングだけなのです。
さらには、ブラッシングには、革の奥に眠っている油分を呼び起こす効果もあります。
人間もブラッシングで髪の毛をとかすと、頭皮を活性化させる効果があるのと同じ原理ですね。
ブラッシングによって奥底で眠っている油分を表面に呼び起こすことで、革本来の生き生きとした状態に戻すことができるのです。
布を使って、から拭きでツヤを出す
ブラッシングが終わったら、本格的に靴を磨いていきます。
リムーバーとよばれる汚れ落としで革靴についたクリームなどをまずは、落とすという方法もありますが、ブラッシングとこの乾拭きさせキチンと出来ていれば、リムーバーを使う必要はありません。
リムーバーが必要なほど、古いクリームが残っているなら、それは、クリームを付けすぎている証拠。
この後の工程でもある革靴を磨く際に使うクリームの量を減らせばいいだけです。
から拭きに使う布は、コットンがおすすめなので、着なくなったTシャツを磨きやすい大きさにカットして使いましょう。
から拭きも、できれば毎日やるのがいいですが、2~3日に一回は、行いたいものですね。
靴クリームを使ってツヤをアップ
ブラッシングとから拭きは、人間の顔でいうと、メイクを落とし、素肌をキレイに整える工程です。
その後、人間なら、お肌のお手入れとして化粧水や乳液をつけますが、靴クリームは靴において、それらと同じような効果が期待できるものです。
とはいっても、靴クリームには、よく言われる栄養が入っているわけではありません。
革靴に必要なのは、質の良い油分と表面を保護するロウ分。
その油分とロウ分を補給するために、靴クリームを使用するのです。
メーカーによって、配合の割合は違いますが、靴クリームの主成分は、「水」とこの「油」そして、「ロウ」。
ここで注目していただきたいのが、靴クリームには「水分」も含まれているということです。
革靴に水分が多すぎると、硬化の原因になることはお伝えいたしましたが、水分が含まれている以上、靴クリームの塗りすぎも、あまりよろしくはありません。
また、靴クリームを付けすぎてしまうと、余分な油分やロウ分が革靴の表面についてしまいますので、通気性が悪くなってしまいます。
靴クリームの適切な分量は、米粒で2粒程度。
これを歯ブラシのような小さなブラシを使って、ムラなく均等に塗っていきます。
使い勝手がいい靴クリームを塗る専用ブラシも発売されていますので、ぜひ、お試しください。
靴クリームには補色効果もありますので、手持ちの靴の色と合わせた靴クリームの色を選ぶようにしたいですね。
最後にもう一度、豚毛ブラシでブラッシング、そして、からぶきへ
靴クリームを塗り終えたら、もう一度、ブラシを使ってブラッシングしましょう。
靴クリームを塗ったあと、ブラッシングすることで、靴クリームを靴にまんべんなく行き渡らせることができ、余分なクリームを取り除くことができるからです。
ホコリや汚れを落とすためには、馬毛のブラシをおすすめしましたが、この段階では、豚毛ブラシを使うことをおすすめします。
というのも、余分な靴クリームを掃き落とすためにはある程度、ブラシにパワーが必要になります。
その点、豚毛ブラシは毛が硬くコシがあるので、靴クリームを塗ったあとの最後の仕上げには最適なのです。
全体的にブラッシングし終わったら、この時点でもある程度、ツヤが出てきているはず。
ですが、最後の仕上げとして、さらに布を使ってから拭きしましょう。
仕上げ専用の布があればいいのですが、靴クリームを塗ったとき同様、Tシャツをカットしたコットンの布で十分です。
仕上げのからぶきするときは、布を細かく動かすことを意識しましょう。
こうすることで、余分なクリームを取り除くとともにツヤが出てくるはずです。
あまり力を入れすぎず、ツヤを出すことに意識を向けてみてください。
靴と靴底の間にある溝や背面も忘れずにしっかり磨き上げましょう。
もっと輝きが欲しいなら鏡面磨きという方法も
さきほどまでの工程で、十分、革靴にはツヤが出ているはずですが、さらに光沢を出したい方は、ワックスを使うという方法があります。
ワックスの使い方は、簡単で、ただただ布にワックスを取って磨いていくだけです。
このとき、人差し指と中指、または人差し指1本に布を巻きつけて、ワックスを塗っていくと力が入りやすくて塗りやすくなります。
ワックスもはじめから大量に布に取って塗るのではなく、コマメに少量を塗っていきましょう。
ワックスを使って靴を磨く際、水を1滴垂らして磨くことにより、さらに光沢が出る鏡面磨きというテクニックがあります。
光沢が足りないと思うかたはチャレンジしてみてください。
水のほかにも、ウイスキーやジンといった蒸留酒を1滴使うことで、さらに光沢を強める方法もあります。
ただ、ビジネスシーンにおいて、スーツと合わせたとき、ワックスや鏡面磨きを使ってまで光沢のある靴は少し違和感がありますね。
パーティーに履いていく靴など、TPOに合わせた光沢が重要です。
また、光沢だけではなく、靴クリームにワックスを塗るということは、相当な厚化粧をしているのと同じ。
必要以上にワックスを塗ることは、靴の健康を害することにもつながるということを覚えておいてください。
靴の寿命を伸ばすことと、光沢を出すことは決してイコールではないのです。
おすすめのシューケアブランド
ここまで革靴の手入れ方法と、順を追って、手入れに必要な道具を紹介してきました。
靴の手入れで必要になるのは、
・靴の型崩れを防ぐ木製のシューキーパー
・ブラッシングには欠かせない馬毛ブラシと豚毛ブラシ
・靴のツヤを際立たせる靴クリーム
・ブラッシングには欠かせない馬毛ブラシと豚毛ブラシ
・靴のツヤを際立たせる靴クリーム
でした。
では、それぞれの道具でおすすめのブランドをご紹介していきます。
名門シューズブランドからも信頼されるDASCOのシューツリー
ダスコはチャーチ、ジョン・ロブ、クロケット&ジョーンズにエドワード・グリーンといった錚々たるシューズブランドの純正シューツリーを供給していることからも、その製品クオリティーの高さが証明されるブランドです。
ハンドメイドを多用し、高級靴特有の立体的なフォルムにもバッチリフィットするシューツリー作りには定評があります。
Collonil独自のアロマティックシダー
コロニルは、1909年創業のドイツに本拠地を置く老舗のシューケアブランド。
コロニルのシューキーパーの特徴は、吸湿性に優れたシダー(杉)を素材に使っていることです。
シダーを使用することで、長時間履いた靴の水分を吸収することはもちろん、防臭効果もあり、独特の芳香が靴の中に包まれます。
湿気だけではなく、足のニオイが気になる…。
という方は、コロニルのシューキーパーを使ってみてはいかがでしょうか?
平野ブラシ&M.MOWBREY ダブルネームのシューブラシ
老舗ブラシブランドの平野ブラシとシューケア用品の雄であるM.MOWBREYがコラボレーションしたブラシをおすすめいたします。
馬毛と豚毛どちらも発売されていますが、特筆すべきは馬毛のやわらかさ。
ブラシの毛先は馬毛の本場中国・重慶より特別に取り寄せられ、1本1本平野ブラシの職人によって植えられた最高級ブラシです。
持ち手もゆるやかなアールを描いており、ブラッシング時に力が入りやすいデザインで、長年使用してもヘタらない日本の職人魂がつまった逸品です。
仕上げ用の豚毛ブラシも販売されていますので、そちらも併せてぜひ。
職人のこだわりが詰まった江戸屋のブラシ
江戸屋のブラシも平野ブラシと同じく機械植えではなく、職人の手によって毛が植えられているブラシです。
手植えの良いところは、機械植えよりもたくさんの毛を植えることができるので、毛がたくさん詰まったブラシが作れることです。
毛がたくさんあるということは、一度のブラッシングで落とせるホコリや汚れが多くなり、ブラッシングの効率が良くなります。
また、機械植えよりも頑丈になりますので、長持ちし、一生モノのブラシといっても差しさわりありません。
ただ、江戸屋のブラシは、職人の減少により、一定の生産量が確保できないため、販売中止と再販を繰り返しています。
時期によっては、手に入らない可能性がありますので、気になる方は、コチラ(江戸屋オンラインショップへのリンク先URL:http://www.nihonbashi-edoya.com/shop/item_list?category_id=183343)
から販売されているうちにぜひ、手にしておいてください。
靴の本場ヨーロッパの伝統を守るM.MOWBRAYの靴クリーム
エム・モウブレイはプロの靴磨き職人や高級シューブランドからも絶大な支持を集めるイタリアの総合シューケア用品ブランドです。
靴文化の本場ヨーロッパの伝統を守りつつ、職人気質のハンドメイド製法にこだわり、その製法と伝統を現在まで受け継いでいる数少ないシューケアブランドです。
エム・モウブレイの靴クリームの特徴は、
・塗りやすいクリームの伸びの良さ
・靴に染み込みやすい浸透力の高さ
・絶妙に配合されたロウによる見事な光沢
・表面のなめらかさ
・靴に染み込みやすい浸透力の高さ
・絶妙に配合されたロウによる見事な光沢
・表面のなめらかさ
が挙げられます。
メイドインジャパンの製品力の高さが自慢のコロンブス
大正8年創業のメイドインジャパンブランド。
その製品力の高さは日本だけではなく、靴の本場ヨーロッパでも実証済。
その秘密は、靴クリームは一度凍ってしまうと、ワックスと油が分離してしまい使い物にならないのですが、コロンブスの靴クリームは、10年以上の歳月をかけ、この問題を解消。
氷点下以下で凍っても分離しない靴クリームなのです。
これが氷点下になることも多い気候のヨーロッパで人気の秘密です。
また、コロンブスの靴クリームで特筆すべきは、その浸透力の高さ。
靴に塗ると、クリームが靴の上で伸びるというより、靴の中に吸い込まれていくという感覚。
日本の気候や使用環境も考慮に入れた商品なので、日本人好みの靴クリームです。
まとめ
ビジネスマンにとって、商売道具となる革靴。
足元の靴は相手に値踏みされ、自分という人間の価値を常に図られるバロメーターともいえます。
日米通算安打でピート・ローズ氏の記録を塗り替えたイチロー選手も商売道具であるバットを専用のケースに入れて持ち運ぶことは有名ですし、勝っても負けても試合後のロッカールームでは自分のグローブを磨くそうです。
自分の仕事道具を手入れすることは一流のプロとしての流儀といえますね。
また、靴を磨くことは、道具を大事にするという心を養われますし、靴磨きの最中は時間を忘れて無心になれ、ひとつのリフレッシュにもなります。
「腕を磨く」、「男を磨く」と人生において、成長していくためには、「磨く」という行為は欠かせません。
ぜひ、「靴を磨く」習慣がない方は、これを機にぜひ、靴の手入れをやってみましょう。