ビズビムというワイルドなブランドが日本にはあります。
日本ではあまり知られていないかもしれませんが、世界中のファッショニスタが今最も注目する、日本発のワイルド系ブランドです。
ネイティブアメリカンにインスパイアされたワイルドなデザインと、素材にこだわる本格的なモノづくりで世界各国に愛用者がいます。
実は、日本の有名百貨店のほとんどに出店していますが、visvimよりも「F.I.L」という名前を目にしたことがある人の方が多いかもしれません。
F.I.Lはビズビムが展開するショップで、現在日本各地の主要都市に出店しています。
ビズビムは元々シューズブランドで、立ち上げ当初から履きやすさとお洒落なデザインでその人気を博していました。
特にショップでしか手に入らない希少価値の高いアイテムを取り扱っていたため、裏原系の人気と相まって週末はショップに行列ができるほど。
さらに、日本のストリートファッションのカリスマと呼ばれる藤原ヒロシ氏がこのブランドのファンであったことから、エリック・クラプトンをビズビムの展示会に連れて行き、それからというものクラプトンも大のビズビムファンになったんだとか。
ワイルド系ファッションに目のないメンズなら、知っておくべきブランド「visvim」。
ここでは、ビズビムの魅力を余すことなくお伝えしますね。
ワイルド系ブランド、ビズビムって?
ビズビムは2000年にクリエイティブディレクター・中村ヒロキ氏によって設立されたブランドです。
ブランドはフットウェアから始まり、今までにない「履き続けるスニーカー」の構造を考案し、すぐに世界中の注目を集め、高い評価を得ました。
その後ウェア、アクセサリなどトータルブランドへと拡大。
しかし、ひとつのアイテムを大量生産する他のブランドとは一線を画しています。
その理由は、アイテムひとつひとつにユニークな個性があり、稀少性があるため。
素材へのこだわりが強く、例えばウェアは糸から情熱を注いで作り上げていくことからもこだわりの一端が見え隠れします。
なぜそこまで素材にこだわりを持つのでしょう。
それは20世紀の均一で大量に生産するという製法が確立されてきた中で、その製法を活かしつつ、手作りの持つぬくもりを再現させたかったからとのこと。
その考えから行き着いたのが、仕上がりを100%コントロールできない本藍染めです。
本藍染は現代の技術で作られる商品に、不均一感やムラを作り出せる方法のひとつでした。
ビズビムは自然な染め、ハンドメイドにこだわりを持ち、自分に正直であることを貫いて、本当に作りたいものを世界に向けて発信するという姿勢を持っています。
その姿勢が、音作りを追求する世界的なミュージシャン、エリック・クラプトンやジョン・メイヤー、また日本のストリートファッション界のカリスマ・藤原ヒロシなどからも愛される所以でしょう。
また、ビズビムは中村氏が様々な地へ旅して見聞きして受けたインスピレーションが、ものへと形を変化させた結晶のようなもの。
それは、中村氏がブランド15周年の伊勢丹展示会に際して、「どこに惹かれたというわけではなく、心がどう動かされたかということが重要」と述べていることとからも分かります。
ネイティブアメリカンに影響されたスニーカー、アフリカや日本の藍染を落とし込んだデニム、アイヌや沖縄、台湾など数々の民族衣装にインスパイアされたシューズやコート、ジャケットは、一点一点のディテールが異なり、思わず見ほれてしまうほど。
また、染め方ひとつを取っても、沖縄、奄美大島、岡山など様々な染色方法や糸まで研究し、ディテールに生かしています。
「モノづくりを通して“幸せ”と時を超えた“美しさ”を追求する旅を続けてきた」と自らが言っているように、ビズビムとは旅そのものなのです。
そして、シーズンごとに生み出されるコレクションは、その旅のゴールへ向かうためのひたむきな努力の痕跡。
自由自在に変化し、旅を続けるビズビムから今後も目が離せません。
ワイルド&オリジナリティ|ビズビムの靴
ビズビムの靴はどれも個性があります。
全てを「靴」とくくってご紹介するには、ひとつひとつの哲学があまりにも深いので、カテゴリーに分けてご紹介しますね。
ネイティブインディアンからインスパイアされたモカシン
モカシンは元々ネイティブアメリカンが履いていた伝統的な靴のこと。
デザインは地域や部族によって異なるものの、基本的な構造は同じで、ブレインタンニングされた一枚の鹿革でアッパーとアウトソールが巻かれ、甲の周りと踵の裏にステッチされているのが特徴です。
伝統的なモカシンは、足をすっぽりと包み込み、機能性も抜群で可愛らしさのあるもの。
しかし、そのまま再現させるには、彼らの時代と現代のライフスタイルや住居環境があまりにも異なるため、ビズビムでは様々な研究を重ねてきました。
その結果、現代の舗装道路でも歩きやすく、なおかつ長く歩き続けられるようなソール、通常の革の鞣し(なめし)より通気性がよく柔らかな、ベジタブルタンニングを採用したスエードなどで、現代のスタイルに合った新しいモカシンを作り上げることに成功しました。
とても個性的なモカシンですよね。
化学薬品を使わずに鞣してある革は、自然な植物の日焼けによって時間の経過とともに足にフィットしてくるんだそう。
一度履いたら手放せなくなりそうです。
サイドからでたフリンジがアクセントになっているモカシンです。
モカシンはネイティブアメリカンが部族ごとに異なるデザインを持っていたシューズ。
このフリンジは装飾目的の他に、地面を擦って足跡を残す役割があったと言います。
また、フリンジが通っているフラップは、寒い時には足首に上げることで寒さをしのいだそう。
ネイティブアメリカンの力強さを残しつつ、現代のスタイルに合うようにフリンジは取り外し可能です。
グッドイヤーウェルト製法で作るブーツ
グッドイヤーウェルト製法とは、19世紀後半にチャールズ・グッドイヤー・ジュニアによって開発された靴の製法のこと。
それまでの全ての工程が手縫いで行われていた製法を元に、機械と分業することによって、品質を保ちながら生産する方法です。
この方法は、接着剤の量を最小限に抑え、耐久性と安定感に非常に優れ、長時間の着用でも足が疲れることがなく、優れた吸収特性を備えています。
グッドイヤーウェルト製法は経験豊富な職人の技が必要なのですが、最近ではコスト削減に伴い大量の接着剤を使用して生産される靴が増加しているとのこと。
それに伴い、この製法で靴を作る技術を持つ職人も減少し続けています。
しかし、ビズビムでは快適に長く使える、履いていて幸せになる靴づくりを追求し、この製法を取り入れています。
足を保護するための硬いアッパー、足裏に体重がかかるごとに足の形状に馴染んでいく天然コルク。
はき心地の良いブーツは、自然と出番も増え、ソールも擦り減っていきますが、それも考慮に入れた上で、ソールが張替えを比較的簡単に行えるような仕様になっているとのこと。
長く快適に使えるための配慮はものに対する「良いものを長く使う」という哲学の表れ。
ゴムのソールは舗装道路になくてはならないもの。
現代のライフスタイルの中で快適に過ごせるよう、考えつくされたブーツです。
サイドを何重にもぐるりと囲むステッチも、他には見ることのできない凝ったディテール。
機能性だけでなく、タウンのお洒落アイテムとしても欲しくなる一足です。
古き良き日本を漂わせるビズビムのアウター
ビズビムにはアイヌや沖縄など日本のどこかの民族衣装や着物を彷彿とさせるアウターのコレクションがあります。
ボタンではなく紐で左右を合わせる着物は日本独特のもの。
着物はたくさん空気を含んで冬は暖かく、夏は空気の通り道を作ることによって涼しく快適に過ごせるというメリットもある機能性に富んだ衣服です。
日本の民族衣装である着物にインスパイアされたアウターは、中村氏の大切にする「自分がどのような捉え方や考え方を選択するか」という哲学を反映しています。
このアウター、名前が「三十郎着物ダウン」。
三十郎とは、椿三十郎のことで、この名を冠したアウターは、他にコートやジャケットなどがあります。
半纏のような懐かしい着物フォルムが新しいですよね。
使われているのは古布やヴィンテージのバンダナやブランケットなどで、全て1点1点色合いや柄が異なるそう。
こちらは「NORAGI」と名付けられたアウター。
デニムはご存知の通り、元々は作業服。
糸を頑丈にするために藍染にし、ワードローブとして古くから愛用されてきました。
生活の中で使用されてきた衣服を、現代版にアレンジし、着心地がよく丈夫でお洒落な一着にモチーフを落とし込んでいます。
ビズビムのヴィンテージデニム
ビズビムはヴィンテージデニムも数多く取り入れていますが、その発端は中村氏が14,5歳の時原宿のヴィンテージショップで出会った1本のジーンズ。
大量生産のジーンズと違い、丈夫でぬくもりのあるヴィンテージジーンズに惹きつけられ、彼のジーンズへの旅が始まります。
ジーンズは綿100%のあや織りで、染色された縦糸と、白い横糸で織られるという他にはないユニークな構造を持ち、コントラストの強い色落ちと縦方向の不揃いな表情があります。
元来ワークウェアに用いられたジーンズは決して高価なものではなく、不均一な糸で作られていました。
そのため仕上がりは無骨ででこぼこがありましたが味のあるジーンズにもなりました。
それが図らずも、1点1点ユニークなデニムが作られるという効果に繋がったのですね。
現代のような均一な糸では決して再現されなかったのです。
また、現在のデニムはインディゴ(藍)染めですが、インディゴ染めは日本や東南アジアではアメリカでジーンズが誕生する前からの長い伝統があり、歴史ある染色方法。
中村氏は日本や東南アジアのヴィンテージサンプルを訪ね歩き、現代の技術と染色方法を生かして、昔と同じぬくもりのあるモノづくりを模索しました。
キーワードは旅とアジアンテイスト
ビズビムのコレクションは、アメリカンテイストなワイルドさを持つ反面、新しいのにどこか懐かしい感じがします。
それは、ビズビムの創立者である中村氏が、世界の布や染めのルーツを探す旅をして得たエッセンスが、ブランドに多く取り入れられているから。
特に染色に関しては沖縄の紅型(びんがた)や奄美大島の泥染め、岡山の枷染めなど日本古来の伝統の染色方法も研究し、多く用いています。
心を動かされた技法や天然素材など、世界各国や日本の旅の途中で出会ったものにインスピレーションを感じ、デザインプロセスの一部として色や形のようなディテールを掘り下げていくとのこと。
そうして出来上がったビズビムのアイテムは、各シーズンのコレクションとして世に送り出されます。
また、中村氏が多く影響を受けた写真家として、エドワード・カーティスを挙げています。
エドワード・カーティスはアメリカの写真家で、民俗学者でもありました。
彼は1900年から実に30年にわたってアメリカ西部のネイティブアメリカンを撮り続け、その美しさや力強さ、プライド、繊細さを見事に表現し、「The North American Indian」全20巻を残しました。
奇しくも1987年に、フロリダの湿原で発見された7000年前のミイラが持つDNAの配列から、日本人と同じルーツを持つことが明らかになったネイティブアメリカン。
自然信仰やその死生観など、共通するものが多い日本人とネイティブアメリカンに中村氏が行き着いたのも、偶然ではないのかもしれませんね。
中村氏自身もエドワード・カーティスを真似て、古い技法で自分のポートレートを撮ることを試みています。
どこに行けば手に入る?
ビズビムは現在渋谷を始め、直営店のF.I.L(エフアイエル)が6店舗、日本全国に取扱店がある他、オーストラリア、カナダ、デンマーク、イタリア、アメリカ、フランスなど世界20カ国に展開しています。
渋谷区表参道ビズビムに併設されたコーヒーショップでは、中村氏が何度も繰り返し調合を重ねた、複数の中名産の豆をブレンドしたオリジナルのローストコーヒーを楽しめます。
機能に基づいて作られた、オリジナルの九谷焼ドリッパーで淹れたとびきりのコーヒーをどうぞ。
また、F.I.L(エフアイエル)はブランドが大切にする素材やパターンの研究を行うラボラトリー「Flee International Laboratory」という意味が込められています。
【visvim / little cloud coffee】
東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 2F
03-5468-5424
03-5468-5424
【F.I.L TOKYO】
東京都渋谷区神宮前5-9-17-B1
03-5725-9568
03-5725-9568
【F.I.L SENDAI】
宮城県仙台市青葉区中央2-10-10
022-217-7224
022-217-7224
【F.I.L KANAZAWA】
石川県金沢市堅町102
076-222-1625
石川県金沢市堅町102
076-222-1625
【F.I.L HIROSHIMA】
広島県広島市中区袋町8-8-1F
082-545-3822
082-545-3822
【F.I.L KYOTO】
京都府京都市中京区下大阪町342
075-253-0857
075-253-0857
【F.I.L NAGOYA】
愛知県名古屋市中区栄3-35-19
052-238-0833
052-238-0833
【オンラインショップ】
https://shop.visvim.tv/jp
https://shop.visvim.tv/jp
ビズビムまとめ
ネイティブアメリカンや東南アジアの民族衣装にインスパイアされた、個性的なアイテムを数多く世に送り出し、世界中から評価の高いビズビム。
ワイルドさと繊細さを併せ持つユニークなアイテムの数々は、ヴィンテージ素材や天然の染色技術を用いることから稀少性が高く、ファンを魅了してやみません。
本当に作りたいものだけを作る、幸せになるモノづくりという姿勢と哲学が、同じクリエーターとして、世界的にも有名なエリック・クラプトンやジョン・メイヤーをも虜にしている理由でしょう。
ワイルドなビズビムの靴は、アメリカのネイティブインディアンからインスパイアされたものです。
彼らの実用的で見栄えも良い伝統的な靴を、現代のライフスタイルにマッチするように細かなディテールを考え、機能性は生かしながらも都会でも着用でき、長く使用できるモカシンというアイテムを生み出しました。
また、接着剤を多く使わないことで自分の体重で足の形状になっていく、コルクを用いたグッドイヤーウェルト製法を取り入れ、職人の手作業と機械化を分業させながら、ソールも簡単に張り替えられ長く使えるブーツを作っています。
ビズビムのアウターを見てみると、どこか懐かしい感じがするのは、日本の民族衣装である「着物」のテイストを取り入れているからです。
椿三十郎の名を冠したダウンや、ワードローブとしての着物「野良着」をモチーフにしたものなど、オリジナリティ豊かでユニークなアウターは、一度見たら忘れられません。
また、中村氏が十代の頃から追求し始めたヴィンテージデニムは、糸からこだわり、染色も日本の各地方に伝わる様々な手法を取り入れています。
しかも、ただ取り入れるだけでなく、独自で研究し、素材にぶつけることで今までにないようなアイテムが誕生するのです。
中村氏の原点は「旅」。
これからも、旅の途中で心を動かされた様々なものからインスピレーションを得て、形にし、私たちを楽しませてくれるでしょう。