2020年2月18日

フルオーダーをまとう。その背中はダンディズムを語る。

次はいよいよフルオーダーですね、と知り合いの社長に言われ、フルオーダーに興味を持ちはじめて3ヶ月。

インターネットや雑誌で調べてみるものの、ブランドと違って特集が組まれるわけでもなく、圧倒的に情報が不足していると感じる。

そんなビジネスパーソンに向けて、私のフルオーダー体験を順次お伝えしようと考え、この場を借りて生地を書いていこうと思いました。

フルオーダーを仕立てるお役に立てば、幸いです。

なお、話は私の体験談ではありますが、フルオーダーのサルトリア名(以下サルトとしますね)は伏せております。なぜならば、誰にでもオーダーできるようなものでもないですし、最初のサルト選びはある方法を試してほしいと思うからです。

その方法は、本記事で紹介しています。

では、ご覧ください。

フルオーダーの選び方

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エルメネジルド・ゼニアやダンヒル、ヒューゴ・ボスなどの既製スーツやジャケット、パターンオーダーを試し、さらにステージを上げていこうとするビジネスパーソンの場合、選択肢として浮かび上がってくるのが、「フルオーダー」、イギリスのサヴィル・ロウでいうところのビスポーク(イタリアではス・ミズーラと呼ぶ方もおりますが、その定義は様々のようです)になるかと思います。

お店によりフルオーダーの意味は異なることもあるかと思いますので、仕立てを考えているサルトに確認することをオススメしますが、基本は仮縫いありのフルオーダーで、仕立てる期間は半年から1年ほどになります。

型紙についてはあるところもあればないところもあります。例えば私が仕立てているナポリのサルトの場合、フィッターが採寸した数字をもとに、ジャケットの職人が経験から感覚的に仮縫いしていきます。

直感というよりは、経験則です。この数字の持ち主だったら、そういうライン、カーブを描くと美しく引き立つのか、彼らは知っているからです。

もちろん、コレはサルトのスタイルによって様々で、ジャケットやコートは型紙をつくらず、仮縫い時にはチョークで直接生地にマークを書き込んでいきますが、シャツの場合は型紙をつくります。

型紙の利点は、二度目のオーダー時に仮縫いを省けること、すなわち、納期を早めることができることですが、型紙なしの場合は当然、毎回仮縫いをすることになります。

しかし、もともとフルオーダーで仕立てる場合、納期の早さを求めることは無粋といえるかもしれません。なぜならばフルオーダーの醍醐味は、生地や形を選ぶ悩み、そして仕上がりを待つ時間、サルトとのコミュニケーションを楽しむものだからです。

それぞれの流儀を知り、楽しむ。選ばれた男だけの、特権です。

もちろん、仕立てる価格は、ヴィンテージ生地を扱う場合であってもそうでない場合でも、それなりにはしますから、誰にでも手が出るものではありません。

とはいっても、エルメネジルド・ゼニアのスーツを購入する場合、大体60万円程度はしますから、これを購入しようとしている人にとっては、フルオーダーのほうがリーズナブルに感じるかもしれません。

では、フルオーダーを仕立てる場合、どのように仕立てるサルトを選べばいいのでしょう。

インターネットを調べてみてもそれほど情報がなく、雑誌を見ても同じです(必ず紹介されていますが、他の情報と比べると圧倒的に数は少ないです)。

時折フルオーダーの特集が組まれる際、受注会の情報が出てくる程度かもしれません。

MEN’S EXのような雑誌を読み、受注会の情報が入ったら一度行ってみることが、選ぶために必要な行動のひとつといえます。

しかしそれ以上におすすめの方法は、すでにフルオーダーのサルトと懇意にしている知り合いに紹介してもらうことです。

おそらく今これを読んでいる方であれば、そのような知り合いが1人か2人はいるのではと考えています。

フルオーダーの場合、採寸をするフィッター自身が各国の首脳クラスであることもありまして、実際私がスーツを3ピースで2着、シャツを2枚、そして現在コートの仮縫いを待っているフィッターは、かつてイタリアの首相だった方や中央アジアの大統領を顧客に持っているそうです(まさかと思いましたが、彼と一緒に食事をし、クラブに通っていると、その佇まいからありえるな、と感じるようになりました)。

初対面の場合、受注会に参加すること自体ハードルが高いことも考えられますから(実際には予約が取れれば大丈夫かと思います)、まずは知り合いでフルオーダーを愛用している人を探し、紹介してもらう。

いないようであれば、異業種交流会などに参加して目を引くスーツを着ている人物に話しかけてみる。

ここからはじめてみると、いいかもしれませんね。紹介がお互いの潤滑油になり、共通の知り合いが話しを弾ませてくれますし、何より信頼関係をつくるには、コレが一番だからです。

京都などの一見さんお断り、に似ていますね。信頼できるお客さんをとるための方法。なるほどな、と思います。

フルオーダーとは

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サルト、イギリスならテーラーにより定義は異なりますが、私が仕立てをお願いしているサルトによると、仮縫いあり、または中縫いまでありのフルオーダーを指しています。

ナポリのサルトは仮縫いありで型紙なし。ミラノのサルトは仮縫い後に中縫いがあり、型紙は・・・ど忘れしてしまいました・・・。

予約制の受注会、またはトランクショーという名のオーダー会に参加し、サルトと対話。そして生地選びや着用シーンのヒアリング、そして与えたい印象などを確認した後に、スーツの基本的な型を決めていきます。

個人的に笑ってしまったのは、「本切羽でお願いします」と聞いてしまったときでして、フルオーダーにおいては本切羽が標準で、それ以外はオプションのようなものだと(人によりけりかと思います)。スーツの直しが必要になった場合、本切羽ではないほうが直しの幅を大きくできるそうで、リーズナブルさを求めるのであれば、本切羽ではないほうがいいのかもしれません。いずれにせよ、本切羽が標準と聞いています。

裏地やボタンを特殊なものにしない限り、パターンオーダーやイージーオーダーでいうところのオプションには「オプション価格」が存在しておらず、すべてサルトとの対話からつくりあげていきます。

ですからオプションを増やしたからいくら追加、というよりは、生地の価格と使う生地の長さ、職人技術の価格を合わせたものがオーダースーツの価格といえるでしょう。

参考までに、これまで仕立てたスーツの場合、どちらもヴィンテージの生地を選び、3ピースで60万円でした。仮縫い待ちのコートはヴィンテージではなく「HOLLAND & SHERRY」の生地バンチからの選択で70万円です。先日の受注会でオーダーしたモヘアのスーツは、ヴィンテージで50万円。

生地の違いによる価格はあるものの、基本的な価格は変わらないと感じました。

フルオーダーの受注会(トランクショー)

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イタリアでは店舗を構えるサルトであっても、私が日本で仕立てをお願いしているサルトは、日本においては受注会やトランクショーという名称で、年に4回程度の仕立てる機会を提供しています。

会場は恵比寿のサービスアパートメントや大阪のホテル。予約時間は1人ごとに確保していますから、他のお客さんとかぶることはありません(知り合いと行く場合は例外になります)。

1対1での対話になりますので、採寸担当であるフィッターとの距離感は近く、雑談から仕事の話など、友人と話しているかのような雰囲気です。

ナポリのサルトはイタリアからモッツアレラチーズや生ハムを持参で受注会を開催し、受注会の合間に振る舞ってくれることもあります(オリーブやチーズがこんなに美味しいと知ったのは、受注会ででした)。

路面店や店舗を構えるサルトと異なり、ある意味秘密の部屋で行われるのが受注会ですから、著名人などが利用しやすいのだろうな、という雰囲気を感じます。

シャツ一枚でも6万円程度からオーダーできるので、一度試しに予約して受注会に参加してみると、イメージがつきやすくなりそうですね。

特にヴィンテージの生地は、一着仕立てたらもう同じ生地はないようなものもありますので、まさに唯一無二のものです。

知り合いの経営者から、「オーダーは、『悩む楽しみ』があります」と話していましたが、1年経つとその言葉の意味がわかるようになってきました。

通常の生地バンチであっても、次回も生産されているとは限りませんし、ヴィンテージ生地はその場にあるものが最後の一本です。

ベスト付きでお願いできますか、と聞くとその生地を手に取り長さを測ってくれるのですが、長さによってはベストが仕立てられない場合もあります。本当に、最後の一本なんだ・・・とどんなに希少品でも希少品ですから、探せば手に入る時代において、しかしこのヴィンテージは手に入らない、という事実が、愛着を増し、離れ難くする。もしかしたら他にいい生地と出合えるかもしれない、しかしこの一本とはここでお別れかもしれない。まさに、悩む楽しみです。

ヴィンテージ生地はサルトによっては次の受注会までに、お客さんの好みのものを探してきてくれる場合もあります。全て、対話から。

この自分のために探してきてくれる、というのも、フルオーダー受注会の醍醐味だと感じています。

フルオーダーの価格は

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私の経験で恐縮ですが、3ピースでヴィンテージ生地の場合、60万円でした。生地によっては、またベスト(ジレ)をつくらない場合は利用する生地の量が減りますので、50万円からのオーダーも可能でした。

これまでに3本のスーツを3ピースか2ピースでオーダーしてきましたが、どれもヴィンテージ生地のため、バンチから選んだ場合の価格はわかりません。

コートの場合、使用する生地の量が多いせいもあると思いますが70万円でオーダーしました。これはヴィンテージ生地ではありません。

また別の記事で紹介したいと思いますが、個人的に驚いたのはシューズ。

イタリアの警察を顧客に持つそのシューズ職人は、かつてローマで名店と誉れ高かったお店も認める腕のようでして、彼がつくる靴は博物館で展示されてもおかしくないとか。

こげ茶色の内羽根でやや装飾の入ったストレートチップをオーダーしたところ、これが48万円でした。革はフレンチカーフ。

その後、現在仮縫い待ちの一足、コードヴァンでオーダーしたシューズもあるのですが、こちらは60万円。ヴィンテージのコードヴァンであることから、10万円ほど価格が上がった、というところでしょうか。

インターネットで探しても、オーダースーツは70万円や80万円からという表記を見ましたから、大体このあたりが基本的な相場なのかもしれません。

こう考えると、仕立てが良い分、ゼニアなどのお店で買うよりはリーズナブルだと感じる人もいるのはうなずけます。

ブランドが好きな場合はゼニアで買ったほうが満足度が高いでしょうが、フルオーダーでもゼニアの生地やゼニアのヴィンテージ生地で仕立てることができますので、

「いいもの」を望む本物志向の方、ゆとりのある方には、フルオーダーがおすすめです。

まとめ

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フルオーダーとして私が体験しているのは、ナポリのサルトとミラノのサルトです。

同じイタリアでも仮縫いのみの場合と中縫いもある場合、納期も半年から1年と違いがあります。もちろん、仮縫いに何らかの事情があって参加できなかった場合は、次の受注会まで仮縫いの確認は延期になりますから、その分納期は長くなります。

また、今回の受注会を手配したエージェントによると、年に1回の受注会というサルトもあるとのことですので、その場合は納期が2年からになります。

ですからフルオーダーとはまさにサルトとのコミュニケーションにより仕立て上げていくものであって、時間も価格も比べようがない、というのがフルオーダーを1年間経験してみた感想です。

もし時間や価格により文字通りのリーズナブルさを求めるのであれば、パターンオーダーや既製服を求めたほうがいいかと思いますが、

コミュニケーションから「唯一のもの」を、「唯一にふさわしい技術」でつくってもらいたい、そういうものこそまとう価値がある、そう考えられる方であれば、フルオーダーがおすすめです。

世界的な著名人を顧客に持つサルトもありますから、雑談から視野が広がることもあるでしょう。

ビジネスパーソンにおいて人脈が財産であることは言うまでもないですが、よりよく仕事も人生もしていくためには自分よりもやや上のステージにいる方々との時間が大切になります。

そのステージの人たちが何を身にまとっているのか。

それがもしフルオーダーだとしたら、人生において価値のある選択になるはずです。

この記事が、お役に立てば、幸いです。

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