今回の記事を書いている時、まだお目当てのカバンは手にしていないのですが・・・なぜフルオーダースーツをまとっているときには小物にもこだわりたいと思ったのか、そのエピソードを紹介します。
おそらく、私と同じ体験をした人もいるはずです。
スーツにカバンが合っていませんね
仕事の関係で、ある日ジャケットとパンツのスタイル、通称ジャケパンですね、基本的にジャケットを羽織って外出することが増え、パッチポケットで割と派手な色合いのジャケットを着ていましたから、それに合わせて革のトートバッグも購入し、仕事道具一式をそのカバンに整理して、外出していました。
ベージュのジャケットにコーヒーにクリームがかったような色のベスト、またチェックのネイビージャケットとベスト、またエルメネジルド・ゼニアのクールエフェクト素材である迷彩柄を着まわしていましたから、パンツはホワイトかネイビーのデニム。シャツはブルックスブラザーズのボタンダウン、という格好です。
いわゆるキレイ目なカジュアルスタイルでしたから、同じくカジュアルなトートバッグは相性がよく、街を歩くと女性の視線を浴びることも普通となりました。銀行に行くと、ラフな格好で行くよりも対応が目に見えてよく、エレベーターに乗っている時に行員から「そのジャケット、スーツではないんですね。とても格好いいです」と言われてしまうほど。銀行でこんなこと言われるとは想像もしていなかったので、服装のもたらす効果に驚いたものです。
ジャケットとパンツ、シャツ、そしてカバン。これらの相性が良かったのだと思います。お互いを引き立て合うというか。
しかし、ナポリのフルオーダーで仕立てたスーツを着るようになってからは、手元のカバンが浮いてしまうようになりました。
そのスーツはクラシコスタイルとでもいうべき見栄えでしたから、カジュアルなカバンはもちろん、ビジネスバッグもなかなか似合わなかったように思います。ヴィンテージの重厚感に、カバンが追いつかない、そんな印象です。
ジャケパンスタイルのときはあれほどフィットしたのに、ナポリ仕立てのスーツをまとったらカバンが浮く。
コレはどうしたものかと考えていたところ、あるバーで見かけたカバンにピンときました。
クラシックかカジュアルか
できることであればカバンは扱いやすく、どんな服装にも合うものを、と考えていましたが、よくよく考えれば装いに合わせてカバンを変えることは必要なことなのだと思います。
極端な話ですが、どんなに好きだからとはいえ、小学生用のランドセルは小学生が持つからいいのであって、大きくなってあのランドセルを持つのは、やはり合わない。
大人用のランドセルが販売されていますが、あれは大人用に再設計したランドセルであって、子ども用ではない。だから大人に似合い、子どもには似合わない。
あらゆるものにはフィットするものが存在する。そんなことを学びました。
であれば、クラシックな装いの際のカバンとカジュアルな装いの際のカバン、少なくとも2つは用意する必要がある、と考えました。やはり、何にでも合うというのは何にでも合わないと同義かもしれません。そこそこ合うものはあるでしょうが、そこそこ合うということはそれ以上に合うものがある、ということでしょうから。
フルオーダーはカジュアルでも品格がある
カジュアル同士ならば相性はいいものだと思っていたのですが、しかし・・・生地や仕立ての品格のようなものがあり、その品格に飲まれてしまうカバンもあることに気づきます。
となるとカジュアルではあっても、ジャケットやスーツに合わせてカバンを用意した方がいい、と考えるようになりました。
革は何を使っているのか、デザインはどうか。色遣いはジャケットにフィットしているかなどなど。最上級のものを並べたからといっても互いが引き立て合うわけではありませんが、相性はとても大切です。
フルオーダーで仕立てるなら、合わせてカバンなどの小物もコーディネートするといいかもしれません。スーツに合わせて着用するシャツやネクタイ、シューズはもちろん、カバン、腕時計、長財布、メガネをしているならメガネなどもですね。
装いとともに目に入るものをコーディネートする、という感じでしょうか。
フルオーダーに合いそうなカバンはコレ
コレは個人的な好みになるかもしれませんが、アタッシェケースならばリモワやゼロハリバートン・・・も定番でいいですが、メイドインジャパンということで日本の職人の魂が込められたエアロコンセプトを一押しします。
アルミやジェラルミンの軽やかさと重厚感が、フルオーダーの雰囲気やヴィンテージ生地の醸し出す力強さに合っているように思いますし、その技術と雰囲気たるや、メジャーリーグのチャンピオンズリーグケースとして採用されていること、また世界的な著名ブランドが提携を申し出ていることからも唯一無二のものであることがうかがえます(しかしほとんど断っているのだとか)。
革のカバンであれば、エルメスのバーキンも飴色のカバンが経年変化していくさまが素晴らしいですが、個人的にはベルルッティ。なかでも、ドゥジュールなどが合うように思います。
エアロコンセプトとベルルッティのこの雰囲気をお伝えしたく、共に公式サイトから数点、作品を紹介したいと思います。詳細は各公式サイトを参照してくださると幸いです。
エアロコンセプト Vacance(ヴァカンス)
アルミニウム合金とジェラルミン。2つの素材を用いてつくられたこのカバンはオーロラのような輝きを放つ特徴を持っています。
なぜこのような輝きを持つのかというと、幾つもの「傷」をあえてつけていったからだそうです。
職人である菅野さんの言葉を引用しましょう。
「私はもともと傷が好きなんです。傷はその人がそのモノを使った証でもあるし、歴史でもある。だから漠然とカッコいい傷があるカバンを造りたかった。『よーし、それじゃ、傷の集大成を創ってやろう』と思い立った。傷アートみたいな…。そこでいろいろ試してみた。どうやったらこの上ない美しい傷ができるんだろうと。回転させながら傷を描き、その上から均一の傷で傷を消す。その試行錯誤を何度も何度も繰り返す。結果、奥にある深い傷と新しい傷が微妙にずれているので、ある角度から見るとまるでオーロラのように見える瞬間を発見した。金型をプレスして『はい、一丁上がり〜!』というわけにはいかないね(笑)」
(引用:エアロコンセプト公式通販サイトよりhttps://aero-concept.jp/)
(引用:エアロコンセプト公式通販サイトよりhttps://aero-concept.jp/)
Berluti(ベルルッティ)DEUX JOURS(ドゥジュール)レザーブリーフケース
この革の光沢と自立するカバンの形状が、まさに紳士たる重厚感を演出してくれまして、個人的にはこのカバンを持ってフルオーダーのスーツに身をまといたいと考えています。
2005年に誕生した「ドゥジュール」は、ベルルッティメゾン初の革製品コレクションである、ウェネチアラインの誕生を意味しています。誕生から今に至り、メゾンを象徴するモデルの1つであり続けているのだとか。
カバンは2つの空間から成り立っておりまして、日常的に使用するツールやちょっとした旅行に必要なアイテムなどを収納できるほどのスペースを確保。
多くを持たずに最小限のカバンで世界を飛び回るビジネスパーソン。
そんなイメージを求める紳士にとって良いカバンかもしれませんね。
他にもこんなカラーが展開されています。参考になれば幸いです。
実はこのベルルッティのカバンと出合ったのは偶然の出来事でして、当初購入を考えていたカバンはまさにこのドゥジュールに近い雰囲気を持つ、飴色で自立式のカバンでした。
世界的に著名なブランドの革製品をつくっているイタリアの工房に直接発注するバーのオーナーがおり、彼がその昔発注してバーに置いていた、上記のような雰囲気、品質で価格はやや控えめのカバンとの出合いが、このベルルッティを知るに至った一つのキッカケでした。
現在私は、このベルルッティを購入しようか、それともバーのオーナーに独自に発注してもらうかを検討中です。価格はどちらも同じ程度になりそうですので、ベルルッティというブランドを取るか、世界で唯一といっていい希少性を取るか、非常に悩むところです。
しかしヴィンテージ生地で仕立てたフルオーダーのスーツやコートにフィットするカバンならばやはりヴィンテージというか、唯一無二のものを揃えたい、というのは紳士として当然のように思います。
うーん・・・とはいっても、このベルルッティの革の艶や光沢には惹かれます・・・。
ヴィンテージ生地をより引き立ててくれる革でつくられた自立式のカバン。ドゥジュールはもちろん、ベルルッティのカバンは見るからに重厚な雰囲気を奏でていますので、期待に応えてくれそうです。この冬に購入するカバンを、どうしようか、今は楽しみに検討しています。
まとめ
フルオーダーはスーツやジャケットそのものにもお金を必要とする、ある意味自分の子どものような存在ですが、それだけに大切に育て、一緒に成長していきたいと思うものです。
お金を必要とする分だけ、最初はどうしてもシャツやネクタイ、カバンなどには手が回らない場合もありますが、いい人にはいい人が引き寄せられるように、いいものにはやはりいいものが引き寄せられるものです。
フルオーダーを機に、自分自身の身の回りのものを見直してみるといいかもしれません。
また今回の記事を書くにあたって気づいたことですが、どちらかというと歴史を感じさせるモノのほうがフルオーダー似合いそうな気もします。
モノにはモノ同士の相性がある。品格の相性。人もまた、同じですね。