機能性に優れたトレンチコートといえばグレンフェル。
トレンチというとバーバリーやアクアスキュータムが有名ですが、実はそのビッグ2と並ぶと評されるも、日本ではあまり知名度の高くないブランドに「グレンフェル」があります。
日本での知名度は高くないですが、機能性を求めるならこのブランドが一番、と太鼓判を押すファッション通もいるほど。
トレンチは「できる男の着るコート」というイメージがあります。
それは、スタイリッシュな外見だけでなく、機能的に優れているからでしょう。
機能性にもっとも優れたトレンチコートを購入するなら、グレンフェルを外しては損しますよ。
なぜグレンフェルのトレンチコートは機能性で一番なのか
グレンフェルのトレンチコートはなぜ機能が充実しているのか・・・それは、探検家の命を守るために作られたコートだからです。
トレンチコートが軍用の防寒着として開発されたことはご存知だと思いますが、グランフェルのコートは特に軍に提供していたわけではありません。
しかし、軍用の防寒と匹敵するかそれ以上に過酷な環境で長期を過ごす探検家の命を守るため、研究に研究が重ねられて作られたのが、このコートなのです。
ではその詳細について、ご説明して行きますね。
冒険家を守る|グレンフェルのトレンチコート誕生秘話
グレンフェルというブランドの由来となったグレンフェル卿と、ブランド創業者となるトーマス・フェイソン・スウェイトが運命の出会いを果たしたのは1922年のことでした。
ブランド名のグレンフェルとは、医師であったウィルフレッド・トマーソン・グレンフェルの名前から取ったものです。
ウィルフレッド・トマーソン・グレンフェルを「卿」とつけて呼ぶのは、その偉大なる功績によって、後に英国王室からナイトの称号を授与されるからです。
グレンフェル卿の物語
ウィルフレッド・トマーソン・グレンフェルはイングランド生まれの医師で、1892年からカナダ・ニューファンドランドのラブラドール海岸地域で診療を行っていました。
献身的で貢献的な彼の診療は、多くの人々を救います。
それは、カナダへ着任後、2ヶ月間で実に900人もの患者を診たという業績をとってみても明らかです。
医師であると同時に、探検家でもあったグレンフェル医師。
当時のイギリスは、世界中に植民地を持っていて、多くの勇敢なイギリス人が、世界を股にかける冒険家として活躍する時代でもありました。
グレンフェル医師がいたラブラドール島は、海を挟んで北極という土地でした。
北極の海岸地域には2000人余りの漁民やエスキモーたちが住んでいましたが、医療などは未発達。
グレンフェル医師は、診療と冒険の傍ら、医療が未発達の地域に住む彼らへも想いを馳せ、多くの教育機関や慈善団体の設立に貢献しています。
その意思は現在でも受け継がれ、世界中でも知られる「国境なき医師団」のルーツにもなっています。
トーマス・フェイソン・スウェイトの物語
一方アメリカに渡っていたトーマス・フェイソン・スウェイトは、酪農家から転職し、1908年から製織ミル(工場)を設立しました。
ミルは成功を収め、750台もの織機を持つほどに成長します。
そして、運命の1922年、自らも探検家であったグレンフェル博士に出会ったスウェイトは「衣服は呼吸をするように風を通さなければならない」という言葉に感銘を受けました。
この言葉によってスウェイトは、グレンフェル博士のリクエストする「防水・防風機能を備え、湿気を逃し、かつ軽量な布地」を作ることになります。
高密度の布地を作るのには、当時は入手困難な最高級のエジプト綿の特別で繊細な糸を手に入れることが必要不可欠でした。
入手には困難を極めましたが、なんとかクリアします。
また、織機も特別な仕様に強化する必要がありましたが、実際に布地を織り始めるとさらなる問題が持ち上がりました。
その布地はとても防水性があるため、染料が思うように入らず、色が染められなかったのです。
それでも改良に改良を重ね、やっと特別なファブリックが出来上がり、グレンフェル博士のもとに贈られました。
この時点ではまだ商業的な契約などはありませんでした。
その特別なファブリックを見たグレンフェル博士がスウェイトに「この布は一般的に普及されるべきだ」と手紙を書いたことから、のちにこの特別なファブリックを使用したアウター専門の、グレンフェルというブランドが誕生することになるのです。
1923年、スウェイトはグレンフェル博士の名前を冠したブランドを設立させ、以来多数の冒険家や飛行士に愛されます。
1920〜1930年代、北極や南極、または高い上空という過酷な場所のあらゆる天候に耐えうるグレンフェル・クロスは、幾多の生命の危機から着用する人の命を守り続けてきました。
その後も一部の特権階級が、贅沢な遊びとして行った登山やモーターレース、飛行機、ゴルフなど世界新記録の樹立に挑戦する冒険家やスポーツマンたちに愛用されてきました。
現在でも冒険心を支え続けた高密度かつ軽量な機能は保ったまま、現代のスタイルにもマッチするクラシカル・モダンでスリムなシルエットのトレンチコートを、世界中に提供し続けています。
グレンフェルのトレンチコート
それではグレンフェルのトレンチコートを見てみましょう。
クラシカルなものから、現代風にアレンジされたものまで勢ぞろいです。
また、グレンフェルのトレンチコートは、どれもイギリス国内でのみ作られたこだわりの英国製。
ひとたび羽織れば、イギリスの冒険の歴史と伝統を感じることができる貴重なコートです。
伝統を受け継ぐクラシックタイプ
ウィンザーグレンフェルクロス(ベージュ)
まずはグレンフェル・クロスを100%使って作られたウィンザーコート。
クラシカルタイプのオーソドックスなトレンチコートで、無駄のないデザインとクラシカルなシルエットが特徴です。
1923年以降作り続けてきた伝統のしっかりした作りは、一目瞭然ですね。
背中の通称「アンブレラカット」と呼ばれる独特な形のヨークは、雨の水滴を効果的に流すためのものです。
耐水性と吸湿性に優れたグレンフェル・クロスは、寒い冬の雨風・雪から身を守り、体温の暖かさを逃しません。
また、サイズも日本人には嬉しい36(XS / S)からあるので、細身の人でもサイズ感を気にせず着用できます。
ウィンザー イタリア・ギャバジン(ネイビー)
生地は100%イタリアン・ギャバジンコットンを使用。
取り外し可能なライニングも、ミックスウールで作られた暖かさ満点のライニングです。
スノードニア グレンフェル・クロス アルパカライニング
グレンフェル・クロスとアルパカを組み合わせた、さらに暖かそうなコートです。
表地は耐水性のあるグレンフェル・クロス、襟や裏地はアルパカの毛を使用しています。
さらにダブルブレストのデザインなので、前から来る雨風を完全にシャットアウトし、本格的な防寒着として役立ちます。
また、クラシカルなシルエットなので、寒い地域や季節でのビジネスシーンにも使えますね。
カラーはブラック、ネイビー、ブラウン、そしておしゃれなツイードタイプがあります。
ツイードタイプはカジュアルスタイルやパーティーのアウターにも使えそうですね。
現代風にアレンジされたモダントレンチコート
ロンドントレンチコート グレンフェル・クロス(ベージュ)
このトレンチコートは、2015年秋冬に発表されたものです。
ボタンの位置が少し広めだったり、取り外しライナーなしの仕様だったりと、現代風にアレンジされたトレンチコート。
ライナーなしなので、ジャケットやスーツの上から着用するのに丁度良いのではないでしょうか。
ロンドントレンチコート イタリアン・コットン・ギャバジン
これはまた、暖かそうなコートですね。
プレミアム・イタリアン・コットンのギャバジンを100%使用したトレンチコートです。
カラーのファーが風格を添えてくれますね。
暖かなシェービングカラーは取り外し可能で、背面はラグラン袖になっているなど、凝ったデザインになっています。
カラーはベージュ、ブラック、ネイビーの3色で、いずれもビジネスシーンやカジュアルシーンで使いやすい色味です。
トレンチだけじゃない、グレンフェルの魅力
グレンフェルのコレクションは、もちろんトレンチコートだけではありません。
今でも登山家やスポーツマンなど過酷な状況で求められるアウターを作り続けています。
足さばきをより軽快にしたゴルフ用のジャケット「ハリントン」、ニューハンプシャーの海軍の定番となったダッフルコート、生地の機能性をより強化したレインコートやレインジャケットなど用途による機能から派生したラインナップがあります。
あのジェームス・ディーンも着ていた○○
ジェームス・ディーンの写真でよく見るトレードマークのジャケット。
これは「ハリントンジャケット」と言って、日本ではジャンパーと呼ばれる上着の原型となったデザインです。
近年はやっているMA-1ジャケットが、アメリカ軍のフライトジャケットが元になっているのはよく知られていますね。
ハリントンジャケットは、イギリス海軍で着用されていたジャケットをベースにゴルフウェアとして開発されました。
また、バラクータのG9ジャケットの代名詞にもなっています。
MA-1はトム・クルーズが映画「トップ・ガン」で着用したことで流行しましたが、ハリントンジャケットはそれよりも前、エルヴィス・プレスリーが映画「闇に響く声(1958年)」で着用したことから人気に火がついたのが始まりです。
また、ハリントンという名前そのものは、1960年代のドラマ「ペイトンプレイス物語」で、ライアン・オニールが演じた人物「ロドリー・ハリントン」に由来するとのこと。
1950年代のアメリカで流行したアイビー・ルックと同じように、1960年代にはイギリスでモッズファッションが流行り、ハリントンジャケットを着る若者が急増しました。
その後1970年代〜1980年代に再びモッズリバイバルの波がくると、それに合わせてハリントンジャケットも再び流行します。
ちなみにハリントンジャケットの特徴は、軽量でウエスト丈、内側の裏地はタータンチェックやチェック柄です。
日本でもブリティッシュ・トラッドが流行ったので、1980年代頃の流行を覚えている人も多いのではないでしょうか。
アラン・ドロンも確か真っ赤なハリントンジャケットを着ていましたっけ。
見れば、「ああ、これこれ」となるはず。
このモデルは現在発売されているモデルなので、アラン・ドロンが着用していたものとは違うと思いますが、格好良いですよね。
グレンフェルは1931年からゴルフジャケットとしてハリントンを作り始めました。
その後は流行の波にも乗ったようですが、今でもそのコレクションは健在で、コットンやメリノウールなど、様々な素材で多様化したラインナップが揃い、愛用者を楽しませています。
グレンフェルがレインコートを作ると・・・
グレンフェルにはBLUEBIRD(ブルーバード)という名のレインコレクションがあります。
ただでさえ冒険家の身を守るほどの頑丈な布地を持つグレンフェルですが、そのグレンフェルが作ったレインコートとなれば、もう最強でしょう。
オリジナルのキャンベル・コットンを使用したグレンフェル・クロスのレインコートは、1950年代から作られ続けています。
ちなみにキャンベル・コットンとは、戦時中にデスパッチ・ライダー(軍隊の伝令ライダー)として活躍し、後にスピード記録に人生を捧げたマルコム・キャンベル卿にインスパイアされたオリジナルの布地。
激しい雨風の中、バイクにまたがった将校がこのコートを着て、伝令のために必死に駆け抜ける様子が目に浮かぶようです。
タータンチェックの裏地付きですが、オプションでライナーをつけることもでき、レインコートと言いながらも見かけは普通のコートとなんら変わりありません。
しかし、機能的には激しい豪雨の中でオートバイを走らせる際に着用しても、体から熱を奪わず、体を濡らさないという、いたって頑強な一着なのです。
こちらが、そのものズバリの「デスパッチ・ライダー グレンフェル・クロス イン ストーン」。
裾が風になびかないように押さえるベルトが、おしゃれなポイントのディテールになっていますね。
使われるボタンは真鍮製とのこと。
プレミアム感を後押しし、このコートをグレイドアップしていますね。
グレンフェルのトレンチコート|まとめ
防水、防風に加えて軽量で高密度のグレンフェルのトレンチコート。
機能面で抜群に優れているのは、冒険家である医師の要請で作られたコートだからです。
体については専門家である医師ということに加えて、自らも冒険家であり、実際に着用したということにおいて、実証されているのではないでしょうか。
バーバリーやアクアスキュータムのトレンチコートも、それぞれ英国軍からの要請で作られた丈夫なコートです。
しかし、グレンフェルのそれは、南極や北極に赴く探検家から依頼されたという点、そしてそれ以降も登山家やモータースポーツ、飛行士など、スピードにおいて新記録を樹立するような場面で用いられているという点を加味すると、その頑強さは別格なのではと思ってしまうのです。
アルパカの裏地や襟、高密度なミックスウールのライニング・・・。
ファッションに力を入れる他ブランドと比べ、昔と違わず機能を重視した作りは、ご覧いただいた通りです。
今でも極寒の地でも通用するであろう暖かさを追求した機能は、タウン着としては十分すぎるものですが、もちろんビジネス用に着用できます。
しかし、機能だけに偏らず、現代のスタイルにもマッチした、スリムでスタイリッシュなシルエットに仕上げることも忘れてはいません。
できる男はスーツにしろ時計にしろ、機能性の高いアイテムを身につけているもの。
あなたがもし機能的にもっとも優れ、しかもスタイリッシュで汎用性の高いトレンチコートをお探しなら、全力でグレンフェル推しです。