男なら、自分だけの履き皺がついた魅力的な革靴を持っていたいもの。
履けば履くだけ独特な艶に入る皺。
新品の時にはなかった皺が、あなたとともに歩むことで、少しずつ入っていく満足感。
履き皺が全く同じということはありません。
履く人によって刻まれる皺がひとつひとつ違います。
左右の履き皺すら違ってきます。
歩き方、移動距離、立ち振る舞い、そして出会い。
全てが履き皺に表現される。
そんな革靴は、あなたの人生を刻む相棒と言えるかもしれません。
今回は、「革の宝石」「革のダイヤモンド」とも呼ばれる希少な皮革、コードバンを使った革靴メーカー、オールデンのシューをご紹介します。
オールデンとは
米国の靴文化を象徴するシューメーカー。
それがオールデンです。
アメリカの歴史とともに歩んできた老舗であり、唯一無二の履き心地や存在感は、世界中の靴を愛する人々の憧れでもあります。
最上級の素材を使用し、フィット感を備えた靴は、他には代えられない革靴メーカーとして存在しています。
オールデンの歴史
1884年、アメリカのマサチューセッツ、ミドルボロウで創業しました。
創業者チャールズ・オールデンは最初のころ、カスタムメイドのブーツや受注生産で紳士靴を作っていました。
その後、1892年に生産ラインを拡張。
1931年にはマサチューセッツのブロックトンへ工場を移します。
1970年、創業の地、ミドルボロウに近代的な設備をもった工場を建設。
現代でも、ミドルボロウでオールデンの靴は作られています。
オールデンは足に問題を抱えた人が快適に履ける「医療用矯正靴」を開拓し、履き心地の追求をはじめ、矯正靴の研究や開発で培ったノウハウや技術を、オールデンシューズにフィードバック。
オールデンが今も、履き心地がよく快適である理由は、ここが原点とも言えます。
オールデンができるまで
オールデンでは、毎朝入念にレザーのチェックが行われています。
そして、約200行程にも及ぶ作業を経て、最高の靴が完成するのです。
レザーチェック
毎朝必ず行われるレザーチェック。
レザーの品質やキズを見るには朝の自然な光が最適なのです。
キズはもちろん、血筋やシワなどもくまなくチェック。
社長自らが行う徹底された検査は、最上級の革しか使わないというオールデンの情念が伝わってきます。
革取り
革には天然の動物特有のキズや血筋があります。
オールデンでは、このキズや血筋など悪いところを使わずに、そして耐久性を考えた革の目を見ながら、最高の部分を裁断していきます。
革取りは、熟練の職人の中でも、長年の経験を持ったものだけが許される作業。
ここからあなたに届く、オールデン最高の靴が始まるのです。
縫い合わせ
型抜きされたアッパー。
縫製にはミシンを使用し、縫い合わせていきます。
ミシンを使用するといっても、ミシンを使うのは熟練の職人の手。
職人の経験から紡ぎ出され流れるような縫い跡には、豊富な知識と技術が宿っています。
ラスティング
縫製したレザーをラスト(木型)に被せます。
ラストの形にアッパーを形成するため、力を加えてレザーを引き伸ばす。
コードバンやカーフ、スェードなど、レザーによってラストも引き伸ばす力も最適なところが変わってくる。
そのため、オールデンではコンピュータ制御でマシンをコントロールし、素材とラストの組み合わせで最適な力加減を再現しています。
手縫い
タンカーブーツ、ペニーローファーのモカ部を手縫いで縫合します。
表から針を入れ、裏には針を出さずに表に通す。
波打つような模様を表現する特殊な縫製を手縫いで実現しています。
また、熟練の職人がコードバンを縫うには、1足で約1時間が必要。
このような手縫いという労力を注ぎ込むのも、オールデンのこだわりです。
ソール
オールデンの靴は、ソールの張り替えが可能です。
グッドイヤーウェルト製法と呼ばれる、長い間の愛用にも耐えられるソールの製法です。
アッパーにリブと呼ばれる結合パーツを縫いつけます。
リブをソールに縫いつけることで、ソール部分だけの張り替えを容易にしています。
この製法のおかげで、アッパー部分の高い耐久性が際だつことになっているのです。
フィット
インソールとアウトソール。
その間には、オールデンの知恵が挟まれています。
その知恵とはオールデンの伝統「コルクたっぷり」。
松脂を練り込んだコルクを敷き詰めることで、クッション性を実現。
また、足の形に沿って沈ませることで、フィット感の向上を実現。
オールデンが「医療用矯正靴」の開発で追求した、最高の履き心地がここでも活用されているのです。
コバ磨き
ウェルトとアウトソールを縫い合わせた部分を、熟練の職人が自動的に回転するカッターにコバ(縫い合わせた部分の端)を押し当て、ウェルトとアウトソールが同一の幅になるように削っていきます。
同一の幅に削れたコバ部分に塗料を塗り、バフとワックスを掛けます。
底周りを丁寧に磨き、光沢を出し仕上げていきます。
仕上げ
靴についた汚れを取り、仕上げ用のクリームを塗ります。
両足が深い輝きと艶を魅せるまで、何度も何度もブラシを掛け、そしてバフを掛ける作業を行う。
オールデンが誇る、長年に渡って培ってきた仕上げ技術を惜しむことなく、一足一足丁寧に費やしていきます。
さぁ、世界へ
最終の検品が終わったら、靴箱にアイテム番号とサイズを打ち込まれます。
そして、オールデンのシューバッグと一緒に箱詰めされ、世界中のオールデンファンのもとに出荷されていきます。
コードバンとは
「革の宝石」
「革のダイヤモンド」
「キングオブレザー」
「幻の革」
そんな呼び名を持っているのが「コードバン」です。
独特な質感、素材感、そして使用すればするほど増す艶感。
「なめらか」で「しっとり」としていながら、重厚で威厳たっぷりな佇まい。
まさに「キングオブレザー」と呼ぶにふさわしい皮革素材です。
希少性
通常、革素材というと牛革が一般的。
しかし、コードバンは牛革ではなく、馬革です。
それもサラブレットやポニーではなく、食肉用の少数生産されている農耕馬からのみ採れる革なのです。
馬一頭から採れるコードバンは、ごくわずか。
農耕馬の生産量が低下しているのも相まって、入手困難な皮革素材として、高級品に分類されている質の高い革なのです。
革の構造
革は2層構造です。
「床」と呼ばれる下の部分。
「銀面」と呼ばれる表の部分。
「銀面」が「床」に張り付いて2層構造となっています。
しかし、コードバンは「床」のみを使用する単層構造。
臀部の分厚い革に守られた厚さ2mmほどのコードバン繊維を、表と裏から削りだすことで、手に入れられる希少性の高い革なのです。
品質と耐久性
2層構造の革は、時間の経過と共に銀面に歪みが出てきます。
床と銀面が張り付いている部分に隙間ができ、銀面が浮いたようになる「浮き」という状態になってしまいます。
しかし、単層構造であるコードバンは、床だけなので「浮き」が起きません。
強度
革の強度を見てみると、2層構造の革のほうが強いです。
コードバンは単層構造。
2層構造と比べると銀面がありませんので、引っ張り強度は低く、負荷がかかる方向によっては裂けることもあります。
しかし、負荷がかかる方向さえ間違えずに使用すると、牛革よりも強いと言われています。
コードバンの革靴のお手入れ
靴を長く履くためには、丁寧なお手入れが必要です。
いくら最高級靴のオールデンと言っても、お手入れしないで長く履くことはできません。
しかし、オールデンはお手入れさえしていれば、何十年と履ける靴だとも言われています。
オールデンの靴は一般的に、3回履いたら1回お手入れ、と言われています。
たった3回で?
と思われるかもしれませんが、靴を目で見て「汚れてる」とわかる状態というのは、お手入れするには手遅れな状態です。
この状態からコードバンの美しく奥深い艶を取り戻そうとしても、不可能かもしれません。
せっかくのオールデンが汚れたまま、美しい輝きを失った最高級革靴になってしまったら。
そんなことにならないためにも、ここではお手入れ方法を紹介します。
でも、これだけは守ってくださいね。
3回履いたら1回お手入れ。
いくらお手入れ方法を覚えても実際にお手入れしないと、せっかくのオールデンから威厳や風格、美しさが遠ざかってしまいますから。
新しいコードバンのお手入れ
(1)クリームを靴全体に軽く塗り広げます。
靴の表面にクリームの膜を薄くはるつもりで、全体的に広げて塗っていきます。
(2)クリームを塗ったら、時間をおかずに素早くブラッシングをします。
ホースブラシで余分なクリームを全体にまんべんなく広げながら、余分なクリームを取り除きます。
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ポイントはブラッシングで、クリームを隅々にまで行き渡らせることです。
(3)グローブクロスを使って、表面に残っているクリームを取り除きます。
この仕上げを丁寧にすることで、コードバン独特の光沢が美しく輝きます。
キズ、シミがあるコードバンのお手入れ
(1)シューキーパーを靴に入れます。
必ずシューキーパーを準備して使用するようにします。
これは、履き皺を伸ばし、皺に入っている汚れを取り除くためです。
(2)リムーバーを適量クロスに染み込ませ、靴全体を拭きます。
このとき、強くこするとコードバンの表面に負担がかかります。
表面に付いている古いクリームが軽く落ちればいいので、なでるように軽く拭いてください。
(3)ワックスを全体に塗り込みます。
革に刷り込むように塗り込んでください。
(4)ホースブラシでブラッシングします。
ブラッシングすることで光沢が甦ってきます。
ブラッシングのポイントは、円を描くようにゆっくりとブラッシングしてください。
靴を愛でるように、時間をたっぷりかけることが輝きを取り戻すポイントです。
(5)レザースティックで表面をこすります。
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(6)グローブクロスで全体を乾拭きします。
少しだけ力を入れながら、乾拭きするのがポイントです。
コードバンの欠点
完璧なものには、愛着もわかないもの。
どんなものにも欠点は必要です。
コードバンにも欠点はありますので、ご紹介します。
色落ちしやすい
コードバンは元々染めにくい皮革素材です。
コードバンは1足の靴を見ても、部分部分で色ムラ、色の風合い違いが見つかります。
これは、他の皮革素材は一度染色すると色落ちしにくいのに対して、コードバンは色落ちしやすい素材だからです。
履けば履くほどいい色合いや風合いになる、といえるでしょう。
雨に弱い
皮革素材はコードバン以外でも水に弱い性質を持っています。
雨や水に濡れるとシミになったり、うっすらと跡が残ることも。
オールデンが使用しているコードバンは馬革ですが、牛革よりも雨や水には弱いようです。
雨や水が近いところでは「履かない」と割り切るのも正解ですね。
傷がつきやすい
コードバンは、革の艶が魅力です。
でも、履いているときに、その魅力的な部分にキズがついてしまったら、、、。
特にトゥー部分にキズが付く方が多いようです。
一度キズがついてしまったら、自分ではどうすることもできません。
できることは、気をつけて履くしかありませんね。
オールデンを履くときは、優雅に、そしてたっぷりと余裕をもって移動するのが正解なのかもしれません。
ALDEN 9901
もともとコードバンは希少な革。
そんな中でも9901は一枚革からできるモデルなので革取りが難しい。
なので、定番なのに希少価値という状態になっています。
ダブルレザーの風格ある存在感。
そして安定感を約束する履き心地。
レザーソールは実用面から嫌う方もいらっしゃいますが、削れてきたときの雰囲気は最高です。
男の粋を表現するなら、レザーソールのまま履いてみてください。
ALDEN 9751 LONG WING TIP-CORDOVAN
圧倒的な存在感。
バリーラストと呼ばれるオールデン不屈の名作「990」でも使用されている代表的なラスト(木型)を使用した、ウィングチップのコードバンです。
バリーラストの特徴である標準USサイズよりも大きめのサイジング。
ダブルレザーソールの組み合わせで、どっしりとした威厳ある安定感が漂ってきます。
この威厳にコードバン独特の深い艶。
そして、他には絶対にない、あなただけの皺が加わるところイメージしてみてください。
言葉には表せない贅沢な一足ができあがること、間違いありません。
ALDEN 53511 BLACK CORDOVAN PLAIN TOE
コードバンのプレーントゥです。
オールデンの定番、9901とは違ったフォルムが魅力的です。
プレーントゥはコードバンの中でも、革取りに熟練の技と知識が必要なモデル。
他のモデルよりも需要と供給のバランスが合っていませんので、市場にはなかなか並ぶことがありません。
見つけてサイズがぴったりなら、迷うヒマなんてありません。
そのときが買うタイミングです。
まとめ
コードバンは「出会ったときがタイミング」。
それほど希少なものですから、見つけたときに、迷う必要はありません。
すぐに手に入れ、あなたのこれからの人生を、ひと皺ずつ丁寧に刻み込みましょう。
2年、3年、、、10年と履いていくことで、あなたの今を一番知ってくれている相棒になるのですから。
特にオールデンの革靴は実用性に優れていますので、履き心地も足へのストレスも少なく、フィット感も最高級です。
足に馴染むように作られた靴ですから、長く履けば履くほど、あなたの足にぴったり馴染んでくるでしょう。
男なら誰もが憧れるオールデンのコードバン。
サラッと履いて、革の宝石から滲みでるオーラで他の革靴を圧倒してしまいましょう。