フルオーダーで仕立てたスーツにシャツ、もちろんネクタイもオーダーメイド。そんな男性が目の前を通りかかったら、女性はもちろん同じ男性であっても思わず目を留めてしまうに違いありません。
例えば銀行に行っても装いによって対応が変わるとはよく聞く話でして、私のエピソードで恐縮ですが、ジャケットを着ていくだけでもエレベーターのなかで行員の女性に声をかけられたり、窓口での対応も、普段より視線を感じたりすることもあります(気のせいかもしれませんが・・・)。雰囲気に華があるものなら、人は自ずとそちらに惹かれてしまうもの。
するとその人物の一挙手一投足に注目が集まるようになります。
しかし、こんな場面に出会ったなら、あなたはどういう気持ちになるでしょうか?
レストランで会計をしようとジャケットの内ポケットに手を伸ばし、スッと取り出した財布が見るからにマジックテープを使ったいわゆる「バリバリ財布」だったら(これは極端な例ですね・・・)。
きっと、百年の恋も冷めるではないですが、残念な気持ちになると思いますし、実際私もそんなことを言われたことがありました。
スーツはセクシーでとてもいいのだけれども、財布がちょっと・・・
フルオーダーでせっかくのいい雰囲気も、財布ひとつで全体の雰囲気として左右されてしまうもの。小物にもこだわりたいという経験をされた方は、きっと私だけではないはず。
そこで今回の記事では、フルオーダーのジャケットにふさわしい長財布を紹介したいと思います。
スーツと財布にも相性がある?
ビジネスパーソンの間では、ファッションほど投資対効果が高いものはない、と言われている話を聞いたことがあるかもしれません。
ビジネススキルを高めたり、自分の市場価値を高めようとするとき、例えば簿記などの資格や語学力の修得、人によってはMBAなどのために留学する人もいるかもしれませんね、他にも本を読んだりするなど、新たな知識の獲得を思い浮かべる人が多いかもしれません。
実際、それらは確かに投資になりますし、特に本を読むことなどは手軽にはじめられるので、まずは新聞を読むことからはじめなさいと指導する会社もあるかと思います。
しかし、会社に勤めるビジネスパーソンでも起業家でも、売れている人ほどファッションに投資をすることを勧めていますし、実際に自分自身も投資をしています。
先日お会いしたある起業家は、ちょっと身なりのいい服装をするくらいならば思い切ってオーダースーツを注文した方がいい、と言っていました。
彼の場合、若い時に背伸びしてフランクミュラーの腕時計を購入したそうなのですが、同じ経営者と話をする時、自然と相手が腕時計を見ていることに気づくそうです。
値踏みされているわけではないですが、人は外見からその人を判断してしまうもの。
外見だけよくて中身が空っぽ、だと寂しいものですが、人から見られているという意識は、自ずと内面に働きかけます。
例えば見られているなと思ったら、自然と歩く姿勢もシャンとしてきたり、座る姿勢も背筋を伸ばしたり。
人は周囲の視線、環境によって成長することもあれば、また逆もあります。
手にする小物、財布にもこだわってほしいと思うのはそういう背景もあるわけです。
また、これは成長意欲のあるビジネスパーソンには無視できない事実だと思いますが、知識の習得とそれをビジネスに生かせるようになるには1年3年5年と時間を要するものですが、身なりへの投資はそれを購入する体験から自分自身を変化させることができます。
時は金なりではないですが、知識や技術の習得は『7つの習慣』でいうところの「第二領域」として、ファッションや身なりへの投資は「第一領域』として捉えてみるといいかもしれません。
私たちの身の回りを眺めてみると、見た目への配慮がない人でもうまくいっている例は、そうはありませんから(もちろん、絶対ではありませんし例外はあります)。
面白いのは、フルオーダーとカバンとの相性に関する記事にも書きましたが、モノとモノには相性のようなものがあるということ。
財布も同様で、スーツから取り出した財布がそのスーツにフィットしているかどうか。
人は瞬時にそれを感じるものです。
必ずしもコレがいいというわけではないですが、ヴィンテージ生地やHOLLAND & SHERRYの生地で仕立てたフルオーダーのスーツには、やはり革の長財布が似合うように思います。
ジャケットから取り出した瞬間に、革の光沢が目を引くような、そんな長財布。
もちろん、革だけではないですが、「歴史を感じさせるもの」であるかどうかがフルオーダーのスーツやジャケットに似合う条件になりそうです。ブランドの歴史なども、そうですね。
財布に小銭を入れるかどうか?
個人的には財布に小銭を入れることはオススメせず、ジャケットの内ポケットに入れる財布はお札専用として長財布、そしてどうしても小銭を持ち運ぶ必要があるならば小銭入れを別に用意した方がいいのでは、と思います。
スーツ姿やジャケット姿のラインが美しく見えるから、というのは次に書きたいと思いますが、やはり長財布に小銭を入れるというのは所作に野暮ったさが生じてしまうからです。
チップの文化がない日本においてはなかなか目にすることはないのですが、先日フィッターであるイタリア人とバーに行った時、おつりの小銭をチップとして渡していました。
そのスタッフは日本人ですから、チップに慣れているわけではありません。フィッターの流儀に従って、フィッターは小銭を渡したわけですが、聞くと小銭入れを持っていませんでした。
小銭を持たざるを得なかったら、パンツのコインポケットに入れると。実際、仕立てたパンツを見てみると、前ポケットの左右両方ともに小銭用のポケットが付いています。
治安の面でイタリアは日本よりも危険らしいですから、人前でお金を触ることを極力減らしたい、というような話も聞いたことがあります。
しかしいずれにせよ、フルオーダー姿の男が人前で小銭をジャラジャラさせていたら、どこか残念な気持ちになるのは、わからないでもありません。
タクシーに乗ると、小銭のおつりは受け取らない、という話も聞いたことがありますね。外国の話ではありますが、端数の小銭は全てチップとして渡すとも。
いずれにせよ、見た目の格好良さというか、立ち居振る舞いのクールさを大切なものとして考えているのだと思います。
ですから小銭持つならば、ジャラジャラさせずに視認性がいい革の小銭入れ、またはパンツについているコインポケットを使う。
好みもあるかと思いますので、コレは参考までに。
身体のラインはキレイに見せたい
コレが長財布をフルオーダーにオススメする最たる理由ですが、やはり一番は、身体のラインをキレイに見せたいから。それほど、フルオーダーでサルトが仕立てたスーツやジャケットは、鏡に自分を写した時のラインが美しいのです。
採寸後に、ポケットの数をいくつにするのか、またそれらには何を入れるのかを聞かれたのですが、これは例えば長財布を左側の内ポケットに入れるとして、その状態で最も美しいカーブを描くように仕立てるためだそうです。
聞くと、厚みのある財布を入れてもラインをきれいに見せることは可能なのだとか。もちろん、できることならば何も入れないほうがいいとは言っていましたが。極力シンプルに、ですね。
この話を聞いた時、ふと思い出したのが「札バサミ」でして、そういえば身なりのいい外国人男性が札バサミからお札を取り出すシーンを見たことがありましたが、あれはもしかしたら、スーツとの相性を考えての選択だったのかもしれません。
実際、フルオーダーに合いそうな小物を売っているお店では、札バサミもラインナップに含まれています。
小銭は基本入りませんから、札バサミほど薄い財布は他に存在しません(おそらく)。
そういう意味では、もっともラインをキレイに見せるに適した財布は、札バサミなのかもしれませんね。
フルオーダーに合う長財布はコレ
好みもあると思いますので、ここは個人的にいいのではないか、と思われる長財布を紹介したいと思います。参考になれば、幸いです。
Berluti(ベルルッティ)EBENE(エベネ)レザーロングウォレット
長財布であることはもちろん、たくさんのカードを収納したい、そんなビジネスパーソンにはこのエベネを検討してもらいたいところ。
ご覧のように、札入れ箇所の他カードも12枚収納できる造りになっており、小銭入れも装備。
個人的には小銭入れは領収書やカード決済シート入れに使い、なるべく薄くして持ちたいものです。
もちろん長財布に札束を入れて厚くなることは粋ですね。思う存分、使ってほしいところです。
Berluti(ベルルッティ)SANTAL(サンタル)レザーエンウォレット
もうひとつ、長財布で紹介したいのはこちらサンタルエンウォレット。
カードの収納枚数はエベネより少ないものの、その分シンプルでよりスリムに持つことができそうです。
こちらも小銭入れは領収書などを入れるスペースとして活用し、極力厚みを持たせないように活用できるといいのでは、と思います。
Berluti(ベルルッティ)MAKORE(マコレ)スリムレザーコンパクトウォレット
これを見た時、さすがにベルルッティはわかっているな、と感じたことがありまして、それは小銭入れがついていないところ。
このタイプの財布だと小銭入れも標準装備されている財布をよく見かけるなかで、ここまで潔く札入れとカード入れに特化したコンパクトウォレットならば、長財布派のわたしでも持ちたくなります。
このマコレと比較すべきは札バサミ。そんな主張がまた、うれしくなるコンパクトウォレットです。
Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)ポルトフォイユ・アレクサンドル
もはや定番中の定番かもしれませんが、やはりいいものはいいものとして紹介しておきたいのがルイ・ヴィトン。長財布としてポルトフォイユ・アレクサンドルを紹介します。
モノグラムやダミエなど、エジプト綿にポリ塩化ビニールをコーティングした素材もありますが、エピやタイガのような型押しレザーもラインナップにあります。写真はダミエです。
カード入れと小銭入れが併設されているオーソドックスな形ではありますが、コレもやはり個人的には札入れとカード入れとして使いたいところです。同じブランドで小銭入れを別に用意してもいいかもしれませんね。
他にも、札バサミを紹介したいところですがコレはまたの機会に、書いてみたいと思います。イタリアのナポリの男たちと一緒に過ごしていると、あの無造作にお札を札バサミにはさみ、取り出すときはピッと風を切るかのように人差指と中指で挟んでフリスビーのように相手に差し出す映画のようなシーンに、憧れますので・・・。
まとめ
フルオーダーに合う小物ということで、この記事では長財布を紹介しました。長財布の他、折りたたみ式のコンパクトウォレットも1つ紹介しています。
コンパクトにたたむことのできる財布も革などによってはとても美しく、スーツにもジャケットにも合うと思いますが、こと内ポケットから取り出すという視点から考えると、長財布という選択がベストなのではないか、と感じています。
コンパクト財布だとどうしても、内ポケットの奥深くにまで手を入れてまさぐる必要がありますから、この一点がエレガントさに欠けるなぁ、と。
他に選択するとしたら・・・札バサミですね、パンツのポケットに入れておき、ややワイルドに札バサミとともにお札を取り出し、そして受け取ったお札をしまう。
モノとモノとの相性はもちろん、動きをつけた時の美しさもまた、コーディネートには大切です。
ダンディズムとは男の凛々しさと繊細な美しさが同居するたたずまい。
ぜひフルオーダーにふさわしい、そして調和を奏でるように自然な長財布を、選んでほしいと思います。
当然、ブランドを持つからにはその歴史背景を知り、フルオーダーにふさわしいものを選んでくださいね。
人は、あなたのスーツ姿はもちろん、財布を取り出す一挙手一投足に注目しているものですから。