ミュージシャンだけではなく、すべてのアーティストに影響を与えたエリック・クラプトン、ジョン・レノン。
この二人の共通点といえば、
それはシンボルにもなっている「丸いメガネ」です。
あの丸いフレームのメガネは、どこのブランドなのか?
一部のマニアは既にご承知ですが、まだまだ日本では知られていないのが本当のところです。
クラシカルで丸みを帯びたフレーム。
ちょっと知的で、遊び心も感じられる独特なデザイン。
シンプルでありながら、目を引かれる存在感。
目元にあるだけで、その人の佇まいまで違った印象に見えてしまう。
最近では、ジョニー・ディップもお気に入りで、プライベートだけではなく、映画の中でも使っているようです。
また、映画の中で使われているというと、ハリーポッターの主人公がかけているのが同じメガネですね。
それでは、クラシカルで丸みを帯びた、知的でユーモアもあるメガネ。
イギリスの眼鏡工房が手作りする「サヴィル・ロウ」をご紹介します。
クラプトンやジョン・レノンを魅了したサヴィル・ロウ
多くのアーティストに影響を与えた彼らが選んだメガネ。
それが「サヴィル・ロウ」です。
実は、サヴィル・ロウとは「ブランド名」であり、工房は「アルガワークス」という名前なのです。
では、サヴィル・ロウのような一品を作り出す、アルガワークスについてお話しします。
アルガワークスの創業
1932年、メガネの生産で有名なイギリスのロンドンで、小さな眼鏡工房として誕生したのが「Algha Works(アルガワークス)」です。
残念ながらアルガワークスは、創業当時から輝かしい名品を持っていたわけではありません。
当然「サヴィル・ロウ」が存在したわけでもありません。
他の小さな眼鏡工房と同じように創業し、自分たちのメガネを作っていただけでした。
そんなアルガワークスの最初の仕事は、イギリス政府が国民へ支給するための「医療品」としたメガネの生産から始まりました。
デザインや材料、価格や品質にはイギリス政府からの規制が厳しくありましたが、アルガワークスは厳しい規制を逆手に取ることで、自分たちの技術向上に役立てました。
1970年代まで、アルガワークスはイギリス政府からの安定した受注を受け続けていたため、メガネのバリエーションも400種類を超すほどの多種多様な生産を行うまでに成長。
支給品といいながらも、ひとり一人にあったメガネを作っているのですから、技術向上は飛躍的に伸びたことが想像できます。
しかし、そんな上向きな時代も1980年代が近づくにつれ、少しずつかげりが出てきます。
アルガワークスの買収
1980年代、アルガワークスにイギリス政府からの注文が減少し始めます。
その理由は、イギリス政府が国民へ行っていたメガネの無料提供をやめたから。
アルガワークスは、それまで経営のほとんどをイギリス政府の政策に頼っていました。
しかし、その政策が終了することで、アルガワークスの経営は非常に困難な状態に変わっていったのです。
そんなとき、アメリカの会社「アメリカンオプチカル社」が、アルガワークスの買収に手を挙げます。
アメリカンオプチカル社としては、アルガワークスの持つ伝統的な技法や工房を、経営難を理由にして失ってしまうのはあまりにもおしい。
どうにかして、この技法や工房を後生に残したい。
そんな思いでアルガワークスを買収しました。
サヴィル・ロウというブランドが誕生
1988年、アメリカンオプチカル社はアルガワークスを買収後、アルガワークスの技術を集め、最高のメガネを発表します。
このときに誕生したブランドが「SAVILE ROW(サヴィル・ロウ)」。
ちなみにサヴィル・ロウとは、ロンドンの中心部のメイフェアにあるショッピング・ストリートの名前。
このストリートには、オーダーメイドの名門紳士服店が集中していることで有名な場所です。
このことから、「サヴィル・ロウ」が訛って日本に伝わり「背広」という単語になったという説があります。
オーダーメイドの紳士服とオーダーメイドのメガネ。
このストリートは、永遠に生き続けるスタイルが存在する場所とも言われていることから、アルガワークスも、自分たちのメガネも永遠に生き続け、世界中の人たちを魅了しようと考えたのかもしれませんね。
再び英国へ
1996年、世界的な不況に入るころ、アメリカンオプチカル社の経営状態が悪化します。
経営難の中、苦渋の決断としてアメリカンオプリカル社は、アルガワークスを手放す覚悟をします。
前途多難な状態に陥ったアルガワークスですが、今度はイギリスの眼鏡会社が買収に手を挙げました。
このイギリスの眼鏡会社は、アルガワークスの歴史ある工房、そして技術やブランドを救済しようと考え、そして、アルガワークスが創業した本国イギリスへ買い戻すことを決意。
その結果、無事、アルガワークスはイギリスへ買い戻されることになるのです。
その後、アルガワークスは小さな工房から再スタート。
Rolled Gold(ロールド・ゴールド)と呼ばれる伝統的製法。
SAVILE ROWというブランド。
この2つを大事にしながら、今も手間の掛かったメガネを作り続けています。
今も変わらないサヴィル・ロウのこだわり
サヴィル・ロウのこだわり。
言い換えれば、アルガワークスのこだわりです。
アルガワークスは、アメリカンオプチカル社に買収されたとき、それまでイギリス政府とのやりとりで約400種類のメガネを作っていました。
しかし、買収されてからは「メタル型」の数点だけに絞り込んで、効率化を重視し、生産することが増えました。
しかし、イギリスの眼鏡会社に買収され、再びイギリスへ戻ったときからメタル型だけではなく、アルガワークスが従来得意としていた「アセテートフレーム」に力を注ぐことになります。
そして、その努力が実り、アセテートとメタルを合わせたメガネを開発。
今ではメガネのデザインというとデジタルで行いますが、あえて手書きでデザインを行い、そのデザインをアセテート生地に写して、手作業で削り出す。
削りだしたフレームを元に型を作るという、今の時代からみると、非効率な作り方をあえて選ぶことが、80年以上続く眼鏡工房の歴史や信念、こだわりを強く表しているのでしょう。
ロールド・ゴールドという伝統製法
ロールド・ゴールド(Rolled Gold)とは、アルガワークスが持っている
伝統的な製法です。
通常、ゴールドのメガネには、24金はやわらかすぎてNGです。
金に金属を混ぜることで、14金や18金を作ることになります。
しかし、ロールド・ゴールドの場合は、宝飾業界の加工技術によって、合金の芯の回りに、8~10ミクロンの14金を巻きます。
14金を巻いた上に、24金をコーティング。
3層構造となったゴールドの製法によって完全に一体化した、パーツが出来上がってきます
本当のクラシックと呼ばれる理由
サヴィル・ロウが本当のクラシックと呼ばれる理由をお話ししましょう。
メガネというジャンルには、いつの時代でも「クラシカル」または「ヴィンテージ」という言葉が消えることがありません。
これはクラシカルなメガネは常に一定の人気が集まっているということでもあります。
では、クラシカルやヴィンテージとは何でしょうか?
・メガネのフレームの形
・メガネのフレームの色
・レンズの大きさ
・彫金
・メガネのフレームの色
・レンズの大きさ
・彫金
このような部分を言うのでしょうか?
これらの部分を「クラシカル」なデザインにしたメガネなら、サヴィル・ロウ以外からもたくさん発表されています。
でも、たくさん発表される中で、サヴィル・ロウのメガネは「本物のクラシック」と呼ばれています。
その理由は、これです。
自分たちが全てを行う
どんな小さな、どんな細かなパーツでも、全て自分たちで作り出します。
これは、1930年代から変わっていない、一貫した主張とも行動ではないでしょうか。
小さなパーツ、細かなパーツを作るときには、専用の機械があります。
当然、この専用の機械も自分たちで作っています。
そして、専用の機械を整備するエンジニアも自社に存在します。
また、メガネを作るときの工程も全て手作業で行っています。
現在は、ほとんどのメガネは工場のオートメーション化で、自動的にメガネが作られていきます。
しかし、非効率な方法を選ぶことで「他にはない」サヴィル・ロウらしさが「本物」たらしめているのでしょう。
佇まいと存在感。それはもうメガネではない。
非効率な方法でひとつ一つ丁寧に作り上げられたメガネ。
サヴィル・ロウのメガネは、単純でシンプルな構造にも関わらず、そっとメガネを置いておくだけで、周囲の雰囲気を変えてしまう感覚が実感できると思います。
佇まい。
存在感。
どちらも、伝統と歴史がある職人から紡ぎ出される「手間が掛かった」製法だからこそ、伝わってくるものなのでしょう。
ハイテク機械なら大量生産も可能です。
しかし、あえてローテクで少量生産。
これは、ひとりの人が、ひとつのメガネが出来上がるまでに触れ合っている時間が長いことが理由なのかもしれません。
そして、何よりも「長く愛用してほしい」という思いがひしひしと伝わってくるところも「本物」たるゆえんでしょう。
このように、サヴィル・ロウが「本物のクラシック」と呼ばれる理由は、現在私たちが忘れてしまった、ひとつ一つ丁寧に作ること。
そして触れ合うことを含めて「本物のクラシック」と呼ばれているのでないでしょうか。
サヴィル・ロウのラインナップを紹介
サヴィル・ロウと言えば、エリック・クラプトンやジョン・レノンが身につけている「丸メガネ」が有名ですね。
この丸メガネは、いつの時代でも人気で、あのハリーポッターの主人公が映画の中で掛けている丸いメガネもサヴィル・ロウなんです。
じゃあ、サヴィル・ロウは丸メガネしかないのかというと、そんなことはありません。
基本的には「シンプル」なデザインでありシルエット。
でも、少しずつ「かわいかったり」「立体的だったり」「上品だったり」。
ひとつだけ持っておこうと思っても、気がつくとあれこれ手元に置いておきたくなるのが、サヴィル・ロウの力です。
それでは、有名な「パント」を含めて、紹介していきます。
panto(パント)
1930年代、アルガワークスが創業したときから変わらない、サヴィル・ロウ不動の人気を気づいているのが「パント」です。
このパント、日本ではなぜか「ボストン」と呼ばれています。
丸メガネの代表作であり、どれだけ時代が変わっても、色褪せることがないデザイン。
このモデルがジョン・レノンやエリック・クラプトンが選んでいるモデルの原型です。
そして、イギリス政府から支給されていたメガネも、このモデルと同じデザインだったのです。
berwick(ヴェルウィック)
こだわりの、自分だけの1本を持ちたいなら。
細かいオーダーが可能な、世界で1本だけのメガネを持ちたいなら。
カラーにもインパクトがある、このモデルがおすすめです。
カラーを少し変えるだけで、印象がガラッと変わりますので、同じデザインのメガネでも、カラーバリエーションをそろえると、毎回違った印象を作り出すことができますよ。
half-eye(ハーフ・アイ)
クラシックな雰囲気を存分に楽しみたい。
デートで彼女に横顔で惚れなおさせたい。
立体的なブリッジが特徴なので、普段のあなたと違った印象にドキッとする人がいるかもしれません。
今までとちょっと違った印象がほしい方におすすめです。
orford(オルフォード)
女性にもぴったりなメガネがオルフォードです。
素顔の印象を大きく変えずに、自然な印象でメガネをかけられるので、メガネが苦手な方や、メガネデビューの方におすすめです。
男性がかけると、優しい印象になりますから、TPOに合わせて使い分けしてみてくださいね。
quadra(クアドラ)
この形は、イギリス発祥とされています。
正方形の角を落として丸くしたような、ころんとした独特のデザイン。
可愛らしさと上品さを合わせ持った、今までのサヴィル・ロウの中でも少しちがったメガネです。
このメガネは、どこまでも上品に合わせられるかがポイント。
このキーワードを忘れずに、トータルでコーデしてほしいオシャレ上級者向けのメガネです。
まとめ
エリック・クラプトンにジョン・レノン。
ジョニー・ディップにハリーポッター。
探せばまだまだ愛用者がたくさん出てくると思います。
それだけアーティスト達の心を掴んで離さないのには理由があるのでしょう。
・いつまでも変わらないデザイン。
・ユーモア感。
・こだわりの作品。
・アーティストの印象を崩さずに引き立ててくれるシルエット。
・サッとかけるだけで知的な印象。
・ユーモア感。
・こだわりの作品。
・アーティストの印象を崩さずに引き立ててくれるシルエット。
・サッとかけるだけで知的な印象。
様々な理由が考えられますが、やはり一番は「インスピレーション」を与えてくれるメガネなのだと思います。
このメガネを通して見ることで、ジョン・レノンやエリック・クラプトンが受け取った「インスピレーション」と同じ波長のものが見つけられる可能性がアップするのではないでしょうか。
インスピレーションは、自分の感性が頼りです。
感性を敏感にしておくには、身につけるものを厳選する必要がありますよね。
そういうことから、サヴィル・ロウのメガネはいつの時代でも、世の中に強い影響を与えたアーティストがこぞって選ぶ傾向にあるのかもしれません。
あなたも憧れていたアーティストと同じものを身につけることで、新しい感性が呼び起こされ、今までにないインスピレーションを受け取るのではないでしょうか。
さぁ、早速、サヴィル・ロウのメガネを購入して、一日でも早く憧れのアーティストと同じフレーム、そしてレンズを通して世界を見てほしいと思います。
彼らがどんな世界を見ていたのか、あなたも理解できると思います。