ランゲの4代目、ウォルター・ランゲはこう語っている。
「立ち止まることは後退すること」と。
この言葉は数々の苦難に直面しながらも、常に完璧であり最高の時計を設計し作り続けてきた妥協なきメーカーだからこそ言える言葉でしょう。
そして、今、ビジネスシーンで活躍しているパーソンに、もっとも適した言葉であるとも言えるのではないでしょうか。
時代はどんどんと加速度的に進んでいきます。
だからと言って、立ち止まることはできません。
まさに、ウォルター・ランゲが語るように「後退すること」となりえるからです。
このような強い意志を語るA.ランゲ&ゾーネ。
完全主義であり、無駄に複雑なことを誇示することのないシンプルな佇まい。
出来過ぎる男に求められる、全ての仕草や考え方が詰まったような腕時計を紹介しましょう。
工房の始まり
1815年、ザクセンが敗戦と復興の苦しくも未来を夢見ていた時代に、アドルフ・ランゲが生まれました。
アドルフ・ランゲは両親の離婚後、知り合いの商家に引き取られます。
この育ての親のおかげで、ドレスデン技術学校に通うことになり、学校に通うかたわら、高名な時計師である「ヨハン・クリスティアン・フリードリッヒ・グートケス」のもとで時計作りの見習いを始めました。
時計師としての才能を見抜いたグートケスは、アドルフに目をかけ始めます。
このときアドルフは15歳でした。
1837年、見習いを卒業したアドルフはフランスへ修行の旅へ出ます。
パリ近郊でヨーロッパ屈指の時計師と呼ばれたヨゼフ・タデウス・ヴィンネルの元にアドルフは入門。
やがて工房の主任となり、工房で働きながら、大学で天文学や物理学を学ぶという幸運にも恵まれました。
しかし、アドルフの目標はいつも、パリの一流の時計師たちの元で腕を磨くことだったのです。
1840年、アドルフはドイツに帰国。
修行の3年間の記録は「旅の記録」として知られる手帳に残され、アドルフは今後の時計には、精密な計測が可能な測定器具を駆使し、合理的で緻密な製造方法を取るべきだと考えていたようです。
アドルフは故郷であるザクセンが資源枯渇によって貧困で苦しんでいることを知り、ザクセンを時計製造業の中心として町にしようと提案。
1845年、多額の融資を受け、見習い工とともに、ドレスデンからグラスヒュッテに移住。
独立工房を開設し、育成された時計師がゼンマイや歯車などの部品を専門につくる工房へ独立したことから、グラスヒュッテにはアドルフの工房を筆頭に精密時計産業地帯に変わっていきました。
1867年、アドルフの息子エミール・ランゲが経営に参画。
これを機に屋号を「A.ランゲ&ゾーネ」に。
その後、第一次世界大戦、第二次世界大戦に翻弄され工房が焼失。
4代目のウォルター・ランゲは1948年、西側へ亡命。
1990年、ドイツが統一されたことで、亡命し企業に勤めていたウォルター・ランゲがIWCの社長により探し出されたことから、1990年「A.ランゲ&ゾーネ」の再登記と商標登録が行われました。
1994年、新たな出発として「ランゲ1」「サクソニア」「アーケード」「トゥールビヨン“プール・ル・メリット”」の4ラインが発表され現在に至ります。
A.ランゲ&ゾーネのこだわり
創業者「アドルフ・ランゲ」は「完璧な時計」を追い求めました。
そして、現在でも時計の精度の向上、視認性の改善、操作性の簡便化を目指しながら開発を続けています。
しかし、技術的に完璧であったて、それだけではA.ランゲ&ゾーネということはできません。
A.ランゲ&ゾーネとは、技術的な完璧さの他に、芸術的な美しさを満たす必要があるのです。
特に特徴的なのが「エングレービング」と呼ばれる手彫りの彫刻です。
表からは見えない「テンプ受け」に、エングレーピングを施すのが、アドルフ・ランゲの時代からの伝統。
完全に職人による手彫りですから、二つと同じものがないのも頷けます。
担当する職人によって独特の癖や彫りの深さ、線の勢いなどが違ってきますから、はっきりと見分けることができるのも特徴だと言えるでしょう。
A.ランゲ&ゾーネの職人達には、テンプ受けを見れば、どの職人が彫ったのかがわかるというのも、まったく不思議なことではない話です。
次に腕時計によって大切な「軸」を同時に押さえるプレートを見てください。
A.ランゲ&ゾーネは、アドルフに時代から「4分の3プレート」を採用しています。
このプレートは、ムーブメントの安定性が向上することと、歯車の誤差を減少させる効果があるプレートと言われています。
また、ムーブメントを外の汚れから守る役割もあり、今でも4分の3プレートを使い続けています。
A.ランゲ&ゾーネでは、素材にもこだわっています。
ジャーマンシルバーと呼ばれる特殊な合金を使うことで、通常の腕時計で使用される真鍮よりも強度が高いので、腕時計には最高の素材と言えるでしょう。
また、この合金は酸化反応がゆっくりなので、時が経つにつれ、銀の表面は美しい黄金色の緑青に覆われてゆきます。
そうすると、膜が素材を覆い始め保護しますので、酸化はそれ以上進行することがなくなります。
このような特性を持つ合金なので、一般的な酸化防止のための電気メッキをする必要がなく、素材の特徴を生かした、経年変化を楽しむことができる「育っていく」腕時計と言えます。
そして、誰もが目を奪われる「ブルースクリュー」。
実は150年以上前から、耐食性の向上とムーブメントの装飾性から、A.ランゲ&ゾーネではブルースクリューを使っています。
スチール製のビスを、慎重に300℃まで加熱すると、ビス全体の表面にごく薄いマグネタイトの膜が形成されます。
そして「コーンフラワーブルー」と呼ばれる青い輝きが出ることで、ブルースクリューが誕生します。
このように、A.ランゲ&ゾーネでは最高品質の素材を選んで時計を製作しています。
最高品質の素材を使う理由は、完璧と恒久性。
技術的にも視覚的にも、最高の時計を作るには、最高品質の素材が必須であるという思い。
これは、創業者「アドルフ・ランゲ」の「完璧な時計」への思いを今も受け継いでいる証拠だと言えるでしょう。
A.ランゲ&ゾーネのアイテム
ランゲ1
ランゲ1
1994年、A.ランゲ&ゾーネの復興初のコレクションとして発表されたのが「ランゲ1」です。
ランゲ1はブランドを代表するモデルとなり、現在の第二世代には、初代のデザインを反映させながら、新開発の手巻きムーブメントを使用しています。
グランド・ランゲ1
代表作であるランゲ1をひとまわり大きくしたのが、グランド・ランゲ1。
各表示を相対的にバランスすることで、大きくなってもデザインはランゲ1を踏襲しています。
グランド・ランゲ1・ムーンフェイズ
このモデルのポイントは複雑機構であるムーンフェイズ。
ムーンディスクが時/分表示盤に登場し、圧倒的な存在感を表現します。
このムーンフェイズは、99.998%という精度で月の満ち欠けを再現。
まさに完璧主義である、ブランドの複雑機構ならではと言えるでしょう。
ランゲ1・デイマティック
ランゲ1シリーズで、初めて自動巻きムーブメントを搭載しました。
ランゲ1の特徴である、オフセンターで重ならない時刻表示もそのまま。
ランゲ1と違うのは、オフセンターの表示がランゲ1とは左右逆になっていることですね。
グランド・ランゲ1・ムーンフェイズ“ルーメン”
ムーンフェイズやデイト表示が、夜になると発光するのが特徴です。
パワーリザーブや時刻表示、針なども夜光性になっていますので、どんな場所でも見やすく、不思議な表示を楽しめる複雑系腕時計になっています。
ランゲ1・ムーンフェイズ
この時計のムーンフェイズは、従来の機構とは違い、常にムーンディスクが動き続けています。
本物の月と同じように、瞬間瞬間の満ち欠けを腕時計の中で行っているのです。
実際の月の満ち欠けとの誤差で、1日分のずれが生じるまでに、122.6年かかると言われています。
ランゲ1・タイムゾーン
名前の通り、自国のタイムと世界各国のゾーンタイムを同時に表示できるのが特徴です。
ボタンを押し、ダイヤルの外周に取り付けられている24都市のリングを回転するだけで、第二時間帯の表示を簡単に設定できます。
ツァイトヴェルク
ツァイトヴェルク
A.ランゲ&ゾーネが生み出した、デジタル式時刻表示を搭載する初めての機械式腕時計が「ツァイトヴェルク」です。
時と分が瞬時に変わる数字で表示されるので、いつでも簡単に時間を読みとることができます。
ツァイトヴェルク・ハンドヴェルクスクンスト
30本限定の特別モデル「ハンドヴェルクスクンスト」。
ホワイトゴールド製のダイヤル。
エングレーピングが施されたムーブメント内部の部品。
芸術性とメカニズムが融合した、特別な腕時計となっています。
ツァイトヴェルク・ストライキングタイム
この時計は、機械式腕時計でありながら音が鳴ります。
その音も、ハンマー打ちによって奏でられ、毎正時には低音が響き、15分・30分・45分にはクリアな高音が鳴ります。
ツァイトヴェルク・ミニッツリピーター
ミニッツリピーターは、3つの音色を打つことで時刻を知らせます。
正時には低音を。
正10分では重複音を。
正分では高音を。
正10分では重複音を。
正分では高音を。
あなたの耳に届く音色で、時刻がわかります。
また、聞き取った音色の時刻とダイヤルで読みとる時刻は同じだということもお伝えしておきます。
サクソニア
サクソニア
エレガントでシンプル。
一切の無駄を省いたデザイン。
一切の無駄を省いたデザイン。
調和のとれたダイヤルは「サクソニア」最大の特徴です。
無駄を省いたことで、あらゆる細部を極限まで突き詰めて完成させた腕時計と呼べるでしょう。
サクソニア・オートマティック
A.ランゲ&ゾーネが製作してきた自動巻き式時計の中で最薄なのが、オートマティックです。
分目盛りのデザインがシンプルなので視認性が良く、ビジネスシーンでさりげない自己主張ができる時計です。
サクソニア・ムーンフェイズ
デイト表示とムーンフェイズという、複雑機構が組み込まれたサクソニアです。
ムーンフェイズを6時位置に配置してあることで、エレガントで優雅な印象が伝わってきます。
サクソニア・フラッハ
シンプルな二針時計がフラッハです。
薄さもさることながら、時間で最小限必要な時/分のみを表示する潔さ。
これこそ余裕を醸し出す、できる男に必要な腕時計でしょう。
サクソニア・デュアルタイム
世界を飛び回るビジネスマンなら、2つの時をいつでも知っていたいもの。
そんな行動をする人たちのために作られたのが「デュアルタイム」です。
今日も飛行機で移動する、そんなビジネスパーソンにうってつけな腕時計です。
サクソニア・アニュアルカレンダー
時計を見るだけカレンダーが全てわかる。
そんな腕時計が「アニュアルカレンダー」。
時刻のほかに、デイト、月、曜日、ムーンフェイズが腕時計の中に全て見やすく表示されています。
30日の月と31日の月も自動で対応する、複雑な内部の作りも見えない技術の結晶と言えるでしょう。
1815
1815
1815とは、アドルフ・ランゲの生誕の年にちなんで付けられたネーミング。
ブルースチールの針。
アラビア数字。
線路をイメージさせる分目盛り。
アラビア数字。
線路をイメージさせる分目盛り。
どれもがランゲ一族の伝統を継承したことの証と言える時計です。
1815・アップ/ダウン
アップ/ダウンは、A.ランゲ&ゾーネの伝統的要素であるパワーリザーブ表示にちなんだネーミングです。
懐中時計にも搭載されていたこの表示は、1879年にA.ランゲ&ゾーネが特許取得したものです。
1815・クロノグラフ
スモールセコンド、30分積算計。
クロノグラフとしての機能を合わせ持った、伝統と機械工学が融合したことで誕生した時計です。
1815・トゥールビヨン
そのデザインのインパクトから、複雑な時計であることがおわかりいただけるのではないでしょうか。
円窓の奥にある複雑なトゥールビヨン。
重力の影響を最小限にし、全ての部分で正確さを極めるその機構は、A.ランゲ&ゾーネが追求する時計の最高峰のひとつと言えるでしょう。
1815ラトラパント・パーペチュアルカレンダー
スプリットセコンドクロノグラフ。
永久カレンダー。
二種類の高度な複雑機構を、ひとつの小さな腕時計に組み込みました。
4つの小窓で、全ての時間や曜日、月の満ち欠けが一目瞭然です。
まとめ
時計大国のスイスとは明らかに異なる魅力。
「機能美」という言葉がぴったりなドイツ時計である、A.ランゲ&ゾーネ。
職人魂とドイツ特有のデザインセンスの融合が、ヨーロッパにはない美しさを表現しているのでしょう。
ドイツだけではなく、世界的に見ても卓越した技術と知識。
そして、徹底した完璧な作りとデザインは、出来過ぎる男にこそふさわしい腕時計。
出来過ぎるがゆえに、厳かにシンプルに、その存在はわかりにくいもの。
しかし、ひとたび存在が明らかになれば、徹底した自制心と行動力によって後退することなく、複雑で困難なことにも進み続ける情熱は、A.ランゲ&ゾーネの職人達と同じ、世界に誇れる「魂」だと言えるでしょう。
あなたにぴったりな腕時計は、ロレックスでもオメガでもありません。
世界に誇れる「魂」が宿った、A.ランゲ&ゾーネを身につけることで、今までにないセルフイメージを手にすることになるのです。