いつも何気なく聴いている、バーで流れているジャズ。
とても心地よく耳に入ってくるあのジャズを、家でも聴けたらとてもリラックスできるのではと思いつつ、何から聴いたらいいかわからないという人も多いはず。
そんなあなたに、入門編として聴きやすいジャズをご紹介しましょう。
ジャズの歴史を知ってみよう
ジャズは古い歴史を持つ音楽のジャンルです。
ジャズというと黒人の演奏者が多いイメージを持つ人も多いと思います。
では、ジャズの成り立ちとその後の発展をゆっくりみてみましょう。
ジャズの誕生
ジャズが生まれたのは1900年頃、アメリカ・ルイジアナ州の港町、ニューオリンズと言われています。
この街は、欧州から移住した人や、欧州系白人と黒人の混血である「クレオール」、アフリカから奴隷として移住した人など、様々な人種が集まる場所でした。
様々な人種の様々な文化が集まったことに加え、過酷な労働を強いられた黒人労働者が、感情を表現する手段として始めた音楽が「ブルース」に発展しました。
また、アフリカ系の人々によるトランペットやクラリネット、トロンボーンを用いたバンド演奏が街頭で演奏されるなど、多種多様な音楽が集まる場所でもあったことが、ジャズという大きな分野を生み出す元になったと言われています。
この頃生まれたミュージシャンで有名なのが、トランペット奏者の「ルイ・アームストロング」です。
彼はジャズ界に多大な功績を残すこととなります。
「シング、シング」スウィング
1917年、第一次世界大戦の影響により、労働者を中心に音楽・酒・博打・売春が栄えていた歓楽街「スチーリーヴィル」が閉鎖されました。
そのため職を失ったミュージシャンらが、新たな土地を求めてミシシッピ川を北上し、シカゴにたどり着きます。
その頃すでに人気者になっていたルイ・アームストロングも、シカゴを経てニューヨークへと拠点を移しました。
1920年代から、ジャズ文化はニューヨークへ移り、ハーレムや高級クラブなどで大流行します。
ジャズがニューヨークで不動の地位を築いたのは、1933年から13年間続いた「禁酒法」。
暗黒街のマフィアたちによって、違法酒場にて酒とともに楽しまれたのがジャズでした。
1929年には「世界大恐慌」が起こり、ウォール街は大打撃を受け、人々は絶望に突き落とされました。
そんな絶望感の中で、希望を見出すべく生まれたのが、自然と体が踊ってしまうような音楽「スウィング・ジャズ」です。
1930年代にはベニー・グッドマンやデューク・エリントン、グレン・ミラーなどが大編成のバンドを率いてアメリカ中を演奏旅行して周り、大成功を収めました。
1938年にカーネギー・ホールで行われたベニー・グッドマンのコンサートは、今でも語り継がれているジャズ人気を表す大きな出来事です。
「シング・シング・シング」や「A列車で行こう」「イン・ザ・ムーン」などは今でもブラスバンドで度々演奏され、この時代のジャズの人気のほどが伺えます。
ビ・バップ~ハード・バップの時代
1940年代になるとスウィングは一旦鎮火し、新たな風が巻き起こりました。
それまでのダンスとともに演奏することを嫌う人々が増え、ダンスとは離れたところで全く違う系統の、コード進行に基づくアドリブを入れた自由な演奏が主流になってきたのです。
当時ビッグバンドに所属する若手ミュージシャンらは、仕事を終えた後にハーレム街にほど近い「ミントンズ・プレイハウス」でジャムセッションをし始めました。
この自由な形式のジャズは「ビ・パップ」と呼ばれ、のちのモダン・ジャズの基礎となるもので、超絶技法もこの頃生まれたもの。
アドリブは早く難しく、誰も聞いたことのないようなユニークなフレーズを競い合うもので、「狂気」として扱われることが多かったと言われています。
しかし、その超絶技法は衰えるどころか、今でも受け継がれ、発展し続けています。
この時代にはアルトサックスのチャーリー・パーカーやトランペットのディジー・ガレスピーなど、ジャズ史に残る偉大なミュージシャンを数多く輩出しています。
ジャズの帝王と呼ばれたマイルス・デイビスはビ・パップよりも感情を抑えた「クール・ジャズ」の流れを作り、1950年代にはアメリカ西海岸で「ウエスト・コースト・ジャズ」として一代センセーショナルを引き起こしました。
一方東海岸では、アドリブ合戦になりがちだったビ・パップよりも、分かりやすい音楽が発展し、「ハード・バップ」として流行しました。
ハード・バップはそれぞれのミュージシャンのアドリブを聴くための音楽とも言われ、その構成は典型的な小節の後にアンサンブルなどのテーマが続き、その後はそれぞれの楽器が交代でアドリブを繰り広げるというもの。
ハード・バップの幕開けを飾ったのはマイルス・デイビスとされており、ジャズ黄金時代はマイする・デイビスとともにあったと言っても良いでしょう。
1954年、ニューヨークのライブハウス「バードランド」で録音された「バードランドの夜」は、ハード・バップ誕生の瞬間を捉えた歴史的名盤とされています。
モダンジャズ~現代ジャズの時代
ハード・バップからの脱却を試みたのは、またしてもマイルス・デイビスでした。
それまでのコード進行に沿って小節を演奏し終えた後、頭のコードに戻りアドリブの掛け合いをするというハード・バップの奏法から、メロディラインを重視したモード奏法を試みたのです。
マイルス・デイビスの愛弟子ジョン・コルトレーンは、超絶技法を駆使した「シーツ・オブ・サウンド」をアルバム「ジャイアント・ステップ」の中で披露し、ハード・バップを極めたとされました。
これは、のちのフリー・ジャズへと発展していく曲となります。
フリー・ジャズは人間の喜怒哀楽や阿鼻叫喚など、人間のむき出しの感情を表現するような演奏で、当初はほとんど受け入れられませんでした。
しかし、マイルスやコルトレーンほか、従来のジャズとフリー・ジャズを融合したエリック・ドルフィー、激情型と言われるチャールス・ミンガスらの精力的な活動によって、フリー・ジャズは台頭していきます。
1970年代になるとマイルスや弟子のハービー・ハンコックなどが、ジャズに電子楽器やエイトビートを取り入れたフュージョンを演奏し、ジャズの流れを変えました。
しかし、フュージョンは伝統的なジャズを衰退させる原因ともなり、かつてのジャズ文化は終わりを告げます。
1980年代はフュージョンからの巻き戻しを狙った伝統的ジャズを見直す動きが広がる一方で、ポップスや民族音楽、クラシックなど他ジャンルとの融合が進み、現在では「ジャズ」と一言では括れなくなるほど多彩な音楽へと進化しています。
初心者におすすめのジャズの名曲10選
言葉だけでの説明は難しいので、オススメのナンバーをYouTubeで集めてみました。
実際に聴いたこともある曲も、改めて聴くとその良さをまた感じることでしょう。
Take Five
ドリンク剤のCMでおなじみのこの曲は、1959年、デイヴ・ベルーベック・カルテットによるものです。
クールでかっこいいですよね。
SING,SING,SING
ブラスバンドでもよく演奏されている有名な曲。
思わず体が動き出す?!
Almost blue
物悲しいメロディーがハードボイルドな一曲。
What A Wonderful World
これもテレビCMでおなじみの曲ですね。
励まされる歌詞と心に沁みるルイ・アームストロングのハスキーヴォイスがたまりません。
Summertime/Ella Fitzgerald
女性シンガーが数多く歌っている曲です。
エラ・フィッツジェラルドはビリー・ホリデイ、サラ・ヴォーンと並んで称される20世紀の女性トップ・ジャズ・ボーカリストの一人です。
In The Moon
この曲もブラスバンドでよく演奏される名曲。
軽快なリズムは親しみがあります。
Calling You
映画「バグダッド・カフェ」の主題歌として歌われた名曲。
砂漠の乾いた荒涼感によく合うメロディです。
Blue train
ジョン・コルトレーンの人気作の一つで、コルトレーン自らが作った楽曲。
Rhapsody in Blue
アメリカの作曲家ガーシュインの名曲。
ジャズというよりクラシックに分類されています。
So What
モダン・ジャズを作り上げるきっかけとなったマイルス・デイビスの代表作。
初心者におすすめのジャズ奏者(歌手)10選
もしこの章をジャズ好きの人が読んだら、「どうしてこれだけしか紹介しないんだ!」と怒られてしまいそうですが、それほどジャズ界には素晴らしいミュージシャンがたくさんいて、ご紹介しきれないのです。
今回は、一人についてだって一記事が書けてしまうくらいの大御所ばかりですが、涙を飲んでかいつまんでご説明します。
マイルス・デイビス
アメリカのジャズ・トランペット奏者。
クール・ジャズ、ハード・バップ、モード・ジャズ、エレクトリック・ジャズ、フィージョンなど、時代に応じて様々な音楽性を披露し、ジャズ界を牽引した、ジャズ会の帝王です。
モダン・ジャズを切り開いた第一人者としても名高いことから「モダン・ジャズの帝王」と呼ばれることも少なくありません。
代表アルバムは「カインド・オブ・ブルー」「ビッチェス・ブリュー」など。
ジョン・コルトレーン
マイルス・デイビスの弟子でモダン・ジャズのサックス奏者。
長い間無名だったため、第一線で活躍したのは約10年あまりでしたが、障害ジャズに身を捧げ、20世紀のジャズ最大の巨人と言われています。
代表アルバムは「ブルー・トレイン」「ジャイアント・ステップ」など。
ルイ・アームストロング
サッチモ(がま口のような口)という愛称で知られるアフリカ系アメリカ人のコルネット奏者。
「バラ色の人生」「この素晴らしき世界」などが代表曲で、1969年には映画「女王陛下の007」挿入歌「愛は全てを超えて(We have all the time in the world)」を発表し、全英チャート3位を獲得しています。
グレン・ミラー
グレン・ミラー・オーケストラで有名なグレン・ミラーは、アメリカのミュージシャンで、トロンボーン奏者であり作曲家、バンドリーダー、アレンジャーなど幅広い活躍をしました。
「茶色の小瓶」「ムーンライト・セレナーデ」「真珠の首飾り」など多数の有名曲があります。
ベニー・グッドマン
スウィング・ジャズの代表的存在として知られるベニー・グッドマンは、アメリカ・シカゴ生まれのクラリネット奏者です。
代表曲は「シング・シング・シンク」など。
エラ・フィッツジェラルド
アメリカの女性ジャズ・シンガー。
20世紀を代表するトップ・ジャズ・シンガーの一人と言われています。
13回のグラミー賞受賞、イェール、ダートマス、プリンストン大学において名誉博士号を授与されたほか、ブッシュ元大統領から大統領自由勲章を授与されるなど、レコードセールス以外でも高い評価を受けています。
代表曲は「レディ・ビー・グッド」「愛・ゲット・キック・アウト・オブ・ユー」など
デューク・エリントン
アメリカ出身のジャズ作曲家・ピアノ奏者・オーケストラリーダーで、ジャズ界に多大な功績を残した一人。
代表曲は「A列車で行こう」「スウィングしなけりゃ意味ないね」など。
ビリー・ホリデイ
「レディ・デイ」の愛称で知られるアメリカ出身のジャズ・シンガー。
人種差別や麻薬・アルコール依存症など壮絶な人生を送った彼女の歌声は、多くの人々の心を魅了し、ジャニス・ジョプリンなど多くのミュージシャンにも影響を与えました。
代表曲は「Strange Fruit」「I Love You, Porgy」など。
ウェザー・リポート
ウェザー・リポートは、マイルス・デイビスのグループに所属していたウェイン・ショーターとジョー・ザヴィヌルの二人が中心となり結成された、エレクトリック系のフュージョン・グループです。
代表曲は「バードランド」「スカーレットマン」など。
サラ・ヴォーン
アメリカ出身の黒人女性ジャズ・ボーカリスト。
オプラの歌手にも匹敵すると言われた幅広い声域と豊かな声量、抜群の歌唱力を持ち、ビリー・ホリデイ、エラ・フィッツジェラルドと並ぶ、女性ジャズ・ボーカリスト御三家と言われています。
代表曲は「テンダリー」「ミスティ」などですが、1982年にセルフプロデュースした「枯葉」はジャズの女王として不動の地位を築き上げました。
まとめ
初心者にお届けするおすすめのジャズの名曲10選と、おすすめのジャズ・ミュージシャンをご紹介しました。
・ニューオリンズから始まったジャズの歴史
・CMでおなじみのTAKE FIVE
・ブラスバンドでよく聴くシング・シング・シング
・一度は耳にしたことのある「サマー・タイム」
・「この素晴らしき世界(What A Wonderful World)」
・CMでおなじみのTAKE FIVE
・ブラスバンドでよく聴くシング・シング・シング
・一度は耳にしたことのある「サマー・タイム」
・「この素晴らしき世界(What A Wonderful World)」
など、誰もが一度は聞いたことのある名曲ばかりを集めてみました。
また、おすすめのミュージシャンは、
・ジャズの帝王マイルス・デイビス
・ルイ・アームストロング
・イージーリスニング界にも影響を与えたベニー・グッドマン
・人々を魅了したサラ・ヴォーン
・ルイ・アームストロング
・イージーリスニング界にも影響を与えたベニー・グッドマン
・人々を魅了したサラ・ヴォーン
などをご紹介しました。
本当はもっともっとたくさんの、素晴らしい曲やミュージシャンがいますが、紙面上ご紹介しきれません。
あとは、あなたがジャズの世界に足を踏み入れ、自分の好きな年代や曲、アーチストを見つけ出してください。