オレンジ色の照明の下、ラムを片手にくゆらせる煙。
このひとときだけは、仕事や家族のことを忘れることができる大人の男のための「非日常空間」。
ウィンストン・チャーチル、ジョン・F・ケネディー、フィデル・カストロといった一国のリーダーや、ヘミングウェイや北方謙三といった文豪たちが愛した葉巻。
『ダンディー』と形容される男には、葉巻がよく似合います。
ただ、ダンディズムを感じさせる趣味の中でも、初心者にとっては、少し敷居が高く感じてしまうのも葉巻。
一般的なタバコ=シガレットのように気軽にどこでも買えるわけではなく、葉巻が置いているところも限られた場所に限定されているのも、事実です。
だからといって、葉巻にチャレンジしないのはもったいない!
葉巻には、ただ見た目のカッコよさだけではなく、葉巻の煙を吸うことで、脳をリフレッシュさせ、集中力が高まるという効果もあります。
常に仕事からのプレッシャーにさらされるような男性にとって、そういったストレスから解放してくれるのが葉巻だという男性も少なくありません。
元首相の麻生太郎も、公務を終え、帰宅する前に、ホテルのバーでウイスキー片手に葉巻を吸っていたことがメディアでも大きく取り上げられていましたよね。
一国の首相というとてもストレスのかかる激務をこなすために、葉巻でストレス解消することが必要だったのでしょう。
そんなリラックス効果もあるダンディズムに一歩近づけるアイテム、葉巻の魅力についてお伝えいたします。
葉巻がなぜ、大人の男性から好まれるのか
なんといっても葉巻の魅力は、火をつけてから、口に含み、煙をくゆらせ始めたら、今までの時間の流れがウソのようにゆっくり時間が流れ始めるところです。
これは経験したものでないと分からない感覚ですが、まだ葉巻を吸ったことがない人には、ぜひ、この感覚を味わっていただきたい。
葉巻を吸っている間は、周りにいる人達との会話を楽しむもよし、ゆっくりと味を噛みしめながら、一人だけの時間に浸るもよし。
好きな本を一冊持ち込んで、じっくり読書というのもいいですね。
また、葉巻はお酒との相性も抜群なので、好きなお酒を片手に葉巻を楽しむのも粋な男の嗜みです。
葉巻の種類にもよりますが、1本吸い終わるのにかかる時間は短いもので20分、長いものだと1時間程度。
葉巻は煙の味を楽しむというより、葉巻と共に過ごす自分だけの時間を楽しめるのが、その魅力ですね。
そして、こう言ってしまうと、元も子のないのですが、旨い酒や旨い食事を理由なく嗜むように、旨い葉巻を嗜むのに理由なんて要らないのかもしれません。
「ただ、旨いから吸う」
嗜好品なので、好き嫌いはもちろんありますが、葉巻が旨いと思えれば、それだけでも葉巻を吸う理由としては十分ではないでしょうか。
タバコとの違い
葉巻と同じく煙を楽しむものにタバコがありますが、タバコと葉巻は何が違うのでしょうか?
葉巻とタバコの違いは、その吸い方にあり、「煙を肺まで吸い込むかどうか」が違います。
タバコは吸った煙を肺まで送り込んで、ニコチンを喉や肺で吸収し、味わいます。
一方、葉巻は、煙を肺まで吸い込まず、口の中でのみ、煙の味わいを楽しみます。
タバコは、煙を吸うことが楽しみであるのに対して、葉巻はお香のように煙の香りそのものを楽しむものだからです。
また、この煙の楽しみ方が違うため、葉巻とタバコではその喫煙時間の長さも違います。
タバコ1本を吸う時間の平均は4分7秒に対して、葉巻はだいたい30分から1時間。
タバコは短い時間の中で煙を楽しむのに対して、葉巻は煙だけではなく、煙と共に流れる時間を楽しむ。
葉巻とタバコのその時間の楽しみ方にあるといえるでしょう。
ただ、葉巻は煙を肺まで吸い込まないので、体への害がないと勘違いされますが、口や鼻からもニコチンは体内に吸収されるので、体に害がないといえばウソになります。
もちろん、ニコチンを吸収するので、ニコチンの常習性の危険もあります。
ただ、タバコには大量の添加物が含まれていますが、葉巻には添加物が使われていませんので、その点ではタバコより害が少ないといえます。
また、タバコには一旦、火をつけるとたとえ吸っていなくてもドンドン煙を出し続ける燃焼促進剤が使われています。
ですので、タバコは、火がついている間、副流煙を出し続けますが、葉巻には燃料促進剤が使われていないため、口に含んで吸わなければ、火が消えていってしまいます。
この点から、葉巻はタバコに比べて、副流煙が少ないといえるでしょう。
タバコに比べて、葉巻の煙が目にしみることが少ないのはこれが理由です。
ただ、タバコ同様、まったく害がないわけではないので、節度やマナーを守って楽しみましょう。
葉巻入門マニュアル
葉巻の味を大きく変化させるカット
葉巻は、キャップとよばれる、中の葉を巻いている外側の葉=ラッパーと同じ種類の葉を使って閉じられています。
このキャップを切り取ってから中の葉に火をつけるのですが、このキャップを切り取るカット次第で、葉巻の味が大きく変わります。
慣れないうちは、シガーバーの店員さんや、ホテルなどでも葉巻を置いているところであればバーマンなどに頼めばカットしてもらえるので、お願いするのがいいですね。
葉巻の種類に合った切り口もはじめのうちは分からないので、店員さんのおすすめのカットで楽しんでみましょう。
自分でカットするのなら、カット面が大きくなるフラットカットがおすすめです。
葉巻は切り口が広くなると、煙の量が多くなり、シガーの風味がマイルドになるので、吸いやすくなるからです。
葉巻をカットする専用のシガーカッターが販売されていますので、本格的に葉巻を嗜むのなら、シガーカッターも揃えたいところ。
シガーカッターの代用品としてカッターナイフを使うのもアリですが、ハサミでカットするのだけはやめておきましょう。
ハサミを使うと、上手くカットすることが出来ませんし、中の葉を押しつぶしてしますので、せっかくの葉巻の風味を損ねてしまいます。
火をつけるのも一筋ではいかない…、それもまた葉巻の魅力
葉巻のカットが終わったら、次に火をつけるのですが、ここでも注意すべき点がいくつかあります。
まず、葉巻はタバコのように口にくわえて、火をつけません。
葉巻を手に持ち、あぶるようにしてカットした部分に火をつけていきます。
葉巻に火をつけるためにはある程度の火力が必要になるので、ターボライターや長めのマッチを使って、火をつけるようにしましょう。
ただ、火力が必要だからと、火をつけるのにオイルライターを使うのは、やめておきましょう。
というのも、オイルライターは、オイルのニオイが葉巻についてしまうため、せっかくの葉巻の香りが楽しめなくなってしまうからです。
また、火をつける時は、直接、炎に葉巻をあてるのではなく、炎に対して45度くらいの角度で葉巻を向けるようにしましょう。
葉巻を炎に向けたら、手の中でコロコロ葉巻を回して、外にも中にもまんべんなく火がつくように転がします。
こうすることで、葉巻全体に火がつき、葉巻本来持つ香りを十分に楽しむことができます。
火をつけるのに、葉巻はひと手間もふた手間も必要ですが、それもまた、葉巻の魅力のひとつ。
どうしても、火を上手くつけられない場合は、カット同様、店員さんにお願いしてみるのもいいですね。
また、本格的なシガーバーには、シダー片を用意しているところもあります。
シダー片とは、杉を細かく割って棒状にしたもので、シダー片を使って火をつけることで、葉巻の風味がさらに増します。
見かけたらぜひ、チャレンジしてみてください。
葉巻の煙を10倍味わう方法
葉巻は、タバコのように煙を肺まで吸い込まず、口の中で煙を楽しみ、鼻から抜くのが基本な吸い方になります。
吸うときも、一気に煙を吸い込むのではなく、ストローでジュースを吸うように頬を使って吸いましょう。
また、タバコのようにスパスパと煙を吸うのではなく、一回一回の吸引を楽しむものですから、1分間に1回のペースで吸うのが目安です。
ただし、コレはあくまで目安。
葉巻によってペースは変わりますし、吸う人の楽しみ方によってもペースは変わります。
機械的に一定のペースで吸うのも味気ないですし、ペースに気を取られすぎて葉巻の味を楽しめなくなってしまっては、意味がありません。
「自分のペースで、ゆったりとした時間を楽しむ。」
これが最高のペースといえるでしょう。
ただ、ペースが早すぎて、頻繁に吸ってしまうと葉巻が高温になってしまい、葉巻の美味しい香りを損なってしまいますので、じっくりと楽しむことを心がけましょう。
一口吸って、そのまま吐くのもひとつの吸い方ですが、ここで葉巻の煙を10倍楽しむ吸い方をお教えしましょう。
ます、5秒~10秒の時間をかけて、口の中にゆっくりと煙を吸い込んでいきます。
この間、息を止めると苦しいので、口ではなく鼻で呼吸をしておきましょう。
時間をかけて口に煙を運び終えたら、口の中で、コロコロと煙を転がすように舌の上で香りを味わいます。
そして、吐くときもゆっくり、煙を吐き出すのではなく、押し出すようにモワっと口から出しましょう。
こうすることで、口と鼻に葉巻の香りが行きわたり、煙を存分に味わうことができます。
エレガンスが問われる葉巻の持ち方
葉巻の持ち方に決まりはありませんが、マナーとして、火がついている先を人に向けてはいけません。
一般的に、葉巻の匂いが手に移らないように施されるリング部分を親指と人差し指の2本でつかみ、中指と薬指を添える。
または、親指と人差し指でつかんだあと、中指の背で支えるのが上品な持ち方です。
親指と人差し指の2本指だけでつかむのは美しくないので、紳士の嗜みとして好ましくありません。
最後まで華麗に…、灰の落とし方と葉巻の消し方
葉巻の灰は、ほうっておけば自然に落ちるので、灰皿に葉巻を置いておくだけで灰は勝手に落ちていきます。
ですので、タバコのように指でトントンして、灰を落とす必要がありません。
また、火を消すときも、灰皿に押し付けて、もみ消す必要もありません。
葉巻は吸わなければ、自然に火が消えていくので、吸い終えたら、そのまま灰皿に置いておきましょう。
はじめて葉巻を吸う時は、どこまで葉巻を吸えばいいのか?が分からないと思いますが、どこまで吸うかは人それぞれ。
ただし、根元付近まで吸うと火傷してしまいますから、ある程度の長さで止めておきましょう。
リングの位置がひとつの目安ですね。
また、灰皿に葉巻の吸いさしを立てるのは、「この店のサービスが不満」という表明なので、葉巻は灰皿の上で横にしておきましょう。
葉巻デビューしたいなら、ココに行こう!
自分で、葉巻を買ってきて吸うのであれば、どこで吸うこともできますが、シガーカッターにガスライター、アシュトレイといった道具を一通り揃えなくてはいけません。
そこで、まったくの葉巻初心者におすすめしたいのが、シガーバー。
「初心者だ」ということを伝えれば、店員さんが1から葉巻の嗜み方について教えてくれます。
シガーバーは愛煙家が集まる社交場で、葉巻だけでなく、お酒や食事も楽しめる、まさに大人のための遊び場です。
シガーバーの床には穴が開いていて、室内の温度よりも低い空気は外に出るような仕掛けになっています。
この仕掛けのおかげで、室内の暖まった空気は上に昇っていき、それに伴い煙が横に広がることなく、他の人の葉巻の匂いを気にすることなく、葉巻を楽しむことができます。
シガーバーでは世界各国の葉巻を取り揃えているところが多く、当然、葉巻に詳しいスタッフも揃っていますから、最高のサービスを受けることができるでしょう。
地方などに住んでいて、近くにシガーバーがない!という方は、近頃、オーセンティックバーでも葉巻を置いているところが増えてきたので、足を運んでみてはどうでしょうか?
コチラのサイトでは、シガーバーだけでなく、全国の葉巻が吸えるバーやホテルを探すことができるので、ぜひ、参考にしてみてください。
シガーバーでは、
「コーヒー派か、紅茶派か?」
「チョコレートを食べるか?」
「ワインを飲むなら、ライトボディーとフルボトル、どちらが好みか?」
といった簡単なヒアリングに答えるだけで、店員さんがあなたにピッタリの葉巻をセレクトしてくれます。
葉巻には、さまざまなブランドがあり、大きさや味わいもそれぞれ。
はじめから自分好みの1本にたどり着くことは難しいので、まずは、おすすめの1本から吸ってみましょう。
ホテルのバーや高級レストランにも、葉巻を置いているところがありますが、そういったところは、葉巻を吸ったことがある人向けといえるので、まったくの初心者ならシガーバーでデビューすることをおすすめします。
葉巻を自宅でも楽しみたくなったら…
葉巻を自宅でも楽しみたい方は、シガーバーで購入することも可能ですし、シガーショップやネット通販で買うことも可能です。
ただ、購入で注意したいのは、必ず葉巻専門店で購入すること。
普通のタバコ屋でも、葉巻を置いているところがありますが、葉巻を専門に扱っていないタバコ屋では、適切な湿度や温度管理がされていない可能性があり、葉巻がカサカサになってしまっていることが多いです。
葉巻は上質のワインやウイスキーと同じで、保存のためには、適切な湿度と温度管理がとても重要です。
葉巻専用の保管箱であるヒュミドールや、ヒュミドールと同じ機能を持つ部屋、ウォークインヒュミドールがあるお店を選ぶようにしましょう。
また、葉巻の経験がないのなら、おすすめしたいのは、太くて長い葉巻。
葉巻は太ければ太いほど、味がマイルドになるので、吸いやすくなります。
また、長いほうが、吸い口と火がついている先端との距離が遠いので、煙が冷却され、葉巻本来の香りをさらに楽しむことができます。
葉巻を購入できるおすすめの場所を2ヶ所、ご紹介しておきますね。
日本有数の喫煙具専門店『kagaya』
新宿の紀伊國屋書店に店を構える日本でも珍しい喫煙具専門店。
葉巻だけでなく、タバコやパイプも取り揃えています。
神奈川県の横須賀に姉妹店『フォンテ』もあり、オンラインでの販売も行っているので、葉巻に慣れてくればお気に入りの1本を探すためにいろいろ試してみるのもいいかもしれません。
関西にも店舗がある『シガークラブ』
シガークラブでは、店内で葉巻を楽しむことはもちろん、葉巻を購入して持ち帰ることもできます。
東京には4店舗あり、大阪にもハービスプラザ内に店舗がありますので、関西の方は、是非。
通信販売も行っているのが嬉しいですね。
葉巻を選ぶ際にアドバイスを送るとしたら、初心者におすすめなのは、太くて長い葉巻です。
葉巻は太ければ太いほど、味がマイルドになるので、吸いやすくなります。
また、長いほうが、吸い口と火がついている先端との距離が遠いので、煙が冷却されて葉巻本来の香りを楽しむことができるからです。
まとめ
大人の男の趣味のひとつに数えられる葉巻。
未経験の方にとっては、とても敷居が高く感じてしまいますが、その楽しみ方はいたってシンプルです。
煙そのものよりも、煙と一緒に過ごすその時間を楽しむ。
それが、ダンディズムあふれる葉巻との付き合い方といえるのではないでしょうか。
一人になりたいとき、行きつけのシガーバーで…。
お酒を片手に仲間と肩を並べて…。
煙を吸うという行為は、健康志向の時代に逆行しているかもしれませんが、葉巻には葉巻でしか味わえない時間の流れ方があります。
「いつも時間で追われていて、たまには一息つきたい…。」
そう考えているなら、葉巻はきっとあなたにささやかな安らぎをもたらせてくれるでしょう。
良いワインやウイスキー、葉巻といった嗜好品には、熟成させるためにゆったりとした時間が必要になるようにいい男なるためもゆったりとした時間を持つことが必要。
そんな時間を持つためにも、葉巻と共にすごす時間を作ってみる…、というのはいかがでしょうか?