靴と健康の関係を知っている優秀なビジネスパーソンほど、オーダーメイドの靴を履いています。
この一文を読んでドキッとされた方は、ぜひこの記事をお読みください。
毎日何気無く履いている、靴。
靴は、あなたの全体重を一手に引き受けて支えている、相棒とも呼ぶべきアイテムです。
合わない靴を長時間履くと、足が痛くなるという経験は多くの人がしていること。
しかし、多くの場合は我慢して履き続けているのもまた事実です。
実は、自分の足にあった靴を履かないと、足だけでなく体全体の健康にも悪影響を及ぼします。
朝起きた時の足裏の原因不明の痛みや、腰痛、膝の関節痛なども、靴が原因であることが多いのです。
今回は、靴と足、そして健康との関係を詳しく解説します。
このまま合わない靴を履き続けても良いものか、とお悩みの方は必読です。
ビジネスパーソンは足が大事
日々通勤や営業先に回るビジネスパーソンは、とにかく足を使います。
特に電車通勤の方は、毎朝毎晩のラッシュに揉まれ、営業でなくても社内を歩いたり移動したりと、基本的に足が健康でなければ始まりません。
足には身体中のツボが集まるといいますが、足は心臓と全身の血流を循環させるポンプの役割を果たすものでもあり、とても大切なもの。
また、足はきちんと大地に立つことで姿勢を安定させ、全身の体重を支える役割もしています。
そんな大切な足を守るものとして、靴はとても重要です。
自分の足で活躍し、結果を出しているビジネスパーソンほど、靴と健康を熟知しています。
靴が及ぼす健康への害
「あなたの足が変だとすれば、それは靴が悪いからです」。
サルヴァトーレ・フェラガモの言った言葉ですが、靴は恐ろしいことに、履いているうちに足を変形させる恐れがあります。
足が靴に合うように、無理に形を変えてしてしまうのですね。
男性の靴でも、つま先が細くなっているものや、反対に幅の広いものがあり、自分の足の形に合っていないと外反母趾やハンマートゥなどになってしまいます。
その結果、肩こりや腰痛、膝の関節痛、頭痛、血行不良など全身の健康にも害を及ぼすのです。
また、歩いているだけで強い痛みを感じたり、ひどい時には歩行に障害が出たりします。
驚いたことに、足には全身の骨の4分の1が集中しているとのこと。
骨の本数は両足で52本あり、66の関節と214の靭帯から成り立っているのだそう。
この足の骨格構造のバランスが崩れると、体全体を支えることができなくなり、小さな歪みから大きな歪みとなって不定愁訴などが起こります。
考えてもみてください、足の裏の面積が占める、体全体の割合を。
足裏の面積は、体全体の約1%と言われています。
人間は、自分の体のたった1%の面積で体を支えているのです。
さらに、足の骨の一部、「足根骨」は、全体重の約90%を支えているそう。
足根骨は、ちょうど足首から甲にかけての部分です。
合わない靴でこの部分が圧迫され、うまく動かないと機能不全を起こし、様々なトラブルの原因になります。
毎日使う靴だからこそ、自分の足に合ったものを履く必要があるのです。
中高年になると増える足のトラブル
若いうちはデザイン重視で履けていた靴も、年を重ねるにつれて今まで履いていたものが合わなくなってくることが多いものです。
その理由は、足の柔軟性がなくなってきたから。
骨や皮膚、関節などは歳とともに柔軟性を失い、人によっては痩せてくる場合もあります。
足裏や甲部分が痩せてくると、体重を支える足の面積が変化し、体全体のバランスも変わってきます。
また、かかとの骨もクセが強くなり、若い時にはあまり分からなかった回内や回外になることも多く見受けられます。
回内とは両足の内くるぶしが内側に傾いて倒れることで、両足の親指により負担がかかっている状態です。
<回内>
この状態がひどくなると、外反扁平足になり、長時間の歩行で疲れやすくなり、外反母趾の悪化、足底筋膜炎という病気を発症させる原因にもなります。
また、回外は両くるぶしが外側に傾いて倒れている状態のことで、いわゆる「内股」です。
<回外>
この状態がひどくなると、足の付け根やかかとに過剰な負荷がかかります。
回内にしても回外にしても、放っておくと膝が外向きに湾曲したり、足の付け根が圧迫されたりし、全身のバランスが崩れる可能性があります。
また、合わない靴を長期にわたって履いていると、こんな症状が出てくることがあります。
・外反母趾:足指を窮屈に締め続けた結果起こります
・ハンマートゥ:つま先にゆとりのない靴を履き続けた結果起こる症状です
・開帳足:体重を前にかけることが多いことによって起こります
そのほか、合わない靴を履くことによって起きる症状は、
・長時間歩くと疲れやすく、場合によっては痛みをともなう扁平足
・階段を降りる時や下り坂でアキレス腱が痛くなるアキレス腱周囲炎
・靴を履いた時や歩行時に痛みを感じるタコや魚の目
・靴に使われているゴムやアッパーに使われているタンニンが原因で起こるアレルギー性皮膚炎
・靴で圧迫されることによって起こる巻き爪
などがあります。
また、中高年で多いのは扁平足で、朝起きた時に土踏まずやかかとが痛い、歩くと指の付け根がジンジンするなどの症状も多くみられるようになるため、「なんだかわからないけど足裏が痛いなぁ」と感じたら要注意です。
専属のシューフィッターを持つ
シューフィッターは足と靴の専門家で、足や足からくる全身に関する健康にも詳しいスペシャリストです。
足の病気やトラブルが一旦出ると、靴の問題だけでなく、医療にかからなければなりません。
そうなると、仕事にも支障をきたすし場合によっては歩行も困難になります。
そうなる前に、シューフィッターに相談し、自分に合った靴を作るのが一番です。
また、靴を作る際にも毎回別のところではなく、同じお店で作ることをお勧めします。
一度のオーダーメイドではなく、なぜ専属なのか
オーダーメイドは足を様々な角度から計測し、その人の靴の原型となる木型を作ります。
一度作ってしまえば、それはデータとして保管され、病院のカルテのように次回に靴を作る際にも役立てられるのです。
また、その人の歩きクセを把握できるので、前回からの足の変形具合などから、その人の傾向がわかります。
毎回同じ作業を大変な時間を費やして行うより、一度データを取ってもらって微調整する方が、時間を大幅に短縮することができますね。
また、クセや好みなどについてもわかっていてもらうことで、使う革や色、デザインなども共通の理解があるので提案してもらいやすくなるのも、大きなメリットです。
かかりつけ医のように、自分の足や体のバランスをわかってくれている人がいるというのは、とても安心。
なぜなら、人の足の形は顔と同じで千差万別、一人として同じものがないからです。
同じサイズだからといって、すべての人が同じサイズの靴で満足がいくはき心地というわけではありません。
既製の靴では、表示されているのはせいぜい足長のサイズとEEEなど幅の目安のみです。
同じ足長26cmの人でも、甲がきつい、小指が当たる、かかとが脱げやすいなど微調整が必要になります。
また、ソールやかかとの減り具合で歩き方のクセを知り、それに応じてメンテナンスしたり新しい靴を作ったりできるのは、長年付き合いのある専属のシューフィッターだからこそなせる技。
ぜひ、信頼の置ける専属のシューフィッターを持ちたいものです。
自分に合ったシューフィッターを探す
自分に合ったシューフィッターとは、どんな人でしょう。
足の症状や歩くクセ、体の歪みなどを知って、場合によっては医療が必要なことも助言してくれるような靴の専門家のことです。
百貨店などの靴の専門店には、ほぼシューフィッターと呼ばれる人が常駐しています。
シューフィッターの修行を積み、資格をとった優秀な人です。
しかし、残念ながら百貨店などのシューフィッターはどんなに足のことについて詳しくても、靴を製造することはありません。
あくまで見立てと相談業務のみです。
その点、靴を作る靴職人は、職人であると同時に足のスペシャリストでもあります。
大型店などではシューフィッターは足の悩みを聞いて、その人に合った靴探しを手伝ってくれる人ですが、個人で営業している場合の多くは靴の製造とシューフィッターを兼ねています。
健康面だけでなく、センスや好みを把握している上で靴を作ってくれるので、大変心強く、ファッションセンスの面からも信頼できる人です。
そのため、自分に合ったシューフィッターを探すなら、個人で経営している職人さんをお勧めします。
オススメの靴職人(シューフィッター)
日本には靴職人として経営している人が全国各地に存在します。
しかし、自分で調べるのは意外と手間がかかるし難しいもの。
そこで、ここではオススメの靴職人(シューフィッター)をご紹介します。
ピンときたら、ぜひ連絡を取ってみてください。
スピーゴラ
スピーゴラを経営する鈴木氏は、イタリアで修行した後、神戸でデビューすると瞬く間に注目されたビスポーク靴職人のパイオニア。
イタリア・フィレンツェで若き靴職人として注目されていた、ロベルト・ウゴリーニに弟子入りし、4年もの間修行を積みました。
まだ日本に若い靴職人がいなかった2001年、修行を終えて帰国し、25歳という若さで、地元神戸にて自身のブランド「スピーゴラ」を立ち上げました。
その後着々と腕を上げ、今では香港、シンガポール、ニューヨーク、そして北欧など、世界各国でオーダー会を開くなど名実ともに靴職人のトップとして君臨しています。
ちなみにスピーゴラとは、イタリア語で魚の「スズキ」を意味します。
そんなユーモアのあるネーミングを考える鈴木氏自体も、イタリア的な陽気さを持つ、いい意味で力の抜けた人物のようです。
職人にありがちな小さな世界に引きこもるのではなく、たくさんの趣味を持ち、人生を存分に楽しむことに長けています。
その心の余裕が靴づくりにも反映されていることを、鈴木氏自身がよく分かっているからこそ、自然な色気のある靴が作り出されるのでしょう。
スピーゴラの靴は、クラシックな中にも色気と遊び心が宿る、上品でぬけ感のある靴。
そんな世界も認めるスピーゴラの靴は、あなたの足とセンスをきっと満足させてくれるでしょう。
公式ホームページ:http://www.spigola.jp/(音が出るので注意)
ギルドオブクラフツ
東京・銀座にあるギルドオブクラフツ。
設立者の靴職人の山口氏は、1996年に「ギルド」を立ち上げて以来、東京・浅草を中心として活動しているビスポークのプロフェッショナルです。
銀座の直営店ができたのは2006年のことで、それ以前は顧客専門の靴職人として活動しており、1999年には靴の専門学校を設立し、人材の育成にも取り組んでいます。
その実力は雑誌Men’s EXの世界靴100選で第1位を獲得したほど。
そんなギルドの靴は、イギリスの靴づくりの流れを汲んでいます。
山口氏はイギリスの靴学校コードウェイナーズカレッジに入学し、靴づくりを学んだ後、シューズパターン1級資格を取得し、ロイヤル・ソサエティ・オブ・アカデミーを受賞しました。
また、日本人として初めてギルド・オブ・マスタークラフツメンの資格を授与され、ドクターマーチンのデザインをする傍ら、自身のブランドである「ギルド」を立ち上げたという経歴の持ち主です。
また、「製靴書」という興味深い著書も出版しており、靴職人ならではのメンテナンス法や革靴の基礎知識なども、余すことなく書いています。
そんな英国発のプロフェッショナルが作るビスポークに興味のある方はこちらからどうぞ。
エモリカスタムシューメーカー
謙虚な人柄とフルビスポークにかける情熱が愛され続けている靴職人、江守氏。
「すくい縫いだけでなく、本来機械で行う出し縫いも全て手作業で行うことにより、糸のわずかな遊びが浮き上がって、履く人の個性に合っていく」と江守氏。
これは、決して機械で作ったものでは実現できず、江守氏はそこにこだわりを持って靴づくりをしています。
月に作れる靴は最大で3足のため、納期は5ヶ月に及ぶにもかかわらず、待つ人が後を絶たないとの評判です。
東京大田区にあるアトリエで、世界中から丹念に鞣された動物の革を大切に加工し、コツコツと作っています。
鞣し革は一つのマトリアルであると同時に、動物が確かに生きていた証として、靴という新たな生命を誕生させるべく心を込めて作る謙虚な姿勢が、訪れる人を魅了してやみません。
江守氏のインスタグラムには、新作の美しい靴とともに、数々の自然や建築の造形美などを写した画像がアップされています。
それは、江守氏の自然に対する敬愛と、インスピレーションを得て靴に落とし込むセンスの表れかもしれません。
職人の手によって丁寧に作られた革靴。
堅牢さの中にも優美さが同居する、世界で一つだけの靴です。
夏の始まりを感じさせる青空と伝統ある建築物。
江守氏の世界観が垣間見えます。
つま先にイニシャルを打ち込んだ、まさに唯一無二の靴。
何ヶ月待っても最高の一足が欲しいという方は、ぜひ連絡してみては。
靴職人の作るオーダーメイドで健康を守る|まとめ
働き盛りである中高年以降のビジネスパーソンは、靴がとても重要です。
自分に合わない靴を履いていると、外反母趾や回内・回外などのトラブルが発生し、肩こりや腰痛、頭痛などの不定愁訴に悩まされることになるからです。
また、一度足が変形してしまうと医療にかかるしかなく、もはや靴ではどうにもできない状況になります。
そうなる前に、自分の足にあった靴を作りたいものです。
足の専門家であるシューフィッターは、靴だけでなく、その人の歩きぐせや立ちグセ、体のバランスも把握してくれます。
できれば気心の知れた、専属のシューフィッターを持ち、事あるごとにメンテナンスして欲しいものです。
それで、シューフィッターと靴の製造を兼ねている、靴職人をご紹介しました。
日本には素晴らしい靴職人がたくさんいますが、中でも群を抜いて優秀な3つのブランドを挙げました。
・スピーゴラ:イタリアで修行したパイオニア
・ギルドオブクラフツ:イギリス発のスペシャリスト
・エモリカスタムシューメーカー:心を込めて作る謙虚な職人
どの職人が作る靴も、超一流で注文待ちかも知れません。
しかし、自分の健康を左右し、全身を預ける大切な靴だからこそ、最高のものを履きたいものです。