ドーメルのスーツでヴィンテージ生地と言えば、「スポーテックス」と「トニック」。
スポーテックスは1922年、トニックは1957年に発売されました。
共通点はどちらも爆発的なセールスを記録したこと。
トニックにいたっては、おそらく世界で一番売れた生地だと言われています。
なんと、このトニックという生地は世界中で80万メートル(800kmだいたい東京から広島ぐらいの距離)を販売し、注文してから納品まで数カ月待ちだったとのこと。
ここで、「そんなに売れて数があるのにヴィンテージ生地?」と少し疑問をもつ方もおられるかもしれません。
しかし、皮肉にも大ヒットしたがゆえに、ほとんどの生地がスーツやジャケットに仕立てられたため、現在生地として残っているものは本当にわずかなのです。
ところで、この「ヴィンテージ」というワードに、ちょっとテンションがあがってしまうのは私だけでしょうか。
もともと「ヴィンテージ」とは、「当たり年のワイン」をさす言葉だったようです。
いまでは、「価値の高い年代物のアイテム」などにも、この言葉が使われています。
まさに170年以上の歴史を持つドーメルの、「スポーテックス」と「トニック」は、価値の高い年代物の生地、と言えるのではないでしょうか。
今日はそんなドーメルのヴィンテージ生地、「スポーテックス」と「トニック」。
そして、そのヴィンテージ生地の後継生地も紹介します。
余談ですが、今日紹介する「スポーテックス」の後継生地である、「スポーテックスヴィンテージ」は、スマップの木村拓哉さんが数年前のドラマ、「南極大陸」で着用していたとのことです。
それでは、紹介していきます。
ドーメルの歴史
・1842年、ジュールス・ドーメルがイギリスから毛織物を輸入し、フランス国内販売する服地商として始まる。
・1922年、ピエール・ドーメルが、耐久性の高い世界初のスポーツ用服地「スポーテックス」をデザイン。
・1926年、「ハウス・オブ・ドーメル」ビルを、ロンドンのゴールデン・スクエアに建設。
・1957年、5年にわたる研究により、当時難しいとされていたモヘアとウールの混紡生地「トニック」を発売。
ドーメルのヴィンテージ生地たち
ドーメルのヴィンテージ生地と言えば、「スポーテックス」そして、「トニック」です。
偉大なゴルファーたちに愛された、スポーテックス(SPORTEX)
「スポーテックス」は、耐久性と快適性に優れた世界初のスポーツ用の生地、特にゴルフ用のジャケットとして、多くのゴルファーに愛用されてきました。
人目をひくキャッチフレーズ、そして大胆かつ独創的な広告で最新パターンが毎年発表されていました。
現在では当たり前になっていますが、世界ではじめて織物の耳にブランド名を織り込んだのが、この「スポーテックス」です。
生地完成をジントニックで祝ったことから、トニック(TONIK)
当時難しいとされていたモヘア高混率の生地、それを実現させたのがドーメルの「トニック」。
驚くほどの光沢と見事なドレープ感、そして華やかでシワになりにくいことがテーラーに高く評価され、瞬く間に大ベストセラーになりました。
007のジェームズ・ボンドは、当時の鮮烈なトニックの広告が元になって生まれたキャラクターだと言われています。
後継の生地たち
偉大なヴィンテージ生地の後を継ぐ生地たちを紹介します。
より軽くより機能的に、スポーテックスヴィンテージ(SPORTEX VINTAGE)
1922年当時の「スポーテックス」の耐久性を失うことなく、現代的な軽さ(380g)を実現した服地。
半世紀の時を越え、トニック2000(TONIK 2000)
当時の「トニック」の製法を現代風にアレンジし、モヘア30%で復刻。
横糸にウールとモヘアのブレンド糸を使用、しっかりした打ち込みながら軽量化に成功した服地です。
伝説は立ち止まらない、ニュートニック(NEW TONIK)
90%キッドモヘアを使用。
エレガントなスーツ、またはサマージャケットとしても最適。
まとめ
ドーメルのヴィンテージ生地はいかがだったでしょう。
・「スポーテックス」は、耐久性と快適性に優れた「世界ではじめて」のスポーツ用生地。
そして、「世界ではじめて」織物の耳にブランド名を織り込んだのも、この「スポーテックス」。
・「トニック」は、当時難しいとされていたモヘア高混率の生地を「世界ではじめて」実現させました。
170年以上の歴史と伝統を持ちながらも、新しいことに挑戦し続けるドーメル。
「スポーテックス」そして、「トニック」の後継の生地にもそれはいかされています。
まさにスーツのエクスカリバー、ドーメルのヴィンテージ生地のシリーズに袖を通してみてはいかがでしょう。